【ブックレビュー】『ディロン~運命の犬』セラピー犬になったゴルの実話
セラピー犬として活躍するゴールデン・レトリーバーのディロンの実話が綴られている、『ディロン~運命の犬』井之上こみち著(幻冬舎文庫/2006年5月初版)。
この本は、2006年5月に書籍名と同じタイトルでNHKでドラマ化されて放送されてもいます。
アニマルセラピーの活動について、また飼い主との絆に、あるいは保護犬に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
運命の出会い
主人公の太田恵里とゴールデン・レトリーバーのディロンの出会いは偶然でした。たまたま街で見かけた美しいゴールデンに目を奪われた、恵里。その後、犬のイベントで再び同じゴールデンを見かけたのです。
ところが飼い主であり犬の訓練士であったオーストラリア人のポールが病気のために、そのゴールデンのディロンを置いて帰国。ディロンはひとり、ポールの日本再訪を待ちわびながら犬の施設で過ごしていたのでした。
恵里はその施設で開催されていたしつけ教室に参加していたこともあり、ディロンの近況をたまたま知ることに。そして、英語を学び、シドニーにいるポールにディロンを引き取りたいと伝えるために旅立ちました。
読み進めるうちに、恵里とディロンの出会いは偶然ではなくて必然であったのだと感じずにはいられません。その後のディロンの可能性を引き出す力を備えた人物こそ、ドッグトレーナーでもなく、当時は一愛犬家に過ぎなかった恵里であったと、読み進めるうちにわかるからです。
ディロンが日本におけるセラピードッグの先駆けに
恵里はディロンのほかにもゴールデンと暮らしていました。一般の愛犬家とはいえ、そんな恵里だからこそ、ほかの犬とディロンの違いを見抜けたのかもしれません。
ディロンはポールがいなくなってから、施設のスタッフと打ち解けられずに心を閉ざすようになっていたようです。太田家で大声を出すと、ディロンはおびえて粗相をしてしまったとか。
ディロンに関しては文中でも「ねじれた気持ちは、かなりいびつだった」と表現されているとおり、太田家のみんなを困惑させました。
けれどもそんなディロンの心の傷を少しずつ回復させると同時に、シドニーでポールに言われた「ディロンには人を見抜く力がある」という言葉を意識していた恵里は、次第にディロンの秘められた能力を引き出すようになっていきます。
ディロンが可能性を確かめる現場になったのは、高齢者福祉施設。
訪問をはじめ、動物と人々を触れ合わせる活動をアニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA/動物介在活動)と呼びますが、その活動にディロンは恵里とともに挑戦することになったのです。
1995年に初めてディロンが訪問活動を行ってから、ディロンと恵里との関係性が変化していく様子もまた、本書の読みどころです。
ディロンが広げた恵里の世界
ディロンがきっかけで、恵里はアメリカ行きまで決意しました。
それは、動物関連の研究や教育などで世界をリードする“デルタ協会”が認定している、エバリュエーターという資格を取得するため。
エバリュエーターとは、人とともに活動する動物にその適正があるかどうかを審査できる人に与えられる認定資格で、世界的に通用する資格があれば、恵里は以前から行っていた動物保護活動やAAA活動に活かせると思ったからです。
恵里はデルタ協会の研修中、アニマル・アシステッド・セラピー(AAT/動物介在療法)を実際にリハビリの現場に取り入れている病院で、初めて実際にセラピードッグがリハビリの手助けをしている現場を見学することもできました。
また、シアトルの女子刑務所では、受刑者たちが保護犬たちを社会復帰させる手伝いをしたり、介助犬の訓練をしている現場を見るチャンスもありました。
エバリュエーターの資格取得はもちろんのこと、それらの施設で目にしたことが、恵里ののちの人生に大きな影響を与えたことは、想像にかたくありません。
傷ついた人の心を癒すディロン
ディロンは人々に寄り添って心の傷を癒すという能力が、とても高い犬でした。
それは、ディロン自身が心に傷を負ってしまったということも影響しているのかもしれません。
ディロンはやさしい声で呼ばれても無視をしたり、逆に呼ばれていなくてもさりげなく近くに行って寄り添ったりするそうです。それは、ディロンの意思なのだと、恵里は感じているとか。
ディロンには心に傷を抱えている人を見抜いたり、人の身勝手さや残酷さを嗅ぎ分ける力があるとも述べられています。
そんなディロンを、恵里は当時日本ではめずらしかったAATの現場で活躍させるまでになりました。
おわりに
ディロンに心救われた人は、どれほど多かったことでしょうか。
本書で語られている数々のエピソードにもまた、犬という生き物の持つ力の大きさを感じずにはいられません。
と同時に、恵里とディロンもまた、心の絆を深めることで互いの力がどんどん伸ばされていったのだと思います。
愛犬と向き合い、愛犬との結びつきを大切に育むことの清らかさをあらためて気づかせてくれる一冊ともいえるでしょう。
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