2018年12月1日3,979 ビュー View

【股関節形成不全】早期の健診がマスト!予防法や重症化を防げる環境管理術を知る

遺伝的な素因が関係すると言われる、股関節形成不全。昔からレトリーバーには多いとされる疾患でしたが、近年はブリーダーの選択交配によって、股関節形成不全を発症するレトリーバーはかなり減ってきました。それでも、遺伝的に問題のない血統での発症も認められるので、注意しておくべき関節疾患です。

レトと暮らすのであれば、股関節形成不全の予防法から、早期治療のカギとなるチェック方法、初期症状の見分け方などをぜひ頭に入れておいてください。

近年では股異形成とも呼ばれています。

病気のサイン

レトリーバー病気

kphotograph/shutterstock

最初は歩行スピードがゆっくりになったり、歩いている途中で休みたがるようになります。

 

さらに、腰を左右に振って歩く“モンローウォーク”をしたり、階段の昇り降りや運動そのものを嫌がるようになります。脚を動かすと股関節の炎症部に痛みが生じるからです。

 

起き上がる動作が大変そうであったり、横すわりをするケースもあります。

 

原因

股関節は、大腿骨と骨盤が靱帯や関節包によってしっかりとつながっています。そのため、大腿骨を引っ張っても容易にははずれません。

 

ところが、靱帯や関節包が伸びてしまうと股関節が脱臼しやすくなり、その状態を股関節形成不全と呼びます。

 

遺伝的な要因があると言われるため、ラブラドールやゴールデンのブリーダーが繁殖管理をしたところ、発症率が低下しました。

 

けれども、遺伝的な問題がない血統のみを選んでいる盲導犬の育成現場で発症するケースもあり、正確な発症原因は明らかにはなっていません。

 

症状

一般的に子犬期は症状が軽度で、生後半年ごろから飼い主さんが気づくケースが多いでしょう。

 

歩行の異常をはじめ、走り出す際にうさぎ跳びのように両足をそろえたり、後ろ脚が立たなくなる例もあります。激しい痛みのあまり、性格が攻撃的になることも。

 

片方の股関節だけに起こるよりも、両方の股関節に生じる場合が多数を占めます。

 

発症年齢は、生後4カ月齢からシニア期まで。一般的には、成長するにつれて症状が重くなります。

 

滑る床での生活や肥満は、さらに症状を悪化させる要因になるので注意しましょう。

 

診断

触診によって股関節の動き具合を診たり、歩き方などの症状を観察したり、レントゲン(X線)検査によって診断をします。

 

軽度なものから重度なものまで、症状は7段階に分けられます。

 

治療法

関節炎による痛みを伴うケースが多い疾患なので、レトが痛がっているようであれば、鎮痛剤や抗炎症薬を投与する内科療法をまずは行うことになるでしょう。

 

症状が出ているレトには、ドッグスポーツなどの過度な運動は厳禁です。けれども、運動をしないと筋肉が衰えてしまい、若齢犬では発育不良になる危険性があります。痛みのコントロールができているようであれば、散歩などの軽い運動は続けましょう。

 

体重が重ければ重いほど、股関節への負荷がかかってしまいます。そのため、肥満のレトや肥満傾向にあるレトには、ダイエットも必須。獣医師に指導のもと、食事療法などで体重を徐々に落として行くのが重要です。

 

症状によっては、外科手術による治療が選択肢になるでしょう。日本で一般的に行われているのは、大腿骨を削る「骨頭切除術」。

 

そのほか、人工関節を入れる方法もありますが、衛生的な施設で手術を行わなければならないことと、人工関節が高価なことから、それほど普及していません。けれども、人工関節を入れればドッグスポーツができるまでの機能回復が期待できます。

 

根本的な治癒は望めませんが、補完代替医療としてサプリメントを獣医師から紹介されることもあるでしょう。

 

予防法

遺伝的な素因を持って生まれても、生活習慣に気をつければ股関節形成不全の症状が出ないですむケースも少なくありません。

 

生活環境でもっとも大切なのは、決してフローリングなどの滑る床で過ごさせないこと。四肢をしっかりと踏ん張れず、歩行がしにくい滑る床での生活は、股関節はもちろん膝関節や肘関節にも悪影響をおよぼします。

 

カーペットやコルクマットを敷いたり、滑り止め加工をフローリングに施したりして、環境の整備を。

 

レトは食べることが大好きなので、太りやすい点にも要注意。肥満は確実に、股関節形成不全の発症因子になります。発症後も、肥満の場合は重症化しやすくなります。

 

子犬期のダイエットは発育不良を招く恐れがあるので推奨されませんが、成犬になったら、肥満にならないように食事管理をしましょう。

 

トレーニングで使用するおやつも、ササミジャーキーといった高カロリーなものは避けて、なるべく低カロリーなものをチョイスするのがおすすめです。

 

治療費

診察料(再診料):1,000~2,000円

レントゲン検査:5,000円~15,000円

外科手術:300,000円~

※病院や症状や処置内容によって治療費は異なるため、あくまでも参考料金です。

 

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