2019年7月27日5,995 ビュー View

【レポート】熱中症対策セミナーで学んだ大切な命を守る方法 「このくらいなら大丈夫?」は絶対ダメ!

毎年5月頃から話題となる「熱中症」。これほどまでにたくさんの情報が手に入り、注意喚起され、人の場合は自分で対策を取ることができるにもかかわらず年々患者数が増え続け亡くなってしまう方も後を絶ちません。そのようにとても危険な病気である熱中症、実は人間よりも犬の方がかかりやすいのです。それなのに犬たちは自分で対策を取ることができません。大切なレトリーバーの健康と命は私たちが守りましょう!今回は一般社団法人動物予防医療普及協会理事であり獣医師の安 亮磨(やす りょうま)先生が講師を務めた熱中症対策セミナーのレポートをお届けします。

人と犬と両方、熱中症の症状を間近に見たことで怖さが身に染みてわかった

重度の熱中症を発症した人や犬を見た経験はありますか?

 

私はどちらもその現場に遭遇しています。

 

それぞれ別の場所、全く違う環境下での出来事でしたが、熱中症の怖さを見せつけられた経験となりました。

青い空と白い雲。楽しい気持ちになるけれど人も犬も熱中症の危険が高まる季節

 

特にワンコの方は入院先の病院で亡くなってしまったということを後日知り、強いショックを受けたのです。

 

あの時のことを思い出すと今でも意識を失いぐったりしたその子の様子などが蘇ってきて苦しくなります。

 

そして飼い主さんの心の傷のことを考えると辛くなり、こういうことがもう二度と起こらないようにと強く願うのです。

 

「何も対策をしていなかったの?」

 

いいえ、そういうわけではありません。

 

熱中症はほんの少しのボタンの掛け違いのようなものでも起こり得るものです。

 

自分は大丈夫だと過信しないこと、命を落とすこともあるという認識を持って、楽しい夏を過ごしましょう。

 

熱中症ってどんな病気?どんな症状が出るの?

とても簡単に言うと熱中症は高熱が出て下がらなくなり、ぐったりする病気です」(安先生)

 

そして熱中症になり、高熱になると様々な身体の機能に影響が及ぶようになり、重度(体温が42度以上)になるとショックや多臓器不全を起こし死に至る、というのです。

 

ただ熱が出てだるい、というような簡単なものではなりません。

セミナーで講義する安先生。たくさんの資料を使ってわかりやすく説明してくださいました

 

ではその主な症状を見てみましょう。

 

1. 身体が熱い

犬の体温は38~39度前後。39.5度以上は発熱。愛犬の平熱を知っておこう

 

2. ハァハァしている、ヨダレが多い(パンティング)

よだれがサラサラではなくネバネバしていたら脱水が重度の可能性がある

 

3. 目や口の中の粘膜が充血している

 

4. 嘔吐、下痢

 

5. ぐったりしている

 

6. 痙攣をおこしている

 

7. 意識がない

ハァハァが激しく粘り気のあるヨダレが出ていないか注意

 

痙攣や意識混濁が起きたらすでに重症で、人の場合は死亡率30%とも言われています。

 

どんな病気も早期発見・早期治療は鉄則。上記のような症状がひとつでも見られたら熱中症を疑いましょう。

 

なってからではなく、ならないような対策を

恐ろしい病気である熱中症。

 

大型犬といえども私たちより確実に地面から近いところを歩いています。反射熱は相当なものです。

日陰で休む時間もたっぷり取ろう

 

そして私たちのように全身で汗をかくことができませんし、毛皮を着ていますから室内でも私たちより暑さを感じています。

 

実は犬の熱中症は7割が室内で起きているのです。

 

室内外問わず熱中症にならないようにするために心がけたいことも、今回のセミナーで色々と教えていただきました。

 

 

1. 気温が高い時間帯には外に出さない

アスファルトの温度は50度以上になることも。マンホールも熱を持ちやすい。足裏の火傷にも注意。

 

 

2. 気温だけでなく湿度にも注意

同じ気温でも湿度によって危険度が変わるので、気温が高くなくても湿度が高い時には注意が必要。

 

 

3. 車の中に絶対に置き去りにしない

車の中はあっという間に温度が高くなる。ダッシュボードは70度以上になることもあり、助手席などにいる場合はその熱の影響を受けてしまう。

 

★後部座席などに犬を載せる場合、その場所が涼しいかどうかが大切

・ソフトクレートは熱がこもりやすいので注意が必要

・ハードクレートはそれ自体が熱くなっている可能性があるため、乗せる前に確認する

 

 

4. 室内ではエアコン必須!風通しの良い場所を確保することも必要

室温は26度前後、湿度は50%前後を目安に調整(気象計を犬の高さに置いておくとわかりやすい)。犬がよくいる場所が涼しいかどうかが大切。

エアコンは24時間付けっぱなしが基本、シーズンの初めは試運転して壊れていないか確かめておく。

 

★停電時の対策も忘れずに!

