日本ではラブラドール・レトリーバーを抜いて、2017年の登録頭数が12位4,823頭であったゴールデン・レトリーバー。大型犬では日本で人気ナンバーワンの犬種です。
もちろん、原産国のイギリスをはじめ、ヨーロッパ各国、アメリカ、オーストラリアなどでも人々を魅了し続けてやみません。そんなゴールデン・レトリーバーの沿革から特徴、飼い方のコツまでを紹介していきます。
ゴールデン・レトリーバーのルーツと歴史
謎の多い歴史を持つラブラドールと違って、ゴールデン・レトリーバーの成り立ちは、ひとりの人物の努力の結晶であることが明らかになっています。
ゴールデンを作出したその人物とは、スコットランドのツイードマウス卿。ウェービーコーテッド・レトリーバーから生まれたイエローの子犬を手に入れたツイードマウス卿は、1868年、ツイード・ウォーター・スパニエルのメスのベルと交配させました。べルから生まれた子犬のうち4頭がイエローで、その中からもっとも犬質のよいメスをカウスリップと名付けて、今のゴールデンの基礎犬にしたのです。
カウスリップの血にはさらに、赤毛のセッターやツイード・ウォーター・スパニエル、フラットコーテッド・レトリーバー、カーリーコーテッド・レトリーバーなどが加えられ、ゴールドの毛色の子を選択交配させた結果、ゴールデン・レトリーバーができあがったと言われています。
唯一残る謎は、ツイードマウス卿が最初の交配計画で使ったイエローのレトリーバーの子犬を手に入れたルートです。ブライトンの靴屋からとも、ブライトンに公演に来たロシアのサーカス団からとも、あるいはジプシーや、知人のチチェスター卿からとも伝わり、いまだ明らかにはなっていません。
旅行好きであったツイードマス卿は、旅先で自身が作出した最高の遊猟のパートナーである「イエロー・レトリーバー」を自慢したそうで、この犬の評判が瞬く間に広まったのは容易に想像ができるでしょう。
当時ゴールデンに与えられていた仕事は、スポーツハンティングに同行してツイードマウス卿やその仲間が撃ち落した獲物を回収することでした。
1881年、ツイードマウス卿の息子がイエロー・レトリーバーを連れて北米に赴いたのをきかっけに、北米でもこの犬への関心が高まります。そしてついに、1920年にはゴールデン・レトリーバーという名称で統一されるようになり、1927年にカナダのカナディアン・ケネル・クラブで、1932年にはアメリカン・ケネル・クラブ(AKC)で公認犬種となりました。イギリスのケネルクラブで公認されたのは、1931年のことでした。
その後、この犬種の人気はイギリスや北米のみならず、ヨーロッパ諸国や南米やアジアなど世界中に広まっていき、現在でも大変な人気を集めています。
ゴールデン・レトリーバーの体の特徴
ハンターが撃ち落した獲物を回収するために必要な要素を、全身に備えていなければなりません。
まず、獲物をくわえて運べるようなマズルの長さと広さを持っています。
獲物の臭いをとらえたり運搬したりする際にスムーズに行えるよう、頸が長いのも特徴のひとつ。黒い鼻には、臭いを有効にキャッチできるように大きく開いた鼻孔が備わっています。
力強い腰と筋肉質な後肢は、水中でキックをする原動力となります。
両目の間隔は広く、目の色は濃い褐色で、目と同じ高さに付け根がある垂れた耳が、ゴールデンの特質である温厚でやさしい表情を作り上げていると言えるでしょう。
理想体高
オス56~61cm、メス51~56cm(JKCのスタンダード)
ゴールデン・レトリーバーの被毛
ゴールデンの魅力のひとつは、その名のとおりゴールドに輝く豊かな被毛にあります。トップコートはストレートでもウェービーでもよく、耐水性のあるアンダーコートを持っています。
ゴールデンの発展の過程で、イギリスとアメリカではタイプが少々異なってきているとか。
