『芸能人は歯が命、犬は、、、』ーマンボウやしろ#9[ゴルの魅力VSラブの引力!]
大のラブラドールレトリーバー好きとして知られる、マンボウやしろさん。そんなマンボウやしろさんに、ラブラドールの魅力と思い出を存分につづっていただく連載。
#9は、愛レト・ロンとの『ルールの無い生活』の中で、結局いつも彼が家族の中心にいたことについて、その思い出を振り返る。
縁あって、家族になったロン
1980年代後半、まだまだラブラドールレトリーバーの知名度が低かった時代、千葉の南部の片田舎の寿司屋に何故かやってきてしまったラブラドールのオスのロン。
父のハードな散歩により筋肉がつき過ぎて近所の人に土佐犬だと思われていたロン君。
家が引っ越したことによって広めの中庭を手にし、塀に囲まれたその空間を完全に手中におさめた4歳のラブラドールは元気マックス!
今回は僕が高校2年生、1992年頃の物語です。
僕は2階で寝ていて、朝起きたらダラダラと1階の居間に降りていく。
中庭にいるはずのロンがすでに室内に入っていて、母とロンがまったり過ごしていることも良くあった。
夕方に部活から帰ってくると、大体は中庭にいたが、たまに母とロンは居間でもまたまったり過ごしていた。
父の帰りはわりと遅い。ご飯だけ食べに帰ってきて、また店に戻ることもあった。
母と僕だけで夕飯を食べていて、ロンが室内にいるときはわりと無法地帯になる。
僕らが食べてるものをロンはとにかく食べたくて、クンクン鳴いたり立ったり座ったり吠えて怒られたり、とにかく落ち着きがない。
父がいれば状況は変わる。
ロンにとって母は友達で僕は眼中に無く父はご主人様なので、3人でご飯食べている時は、ロンは父を横目にわりと良い子だ。
ご飯食べてる時に室内にいるときもあれば、ご飯終わるまでは中庭で待機のこともあれば、ご飯食べ終わっても居間に家族が揃わなければロンも独りで中庭で過ごす等、家族のルールは特に決まってなかった。
今になって思えば、犬にとっては決まった生活、ルーティーンが必要だったのかもしれないけど、当時のうちの家族は今の世の流れとは違い、当時の時代の流れの中の価値観で過ごしていたので、家族が犬に合わせるので無くて、完全に犬が家族に合わせる概念だった。
表情も表現も豊かすぎるが故の、事件
様々な夜のケースがある中で、例えば僕ら3人が外食などに出かけてロンを置いて行った時のスネ方は半端ない(笑)。
これに関してはレトリーバーを飼っている方なら、いや犬を飼っている全ての人ならば知ってるはずです。犬ってきっちりスネますよね(笑)?
ワンワン吠えることもあれば、落ち込んでこちらの呼び掛けを無視することもあるし、フテ寝をしたり、急に自分のウンチかじったり、ありえないくらい甘えてきたり、エサを残したり、オモチャにやつ当たったり。
レトリーバーはとにかく表情が豊かだ。
トボけたような通常の顔もはち切れるほど愛らしいけど、スネてる顔の可愛さたるや!!
甘えてくる顔も言葉にできないくらいだし、時おり完全に「ねえ、君笑ってるよね?ねえねえ、その顔ってスマイル全開だよね?犬の顔ってそこまで笑えるの?」みたいな時ありますよね?
あれってこっちまでニヤニヤしてしまって本当に家族全員が幸せな気持ちになる。
家族で外から帰ってくる。居間でテレビなんか見てガヤガヤしている。
ロンも中庭でおとなしくしているようだし、ほったらかしてテレビに夢中になってる。
すると急に「僕も家に入れてよ!!」と、何がキッカケだったのかわからないが猛アピールが始まることがある。
夜も遅かったりすると父が「もう今から家入れてもなんだから今日は居間にはいれないにしとこうか?」と提言して僕らは従う。
部屋の中の人間の空気を察してか諦めることもあるのだが、どうしても居間に入りたい夜もあるようだ。
そういう時は居間と中庭を隔てている磨りガラスの戸をガンガンガンガン突いてくる。
ロンは脚を使うことよりも、何故か鼻を使って何かをすることが多かった。
その夜はどうしてそこまで居間に入りたかったのかわからないが、いつになっても諦めずクンクンクンクン鳴きながら、30分くらい戸を突いていた。
あまりのしつこさに父も負けて「とりあえず開けてあげな。」と。
僕が戸を開けると、そこには鼻の皮が擦りむけて顔周りが血だらけになったロンがいた。
え?そこまで?ねえ、痛くないの?家に入りたい欲求が鼻の痛さに勝てるの?ほぼ毎日入ってるじゃん!?っていうか、君達犬にとって鼻って生きていく上での生命線なんじゃないの?
サッカー選手ならば足、ドクターならば腕、歌手ならば声、芸能人は歯が命。
ねえ君にとっての鼻はそういうことじゃないの?人間の何万倍とかじゃないの?敵や味方の場所を把握するために1番活用する最重要箇所じゃないの?
アスリートみたいな散歩をし続けたせいで、諦めない心と疲れない体が仕上がってしまったのだろう?
普通の犬ならば諦めたり疲れたりするのにロンは折れずに戦い続けてしまった。悲しいモンスターである(笑)。
結果、鼻から出血するまでドアを開けようとし続けた。
ある意味では僕ら人間のせいなんだろうけど、あまりの無茶な行いに家族全員で笑ってしまった。
結局、犬は家族の中心だ
犬は突っ込まない。
犬は家族の中でほぼ100%ボケ担当で君臨している。
家族を1番笑わせてくれるのはロンであり、ロンがいるから家族が明るく過ごせる。
犬って本当に素敵だと思う。
この夜、大爆笑のあとはちゃんと多めにみんなでヨシヨシしてあげました。
マンボウやしろ
元お笑い芸人。1997年よりお笑いコンビ「カリカ」として活動し、2011年に解散。その後ピン芸人を経て2016年に芸人を引退。現在はラジオパーソナリティ、演出家、脚本家、MCなど多方面で活躍中。
Twitter:https://twitter.com/manbouyashiro
メルマガ:マンボウやしろの『死ぬまで生きます』
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