【取材】売れ残りと元保護犬は、優しさに出会って16歳と15歳に。病気を乗り越えてきた長寿の秘訣は、やはり愛でした。#18テオ、サヴィナ
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。今回は16歳という超レジェンド年齢のテオくん、元保護犬で推定15歳のサヴィナちゃんが登場。2頭とも、これまでさまざまな病気を乗り越え、ここまでのスーパーご長寿になりました。
目次
テオくんプロフィール
年齢&性別
16歳の男の子
体重
25kg
大好きなこと
運動、お出かけ、家族と一緒にいること
既往歴
・8歳で左眼水晶体後方脱臼、右眼若年性白内障によりほぼ失明。
・10歳で脂肪腫を摘出。
・14歳で 前庭疾患。
このほか、眼のケガで何度か手術。
サヴィナちゃんプロフィール
年齢&性別
推定15歳の女の子
体重
24kg
大好きなこと
ボール遊び、水泳
既往歴
・8歳頃、前十字靭帯(膝の靱帯)損傷。
・12歳頃、旅先で胃捻転になり緊急手術。
テオくんとの出会い
既に2頭の先住犬と暮らしていたオーナーさん。ある日、ペットショップの“売れ残り”だった7カ月のテオくんと出会います。
「最初は迎えるつもりじゃなかったんですが、撫でたり抱っこしたりしているうちに可愛くなってしまって。
それに私たちには撫でさせるのに、他の方が撫でようとすると逃げたりもしてたんですよ。
一度は家に帰ったものの、“やっぱり迎えよう!”と思い、またすぐお店に戻りました」(オーナーさん=以下「」内同)。
テオくんは優しい性格で、人の気配がなくなると鳴いちゃうほどの寂しがり屋。ですが、家族以外の人や犬はあまり好きじゃないそう。
きっと7カ月になるまで相思相愛の相手を待っていたのですね。
迎えた後は、先住犬、特に当時8歳だった黒ラブのチョビくんによく懐き、すくすく良い子に育ちました。
初めての病気
1日3回、計2時間の散歩や、週末のお出かけでも楽しく運動できたおかげで、8歳までは病気もしなかったテオくん。初めての病気は、眼の疾患でした。
「ワクチン接種でかかりつけ医に行った時、左眼の水晶体が脱臼していて、明暗しか感じない状態だということが判りました。
それで眼科の病院を紹介していただいたのですが、手術はせず、目薬で悪化を防ぐことになりました。
手術には感染症のリスクがあり、このままの状態なら眼球摘出も不要だったためです。
原因は老化や大きな衝撃らしいのですが、特に思い当たることはありませんでした」。
その後、右眼も若年性の白内障になり、テオくんは段々目が見えなくなっていきます。
「溝にハマったりもしていたので、怖がって散歩に行かなくなることが心配でした。でも意外に平気そうで、家でも外でも普通に歩いていました。
ただ、見えないせいで眼をケガしてしまうことがあり、何度か眼球の手術をしています」。
眼の疾患の後は、10歳で胸の手術を経験。ソフトボール大の脂肪腫ができ、摘出は無事に終わったものの、縫合後に何度も皮膚が破れてしまいました。
大きな脂肪腫を取り除いた後は、皮膚を過不足なく縫合する必要があり、破れない余裕を持たせることが難しかったのだそうです。
前庭疾患
それからはまた元気に過ごしていましたが、14歳で大きなピンチを迎えます。
「夜、寝ている間に痙攣を起こしたんです。朝には止まっていたものの、立ち上がれない状態でした。
病院では眼振もあるので前庭疾患だろうと言われ、ステロイドで治療することになりました。
2週間後に少し強い薬に変え、3週間後にようやく立ち上がれたのですが、数メートルも歩けませんでした。庭でおしっこさせるのがやっとという感じです。
その間、おしっこもウンチも全部垂れ流しだったので、あわててオムツを買いに行ったりもしていました。
そしてお医者さんに介護の相談をしようにも、“もう寿命です”と言われ、あの時は本当に途方に暮れていたと思います。