イギリスの犬種標準ではゴールド系とクリーム系であれば濃淡は問わず、マホガニーは除外とされていますが、アメリカの犬種標準においては、濃淡は問わないけれども鮮明で燦々と輝くゴールド系が理想とされています。簡単に言えば、イギリス系にはクリーム系の薄い毛色のゴールデンがめずらしくありません。そのため、イギリス系のゴールデンのことを、日本ではイングリッシュ・クリーム・ゴールデンなどと通称で呼ばんだりもするようです。
FCI(国際畜犬連盟)に属するJKC(ジャパンケネルクラブ)の犬種標準では「ゴールドまたはクリームの色調で、レッドやマホガニーではない。わずかに見られるホワイトは胸にだけ許容される」と記載されています。
ゴールデン・レトリーバーの性質
ラブラドールと同様、とにかく人を喜ばせるのが大好きで、とても温厚です。人のそばでいられるような環境で過ごさせてあげれば、きっとゴールデンは幸せになるでしょう。
個体差があるので一概には言えませんが、一般的にはラブラドールよりもゴールデンのほうが落ち着いていると言われます。
ただ、元来の落ち着きや穏やかさに安心してしつけやトレーニングを怠ると、家族が自分にどんな行動を望んでいるのかがわからず、いわゆる問題行動と呼ばれるような行動を取ることもあると覚えておきましょう。小型犬ではなくパワーもあるので、しっかりと家族のルールを教えてあげてください。
ラブラドール同様、泳ぐこと、水上に落ちたおもちゃを拾ってくることが大好き!協調性が高く、多頭飼育にも向いている犬種です。
ゴールデン・レトリーバーの「飼い方」のコツ
回収癖のコントロールが必要
獲物を回収する役割を担っていた時代の名残で、屋内外を問わずあらゆるものを拾ってくる癖があるかもしれません。くわえたものを口から放すトレーニングなどもぜひ行っておきたいものです。
運動欲求と作業欲求を満たしてあげよう
ゴールデンに必要な1日の運動量を距離で表すと、だいたい3~5kmと考えられています。これはラブラドールと比べれば4分の1程度。とはいえ、毎日しっかり運動をさせてあげてください。被毛を汚さないために、レインコートを活用している飼い主さんも多いようです。
ただ、狩猟犬がルーツなだけに、歩くだけでは物足りなく感じるゴールデンがほとんどでしょう。可能な限りドッグランで走らせたり、公園でロングリードにしてボール遊びをしてあげたいものです。
人に喜ばれることが生きる喜びににもなるような犬種なので、飼い主さんとのコミュニケーションも大切に。室内ではトレーニングや遊びなどをして、愛レトと楽しいひとときを共有しましょう。
きれいな被毛をブラッシングでキープ
ゴールデンの美しい被毛を保つには、なるべく毎日ブラッシングをしてあげましょう。用意しておきたいのは、ピンプラシ、スリッカーブラシ、コーム。それから、乾燥している時期は静電気や切れ毛を予防するためにブラッシングスプレーもあればベスト。
基本はピンブラシで毛並みに沿って、マッサージをするようにしてブラッシングをしてあげます。ピンブラシの役割は、主にはホコリや汚れを取ること。スリッカーブラシは、先が尖っていて皮膚を傷める可能性があるので、からまっている毛先をほぐす際や飾り毛に利用します。仕上げにはコームで全身をとかすとさらにツヤが増しますが、これは毎日行わなくても問題ありません。
新陳代謝の促進を兼ねて、獣毛ブラシで顔まわりや頭部などをやさしくとかしてあげてもよいでしょう。
滑らない床での生活を
ゴールデンはラブラドール同様、遺伝的に足腰にトラブルを抱えやすい犬種です。足や腰に大きな負担となるのは、フローリングなどの滑りやすい床で生活すること。ゴールデンの生活環境には、カーペットやコルクマットを敷くなどして、四肢が踏ん張れるような床にするのが必須です。
6歳を過ぎたら健康診断を
ゴールデンは悪性腫瘍になりやすい犬種。人間同様、シニア期になると生活習慣病にかかりやすくなるため、6歳を過ぎたら少なくとも年に1回は健康診断を受診して、病気の早期発見と早期治療に努めましょう。
最近では、健康診断パックなどを提供している動物病院が増えているので、そういった手ごろなドッグドックを利用するのがおすすめです。