【取材】 働く犬を11歳で引退。16歳の今も元気なシャームスの健康を培った「最初の約束」とは #8シャームス
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。今回登場するのは、オーストラリアの盲導犬協会からやって来た“盲導犬候補のための繁殖犬”という珍しいキャリアを持つ16歳のラブラドール・シャームスくん。これからレトリバーを迎えたいと思っているなら、シャームスくんファミリーのように“働く犬の預かり主になる”のも素晴らしい選択だと思えるお話をたくさん聞けました。
目次
シャームスくんのプロフィール
年齢&体重
16歳の男の子(2005年5/6生まれ)
体重
25kg(若い頃は29kgをキープ)
大好きなこと
食べること、寝ること、家族とのお出かけ、お母さんのマッサージ
既往歴
・3歳の時に真っ直ぐ歩けなくなり病院へ。今となっては前庭疾患だと思われるが、当時は原因不明のまますぐに回復。
・11歳で繁殖犬引退と同時に去勢手術。
・2020年8月に前庭疾患に。投薬による対処療法で2週間かけて治療。その後再発はなし。
なんと子どもは120頭! 協会から預かった犬は最初からお利口さん
シャームスくんは1歳4ヶ月の時にオーストラリアから盲導犬協会を通じてやってきた繁殖犬。迎えてからずっと同じ屋根の下で暮らしてきました。
しかし11歳で繁殖犬を引退するまではいわば「お預かり犬」。引退してからが本当の我が子となったのです。
「子育てがひと段落したときボランティアをしたいと思い、当初盲導犬候補の子犬を預かるパピーウォーカーに手を挙げたんです。
ただ当時は夫婦共働きだったため条件を満たせず、代わりに海外から繁殖犬が来るから繁殖犬の預かりはどうかと。
日本ライトハウスという盲導犬を訓練する施設を通じ、シャームスを迎えることになりました」(ママさん)。
しかし子犬を想定していたママさんは、すでに24kgに成長していたシャームスくんを怖く感じたこともあったそう。
「私が小学4年生の時にうちに来て以来、シャームスとは一緒に育ちました。
我が家は犬を迎えるのが初めてでしたが、すでにしっかりしつけが入っていたため、最初は怖がっていた母もすぐに馴染んだんです。
そして父とは完全に相棒関係。年齢を重ねた今はよりその絆が深くなっています」(娘さん)。
シャームスくんには120頭の子どもがいて、時々孫やひ孫に会うこともあるんだそう。繁殖犬を預かる場合、何か規約があるのでしょうか?
「繁殖のため要請があればライトハウスに出向くこと、そして逃さないこと、ストレスを溜めさせないことが条件です。
繁殖犬の間はフードも医療もライトハウスから提供されるので、実は引退するまではフード選びなどで悩んだことがなかったんですよ。
去年前庭疾患を発症するまで大きな病気も怪我もなく、育て方で困ることは少なかったですね」(パパさん)。
人間のために働いてくれた補助犬の引退後をサポートする『日本サービスドッグ協会』というのがあり、とても手厚いバックアップが受けられるのもメリット。
「高齢の今は、協会から床ずれ予防寝具やジェルマット、お散歩時に時々乗るカートなどのケア用品もレンタルしています。シャンプーもそこでプロの方にお願いできるんですよ」(娘さん)。
このようなサポートがあるため、犬初心者だったシャームス家でも安心して大型犬と暮らせたんだそう。
「シャームスは絶対に外でしか排泄をしません。そのため、前庭疾患で動けなくなってたときは、私が毎日抱えて散歩をさせ、用を足させていました。
幸い対処療法とトイレを兼ねたリハビリで症状は改善しましたが、このまま歩けなくなったらと不安が募る日々でした。
あの時は協会のサポートがなければ乗り越えられませんでしたね」(ママさん)。
散歩は1日5回! 最近になって覚えた特別なおやつも
“ストレスを溜めないこと”が協会との約束のひとつでしたが、その生活はどんなものだったのでしょうか。
「引退前は散歩は日に3回。朝30分、昼から1時間程度、そして寝る前に近くの公園へ行くのが定番。今は排泄のタイミングも考え、歩く距離を短くして日に5回程度です。
トイレに行きたい時は自分で外に出たいとアピールするので、そのタイミングでお散歩へ。去年からこのスタイルです」(ママさん)。
「繁殖犬のため、似た体格の犬を見るとマウンティングするんです。
ですからドッグランには行かず、散歩は人の少ない時間を選んでいました。
だから引退するまでは、他の犬に気兼ねなく思いきり走り回れる場所をいつも探していましたね。思えばその運動が強い足腰を作ったのかな」(パパさん)。
繁殖犬は引退と去勢がセットだそうで、去勢後のシャームスくんはいっそう落ち着きが出て、マウントすることもなくなり散歩もゆったりになったそう。
食事、運動、歯磨きが健康長寿の秘訣
シャームスくんが健康で長寿なのは、このたくさんの運動のほか食事もその秘訣だとご家族は考えています。
与えていたフードはずっと『サイエンスダイエット』、15歳からは年齢に合わせ、消化サポートの『w/d』に。消化しやすいよう、食事も日に2回から3回に変えたそう。
「ご飯は犬のもの以外はあげないようにしていて、原則ドッグフードと犬用のおやつを時々。
でも最近は食を楽しめるようにとちゅーるをあげるように。そしたらよほど美味しかったのか、今ではちゅーるのトリコです(笑)」(娘さん)。
「毎年健康診断をしています。あと軍手を手にはめて歯磨きをしていて、そのお陰か今も全部の歯が揃っているんです。これも健康長寿の一因だと思います。
犬も人間と一緒で、食べることで命を繋ぐから、歯は大事だと思うんですよ」(パパさん)。
運動、食事、歯磨き、この3つをしっかりとやってきたおかげで、ただの長寿なのではなく“健康長寿”なのかもしれませんね。
いつもシャームスくん中心の暮らし
パピー期から適性を伸ばすためのしつけや習慣を身につけているシャームスくん。
そういった素養を大切にしながらも穏やかなセカンドライフを過ごす秘訣とは?
「シャームスは誰かが落ち込んでいたらそっとそばに寄り添うなど、常に家族に目を向け思いやってくれるんです。
だから引退後の今は、家族に気を使わず、できるだけ伸び伸びできるような工夫をしています。ストレスにならないよう、留守番も最長でも5時間まで」(娘さん)。
「時々ライトハウスやサービスドッグ協会を訪ねるんですが、そこでだいたいシャームスの子孫に会えるんです。
定期的に自分の子孫と触れ合うことも、良い刺激になっているのかも。
最近は立ち上がろうと力んだ時にうっかりうんちが出ちゃうこともありますが、そんな部分も含めてとても愛しい。
引退したことで性格も丸くなり、顔つきもより穏やかになった気がします」(ママさん)。
シャームスくんを囲みご家族で取材に答えてくださっている最中も、マイペースで過ごすシャームスくん。
完全に家族を信頼し寛ぐその姿は、仕事をやり切り余生を穏やかに生きる幸福感が漲っていました。
最後にご家族はこう語ってくれました。
「補助犬の存在を多くの人に知ってもらい、彼らをサポートする場が広がることを願っています。
シャームスのような繁殖犬をはじめ、引退した補助犬や盲導犬になれなかったキャリアチェンジ犬が幸せになれる環境がもっと整えばとも。シャームスの存在がその一歩となることを願っています」(パパさん)。
取材・文/横田愛子
★「#レジェンドレト」で投稿お待ちしています!
レトリーバーライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドレトを探しております!
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