でも、インスタで“復活するよ!”というコメントを何通もいただいて。それが心の支えになり、私も絶対復活すると信じていました。
それでマッサージしたりお灸したり、自分で色々調べて介護しているうちに、少しずつ回復していったんです」。
マッサージやお灸は身体を温めるため。寝たきりで冷たくなっていた手足を揉んだり背中を摩ったり、それから後ろ脚のストレッチもされていたそうです。
サヴィナちゃんとの出会い
もう一頭のレジェンド、サヴィナちゃんとはどんな出会いだったのでしょう。
「サヴィナは元保護犬でした。ネグレクト状態で避妊もされておらず、出産した子どもと一緒に捨てられていたそうです。
保護した団体が里親を募集した時、ちょうど黒ラブのチョビが亡くなり、傷心のテオに新しい兄妹を探していたので、会ってみることにしたんです」。
ドッグランで初対面した、4歳手前のテオくんと推定2〜3歳のサヴィナちゃん。
結果は大乱闘で、オーナーさんは受け入れは難しいと思われたそう。
でもせっかくだからと帰りに少しリードを持ってみると、サヴィナちゃんはオーナーさんの指示にしっかり反応します。
“これはしつけられた賢い子だ”と思ったオーナーさん。奥さまが乗り気だったこともあり、トライアルに進んでみることにしました。
トライアルでは初日から家族に馴染み、オーナーさん側はすぐにOK。規定の2週間を待って正式譲渡となりました。
フィラリアの影響
譲渡後に気掛かりだったのが、フィラリアです。陽性と承知の上で引き受け、薬で治療もできましたが、心臓へのダメージが心配でした。
「3年間は運動制限がありました。元気だったので遊ばせてはいたものの、ずっと気を付けながらという感じです。
それで6年程は何もなかったのですが、8歳になって膝の靭帯を損傷した時が問題でした。
手術で治すとなると、骨を切ってプレートを入れる大手術になるので、心臓にダメージが残っている可能性があるサヴィナには、リスクが高いと言われたんです。
薬で自然治癒力を高めて治す方法もあるのですが、体重が重く膝への負担が大きい大型犬には不向きということでした。
とはいえ、やはり心臓のリスクは避けたいので、結局薬で治療することにしました。
するとそれがうまくいってくれて、半年くらいで徐々に回復していきました」。
薬は『カルトロフェン』を週1回、計4回皮下注射し、後はサプリを飲んで安静にしていたそうです。
胃捻転で大ピンチ
その後は無事に暮らしていたサヴィナちゃんですが、12歳頃、旅先で急病に見舞われます。
「お正月に家族で滋賀に行った時のことでした。
朝食後にサヴィナがえずき出して、でも何も出てこないのが続いたと思ったら、お腹が見る見る膨れてきたんです。
病院!と思いましたが、正月なのでどこも開いてなくて。かなり離れていましたが、救急病院でもある大阪のかかりつけ医を目指すことにしました。高速で2時間の距離です。
移動中も近くの病院を探し続けていたら、1時間くらい走ったところで診てくれる病院が見つかったので、高速を降りて急行しました。
診断は胃捻転で、もし開腹が必要な状態だったら、この病院では大型犬の開腹手術ができないため、別の病院を探すことになると言われました。
それでまず胃に穴を開けて溜まったガスを出したのですが、ガスが抜けるとだいぶ楽になった様子でした。
それから全身麻酔をして、口からカテーテルを入れました。するとカテーテルを入れたことで捻れが取れ、危険な状態を脱することができたんです」。
その後は1〜2日で回復したサヴィナちゃん。症状によっては本当に危ない状況でしたが、捻れ方が複雑ではなかったことが幸いしました。
胃捻転はよくある病気ではないものの、レトなどの大型犬は比較的発症しやすく、一刻も早い治療が必要な病気です。
吐きそうだけど何も出ない、お腹が膨らむといった症状がある場合は、夜間でもすぐ病院に連れて行きましょう。
“本気噛み”の茶々くん!
