顔をなめさせると危険!? 愛レトからうつる感染症に注意
飼い主さんのことが大好きなレトたちだから、ペロペロと顔をなめてくるかもしれません。でも、ちょっと待って! 残念ながら犬の口腔内にいる常在菌が原因で、飼い主さんが「人獣共通感染症」と呼ばれる病気になることもあるのです。
どのような病気に注意が必要か、見ていきましょう。
犬の口腔内細菌が原因で発症する「パスツレラ症」
約7割の犬の口の中には、パスツレラ菌という菌が存在しています。犬はその菌によって健康を害することはありません。
ところが、人がその菌に接すると、パスツレラ症という感染症を発症する危険性があります。
パスツレラ症にかかる原因でもっとも多いシチュエーションが、犬に咬まれること。
咬まれた人の血管にパスツレラ菌が侵入すると、血流に乗って体をめぐり、呼吸不全などに陥ることもあります。
こうした重症例では入院をして、抗生物質などの点滴治療を行うことになるでしょう。
そこまで重症ではなくても、咬まれたあと、痛みを伴って腫れ、患部から悪臭のある膿が出るのも特徴です。
抗菌剤の投与などによっても症状が改善しない場合、切開をして膿を出すケースもあります。
さて、パスツレラ菌は人の口や鼻から体内に侵入することもあります。
健康な人ならば、多少のパスツレラ菌が体内に入っても無症状のケースがほとんど。
けれども、口内炎があったり、病中病後で免疫力が低下しているときにパスツレラ菌と接触すると、パスツレラ症にかかる恐れがあります。
パスツレラ症で多く報告されているのが、副鼻腔炎が悪化する、鼻から膿が出る、鼻づまりや鼻水の症状が続く、喉の痛みや声がかすれるといった症状。
人によっては食中毒や関節炎になるケースもあると言います。
とくに、糖尿病などの基礎疾患を持っている患者さんは重症化しやすいので注意が必要です。
発症年齢は50~60代がもっとも多く、40代や10歳以下の乳幼児の発症も見られるそうです。
同じく犬の口腔内細菌で発症する「カプノサイトファーガ感染症」
犬のが口腔内に保持している3種のカプノサイトファーガ菌によって起こる感染症です。
日本国内の犬の74~82%がカプノサイトファーガ・カニモルサス菌を、86~98%がカプノサイトファーガ・サイノデグミを保菌しているというデータがあります。
カプノサイトファーガ・カニスは近年報告された新しい菌種のため、現在調査中だそうです。
パスツレラ症同様、免疫力が高ければ感染しても無症状で診断すらされない例がほとんどですが、免疫が弱っていると、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、嘔吐などが生じて、まれに敗血症や髄膜炎などの重篤な症状に陥り、敗血症では約26%、髄膜炎では約5%が死に至るとされます。
日本においては1993年から2017年まで合計93例が確認されていて、そのうちの死亡は19例とのこと。けれども、カプノサイトファーガ感染症の認知度が高まっていない時代の患者も多いと考えられるとか。
また、この感染症は感染症法の届出対象疾病ではないため、把握されていない患者数も多いと言われています。
潜伏期間は1~14日で、1~5日が最多。発症年齢は40~70代が多くなっています。
主には犬に咬まれることで感染しますが、傷口をなめられたことで感染したケースも報告されています。
2016年のフィンランドの報告によると、人口100万人あたりの発症率は約5%。軽症の患者も多く把握できるようになったため、カプノサイトファーガ感染症の実態が次第に明らかになってきているようです。
治療は、抗菌薬の投与によって行われるのが一般的です。
レトはそもそもなぜ顔をなめるの?
レトリーバーたちは、そもそも人の顔をなぜなめようとするのでしょうか? ひと言で答えれば、それは親愛の情を示すため。
犬は生まれてすぐ、母犬に全身をなめられます。母犬が子犬への愛情を示すのがなめる行為であるのと同時に、子犬が母犬に甘える行為もまた口元をなめることだと考えられています。
子犬が母犬の口元をなめる理由はもうひとつ、母犬が噛み砕いて食べやすくなった離乳食を口移しで食べさせてもらうのを催促しているからだとか。
我らが愛レトたちはやはり、なめるという行為で飼い主さんに甘えたり愛情表現をしているのです。
なめられることで感染する病気を防ぐには?
愛情表現で愛レトが顔に迫ってきていると思うと、ついつい飼い主さんもうれしくてなめさせてあげたくなることでしょう。
健康に自信があって、多少のリスクを負ってでも顔をなめさせてあげたいと思うのであれば、もちろん引き留めはしません。
けれども、飼い主さんの年齢が乳幼児や中高齢であったり、免疫力が低下している状態にあるなど、少し不安があるようであれば愛レトとの濃厚な接触は控えるほうがベター。
とはいっても、傷口がないときに頬だけをなめさせる、唇はぎゅっと閉じて口腔内に愛レトの舌が入らないようにするというように注意をしながら愛レトの愛情表現を受け入れている飼い主さんもいるようです。もちろん、なめられた顔はなるべくはやく洗うようにすれば、より安全と言えるでしょう。
いずれにしても、こうした菌や感染症の存在を知っておくことが大切であるのは、言うまでもありません。
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