日中はカーテンを閉め、室内を移動できるようにしておく(サンルームは暑くなるので行かないように閉めておく)。また、クールマットやジェルマットなどを置いておくことも大切(誤食に注意)。

室内ではクーラーを使って快適に

 

5. 適切な水分補給

犬が1日に飲む水の量は体重1キロあたり40~60ml、体重30キロのレトの場合は1,200~1,800ml(1キロあたり90ml異常になると多飲多尿という病気の場合も)。食事で水分を補給させるのも良い方法。

 

 

6. 肥満に注意

太り過ぎは、身体に熱を閉じ込めてしまうため熱中症のリスクが高まる。

 

持っててよかった!と思える便利グッズたち

熱中症予防に効果的と思えるグッズも色々と紹介していただきました。

 

まずは後述する応急処置にも使える、お散歩時に携帯すべきものは以下とのことでした。

 

・水500ml×1~2本

・薄手のタオル

・うちわ、扇子

 

水は飲ませたり身体にかけるためのものなので、大型犬だともっと必要かもしれません。

 

1リットル以上の水を持って歩くのは結構大変ですが万が一の時にはこの水が命を助けてくれることになるはずです。

 

他の予防グッズや対策を併用して、水はどれくらい持って歩くか考えてみると良いと思います。

身に着けさせる保冷剤は使われている中身も確認しよう。かじったりしないような注意も必要

 

あると便利なグッズ

・保冷剤

・クールバンダナ

・クールウェア

・霧吹きスプレー

・瞬間冷却材など

 

今では様々な暑さ対策グッズが販売されています。

 

首に巻くのが良いのか、服で冷やすのが良いのか、愛レトの負担にならないようなものを色々と試してみてください。

 

また、火傷防止には靴を履かせることも効果的です。

 

インスタグラムではこのような便利なお知らせも! チェックすることを日課にしても良いですね。

 

犬の熱中症週間予報

https://www.instagram.com/anicom8256/

 

熱中症の疑いがあったら(なってしまったら)すべきこと

どんなに注意していてもなってしまうことはゼロではないと思います。

 

愛レトの様子がおかしい…熱中症になってしまったかも?

 

そんな時にどうしたら良いか、それを知っておくことも予防のひとつです。

愛犬の命は飼い主に託されている

 

落ち着くこと、それが第一にやることです」(安先生)

 

愛犬の様子がおかしい、緊急事態かも。

 

そう思ったら慌ててしまうのは仕方ありませんが、まずは自分が落ち着くことが大切です。

 

パニックを起こしていたら正確な情報を伝えることができませんし、適切な処置も行えません。

 

そのためには次の手順を頭の中にしっかりと入れておきましょう。

 

 

1. まずは落ち着こう!

冷静に判断することが大切です。慌てず深呼吸をして、いったん心を落ち着かせましょう。

 

 

2.応急処置を実施

・涼しい場所(外であれば日陰)に移す

 

・冷やす

体にタオルをかけ、その上から全身に水をかけてうちわであおぎます。保冷剤を持っている場合はタオルにくるんで頭・首回り・わきの下・そけい部を冷やしましょう。

 

・飲めそうなら水を飲ませる(無理には与えない)

 

・病院への連絡は簡潔に!

「緊急です。熱中症です」「犬の名前は〇〇です」「〇分後に到着します」

この3つを伝えてください。

 

 

3.動物病院へ連絡・運搬 到着したら1秒でも早く処置してもらう

この時もたくさんの状況説明は不要だそうです。

説明時間が長くなると処置の開始時間を遅らせてしまうので避けましょう。

 

熱中症は飼い主が防ぐことができる病気です

熱中症は怖い病気ですが、飼い主が正しい知識を持ち対処すれば予防できる病気です。

 

むやみに恐れず、しかし甘く見ず、愛レトの健康維持のために出来る限りのことをしていきましょう。

 

今回のセミナーではたくさんのことを教えていただきましたが、まだまだ奥が深い話とのこと。

 

飼い主である私たちももっと勉強しないとならないと思いました。

みなさんとても真剣に学ばれていました

 

私たちの意識が愛レトを熱中症から守るのです。

 

 

 

安 亮磨(やす りょうま)

獣医師/一般社団法人動物予防医療普及協会理事

写真提供:一般社団法人動物予防医療普及協会

 

一般社団法人動物予防医療普及協会とは

『飼い主様が知ることで、行動することで防ぐことができるペットの病気や怪我があります』というメッセージをさまざまな予防の情報とともに発信している、獣医師が中心となって設立された協会です。

 

協会HPアドレス

http://animal-yobo.com/
協会Facebookページアドレス
https://www.facebook.com/animal.yobo/

 

 

執筆者:Roco

『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。

撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。

フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。

子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」

 

Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター

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