実はオーナーさん一家には、もう一頭の元保護犬がいます。3年前に迎えた茶々くんです。
「7年のネグレクトを経て保護され、やっと里親が見つかったと思ったら、その家の子どもを噛んで“出戻り”になった子でした。
サヴィナの保護団体のサイトでその経緯を見て、放っておけなくなって迎えたのですが、これが初日に返そうと思うくらい大変な子で。
というのも、こんなに本気で噛む犬は初めてというくらい強く噛まれ、病院送りにされてしまったんです。
でも噛まれた時、“もう返そう”と思いつつふと茶々を見ると、何だかシュンとしていて。
どうせならと、もう片方の手も出してみたら、そっちは噛まなかったんです。それでやっぱり何か理由があって噛んだのかと、思い止まりました」。
その後も噛み癖は続きましたが、オーナーさんの見立てどおり、食べている時や寝ている時など、噛む理由やタイミングがあることが分かってきます。
それから3年間、毎日少しずつしつけてきたおかげで、今ではケガの治療や耳掃除などを除き、ほとんど噛まれることはなくなりました。
それにしても、手を噛まれて血だらけの時に、茶々くんを見極めるためもう片方の手を差し出したオーナーさんには驚きです。
保護と出戻りを経験し、シニア期も近づいていた茶々くんにとって、自分の決断がどんな意味を持つか。その重みを正面から受け止めた、覚悟の行動だったのだと思います。
早食い&がぶ飲み禁止!
茶々くんも加わり、益々個性豊かになった一家のラブたち。こんなごはんを食べていました。
「基本はずっとドライフードです。サヴィナの胃捻転の後はグルテンフリーの『オリジン』にして、ふやかした後、潰して空気を抜いてからあげています。
ドライフードを早食いして水をがぶ飲みするのが良くないそうなので、水も自由には飲ませていません。
それからフードには『ブッチ』もトッピングしていて、あと水をあまり飲まなくなったテオのために、野菜スープやヤギミルクもあげています。
野菜スープは、圧力鍋でペースト状にした野菜を使った義母の手作りです」。
テオくんに用意したものは他の子も欲しがるので、スープもミルクも結局全員にあげることに。
また、おやつは旬の果物やサツマイモなどで、市販品はお出かけのときに少しあげるくらいだそうです。
1年半の介助生活
あまり水を飲まなくなってしまったテオくん。きっかけは、自力で立てなくなり、水飲み場に行けなくなったことでした。
そして水以外にも、食事や散歩、トイレや寝返りなどで介助が必要になってきました。
「ごはんは、普段いる和室から台所に連れて行き、滑り難いヨガマットの上で食べさせています。
食後は自分で歩いて和室に戻ることもあるものの、段々お尻が下がってきてキツそうな感じです。
それからオムツや散歩用カートも活用していますが、どちらも嫌がらないので助かっています。因みにサヴィナはまだ必要ないのですが、試してみたらどちらも嫌がってました」。
テオくんが老け込んできたのは前庭疾患になってから。1年半程続いている介助生活の中で、ほかにも役立ったグッズがありました。
玄関周りの滑り止め、段差解消のドッグステップ、布製ベストに取っ手が付いた介護ベルト、そして全身を支えるビーズクッションなどです。
それから夜間のトイレや寝返りも手助けが必要ですが、テオくんたちと同じ1階で寝ているお義母さまが対応されています。
慈愛の心
大波小波を乗り越えて、テオくんもサヴィナちゃんも今や立派なレジェンドに。その秘訣はどこにあるのでしょう。
「難しい質問ですね。毎日散歩して、外で楽しく遊んで、少しのしつけをして⋯。
そんなことが浮かびはしますが、12歳で癌で亡くなった黒ラブのチョビにも、同じように接していたので。
どんな育て方が正解かは分かりませんし、テオやサヴィナがいつどうなるかも分からないと思っています。
だから今は、散歩もお出かけも “今日が最後かもしれないから、何が何でも行く!”という気持ちで、どんなにしんどくても行くようにしています」。
朝早くから夜遅くまで仕事をされていて、取材時も寝不足だったというオーナーさん。
それでもテオくんたちの話をする時は、とても優しく、明るい表情で話してくださいました。
自然に溢れてくるような愛情、そして“売れ残り”だったテオくんや元保護犬のサヴィナちゃんたちを放っておけない優しさ。
“犬が好きだから”、“可愛いから”という感情に留まらない、慈しみの心を感じました。
このオーナーさんと出会えてなかったら、こんなに幸せに長生きできていないはず。ストレートにそう思えてしまうお人柄が、2頭をレジェンドに導いたのだと思います。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
★「#レジェンドレト」で投稿お待ちしています!
レトリーバーライフでは、取材にご協力頂けるレジェンドレトを探しております!
12歳を超えたレトたちは、「#レジェンドレト」をつけてInstagramに投稿してみてくださいね。
編集部から取材のお声がけをさせて頂くかも!?
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