2019年6月19日4,604 ビュー View

『ラブラドールなんだけども。』ーマンボウやしろ#2[ゴルの魅力VSラブの引力!]

大のラブラドールレトリーバー好きとして知られる、マンボウやしろさん。そんなマンボウやしろさんに、ラブラドールの魅力と思い出を存分につづっていただく連載。

#2は、少年時代をともに過ごしたラブラドールレトリーバー「ロン」の、散歩にまつわる話。

まだまだラブラドールレトリーバーの知名度が低い時代のコトであるー。

イエローラブのロン。『散歩』の言葉に大興奮

1980年代。なんの間違いか、千葉の田舎の寿司屋にやってきてしまったイエローのラブラドールレトリーバーのロン。

 

まだまだ知名度の低い犬種だったので、知人にラブラドールと言ってもすぐに理解してくれる人は少なく、盲導犬で働く犬種だと説明してようやくイメージ出来るようでした。

 

雑な時代だったので、それまで家で飼われていた犬は放し飼いでしたが、時の変化とともにロンはキチンと繋がれて飼われました。

 

繋がれて飼われるということは、それすなわち散歩という概念が産まれるというわけで、ある程度の大きさになったロンの散歩は基本的には父がしておりました。

 

父は犬の散歩などしたことがあったのだろうか?

 

初めての大型犬であり、ドッグトレーナーの人に相談していたような記憶もあるのだが、30年以上も前のことでその辺りの記憶はかなり曖昧だ。

 

ほぼ全ての家のワンちゃん同様に『散歩』というワードの響きを聞けば興奮し、目をギラギラさせて全身が躍動感にみなぎります。

 

ロンはストイックな散歩を好んだ

ラブラドールレトリーバー,マンボウやしろ

Kelly vanDellen/shutterstock

夕方になると父は自転車にまたがりリードを持ち、ロンは父の自転車の横にサイドカーのように付いて意気揚々と海に向かって出かけていく。

 

うちからは海が見え、海岸線までは歩いて1〜2分くらいの距離でした。

 

ロンは散歩から帰ってくると物凄い勢いで水を飲み干し、瞬殺でお代わりの水すらも飲み干し、そうしてそのまま荒い息でぶっ倒れます。

 

僕自身、部活をしていたので毎日見れていたわけじゃないですが、目にしたときは毎回同じ感じなので、どうやらいつもその感じのようでした。

 

え? 何が起きてるの? え? 部活なの? ロンも部活してるの?

 

ロンはオスでしたが、疲れ方から見ると普通の部活じゃないようでした。

 

野球部なの? サッカー? いいやラグビー部レベル?

 

なんだか中学の部活じゃないような疲れ方で、少なくても高校の部活であり、おそらく全国大会出場レベルの部活に属しているかのようなぶっ倒れ方でしたw

 

ロンの散歩は犬ゾリの訓練を思わせた

ラブラドールレトリーバー,マンボウやしろ

Sergii Kovalov/shutterstock

ある日の夕方、僕は自転車に乗って父とロンの散歩について行きました。ビーチと海岸沿いの国道の間には広い歩道があり、信号は全くありません。

 

父が自転車をこいで、その速度に合わせてゴキゲンにロンが走る!

 

そんな散歩を想像していたのですが、似ているようで全くタイプの違う散歩が行われておりました。

 

なんと父は自転車のペダルを全くこいでいないのです!

 

え? 何これ? 犬ゾリじゃん。

 

南極物語で見たことあるけど、これほぼそれの訓練じゃん!

 

僕は驚きとともにそんな事を考えてました。

 

うちの近くから1.5kmくらいのところに海に突き出した石の橋があり、どうやらそこが折り返し地点らしく、休憩もなくスムーズに人と犬が一体となり、なんのためらいもなくUターンしました。

 

なんなんだこのシンクロ率は? 部活の先生と生徒というよりは、なんというか師匠と弟子みたいな関係に見えたw

 

この2人のストイックなノリはなんだ?

 

もしかしたら本気で南極大陸で働くことを夢見ているのか? それとも僕の知らない何かの競技で2人は世界を目指しているのか?

 

疑問だらけの散歩から家に着くと、ロンは他には目もくれず水をガバガバ2杯飲み、息を荒げてぶっ倒れます。

 

こういう事だったのか?そりゃ倒れるよ!

 

父の言い分では「はじめはゆっくり並走していたが、ある時からグングンと自転車を引っ張るようになり、こちらが自転車をコントロールすると危ないからロンに任せるようになった。」とのことだった。

 

ロンは自分でこのハードな散歩を望んでいるの? でも、そうか。そうじゃなかったら『散歩』というワードであんなに嬉しそうに出来ないよな。

 

あのハードワークが嫌ならば、散歩という言葉が嫌いになっているはずだ。

 

ロンは、父にとって3人目の子どもだった

ラブラドールレトリーバー,マンボウやしろ

Jaromir Chalabala/shutterstock

愛くるしい見た目で頭が良く穏やかな性格。

 

そんな売り込みでアイドルとしてやってきたラブラドールレトリーバーは、気がついたらいかついアスリートの存在として家に君臨していた。

 

僕の地域の小学校は1年生から6年生までマラソン大会があり、学年とともに距離が伸びる。

 

マラソン大会が近づくと4歳年上の姉と父は毎日この海岸線を走っていた。

 

小学校にあがると僕も一緒に走らされた。

 

僕は小さい頃は体が弱く、この謎のトレーニングが嫌だったが、父と姉は当然のようにこなしていた。もちろん父は自転者だ。

 

姉はマラソン大会ではいつも上位で、僕も低学年の頃は上位だった。

 

そりゃそうだ。だって僕の学年の距離は1km前後なのに、姉の学年に合わせて毎日3kmくらい走っていたのだから。

 

父はロンを自分の2人の子供と同じように接して育てのだろう。

 

子供が走らなくなった後に、同じ海岸ロードを毎日ロンと走ったのだ。

 

うん。おかしいでしょ? そもそもマラソン大会にそこまで本気で向き合っている家族って他にいなかったしw

 

しかも、ロンはマラソン大会に出ないし! っていうか犬のマラソン大会無いし!

 

しかし、父とロンは性格というかノリがあっていたようだ。

 

散歩以外の時も異様に仲が良かった記憶だ。

 

ラブラドールの知名度が低い時代の話である

ラブラドールレトリーバー,マンボウやしろ

loocmill/shutterstock_

父はロンに出逢えて間違い無く幸せだったと思うし、ロンも父と出逢えて幸せだったのだろうと、人間の勝手ながら思っている。

 

父と散歩に行くようになり1年くらい経った頃だろうか?

 

あまりのハードトレーニングにより、ロンの胸筋は膨れ上がり、普通にお座りすると筋肉が邪魔して、前足が微妙に真っ直ぐ伸びないようになっていた。

 

ロンの生活には一切支障はなかったので良かったが、近所の人や初めて家に来た人には「あらあら立派な土佐犬ですね〜」と言われるようになっていた。

 

まだまだラブラドールレトリーバーの知名度が低い時代の話である。

 

 

マンボウやしろ

ラブラドールレトリーバー,マンボウやしろ

元お笑い芸人。1997年よりお笑いコンビ「カリカ」として活動し、2011年に解散。その後ピン芸人を経て2016年に芸人を引退。現在はラジオパーソナリティ、演出家、脚本家、MCなど多方面で活躍中。

Twitter:https://twitter.com/manbouyashiro

メルマガ:マンボウやしろの『死ぬまで生きます』

 

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