『食物矛盾連鎖』ーマンボウやしろ#11[ゴルの魅力VSラブの引力!]
ありがたい事に連載も10回を超えて11回目になりました。今から30年前に田舎にやってきたラブラドールのロンちゃんの話を毎回書いていますが、なんせ昔のことなので記憶が曖昧なことものは事実。ところが今回の物語は、記憶の奥の方に物凄く強烈に残っていること。
内容はわりと生々しいですし、後半にはサイコパスな世界観に入っていくと思いますので、心の優しい方やレトリーバー愛が強い方にはお勧めできないかもしれません。とはいえ、ここはレトリーバーライフなので、レトリーバーを愛する人しかいないと思いますが(笑)。
ラブラドールレトリーバーを愛する僕の、理想と妄想を。
1990年頃の、夜のこと

Zoran Photographer/shutterstock
僕が2階から降りていくと、店(千葉県南部の寿司屋)と繋がった居間で父が誰かと話していた。
父が苦笑いしているような空気で話してることが、思春期初期で多感の僕にはわかった。
珍しい感じだな~なんて考えて、気にしないでテレビを見ることにした。
話している相手は近くに来たばかりの東南アジアの国の男性だったのだけど、会話が聞こえてきてしまった。
「だから、日本では食べないんだよ」と父が言う。
すると相手の男性は、
「デモ、トテモオイシソウヨ。ミンナデタベテイイ?」
父は続けざまに、
「駄目! 食べないから! 諦めて、ペットだから」と答えていた。
え…ロンの話なのか?
僕は思いっきり動揺しながらテレビを見ているフリをした。

New Africa/shutterstock
小学生の頃に仲の良い友達がチャウチャウを飼っていて、大人の人から「この犬は中国の犬で、食用犬として作られた品種なのよ」と説明を受けたことがある。
その説明が合っているかどうかはいまだに知らないが、子供心ながらに犬を食べる人がいることに違和感をもった。
僕の家では物心ついた時にはすでに犬がいたし、友達の家のチャウチャウはいつも可愛がられていたし、大人の言葉と目の前の世界が結び付かずに、その記憶は大きなインパクトを残すことなく僕の中で消えていた。

Pernataya/shutterstock
しかし、僕ら家族が大好きなロンを実際に食べたいと言っている人が現れたことで、過去の記憶が合わさって、生々しいリアルとして僕の目の前に急に舞い降りてきた。
苦笑いの父の説得により、外国人の方は諦めて戻っていった。
生きること。命を食べること。
その日の夜、僕は大好きなロンを通して、生きることや動物と暮らすことや命を食べることを考えながら、布団の中で寝返りを打ち続けた。
真っ直ぐな思春期の少年として。というか、こういうことについては誰でも子供の頃に考えるものだと思っている。

Anna Phillips/shutterstock
牛だって馬だって豚だって可愛いのに食べる。
地域や時代や文化や個人差によって違いはあれど、人間は食べられるものはなんだって食べる。
考えれば考えるほどわからなくなる。
家族のような犬や猫と同じように、鶏だってクジラだって生きているのに(千葉の南部はクジラをとても食べる地域でした)。
僕らは都合によって場面場面で命の重さを変えている? 眠れずに、思考が倫理の矛盾の迷路に落ちていくような夜。
それぞれの文化に寛容的でいたいと思うから。

mariait/shutterstock
この問題に関しては、40歳を過ぎた今でも明確な答えが出ないことの方が多いので、僕は頭に浮かんだら早めに引き出しの奥にしまい込むようにしている。
これからも命を食べ続けるだろうし、犬は絶対に可愛がるし、1万年前から変わっちゃいないと言えば変わっちゃいないのだろうし。
なんでこんな誰もが一度は考えるようなことで、しかもデリケートな話題をわざわざ書いているのか?
ひとつは、ロンとの数ある思い出の中でも、自分の家のラブラドールが美味しそう! と言われたことが衝撃的だったこと。
そしてもうひとつは、お互いの文化に対して寛容的でいたいと僕自身が近頃強く思うから。

Toey Toey/shutterstock
単純に犬が好きな人もいるし、苦手な人もいるし、どちらが正解でもないし、理解し合うというよりは、認め合う方が大事な気がするし、犬を通して学べることは多いと思う。
皆さんの方が僕よりもご存知だと承知してますが、犬に限らず生き物を飼うことって多くの学びがあるし、大きな責任が伴うことなんですね。
妄想、そして理想。

Bianca Grueneberg/shutterstock
話変わりますが、僕は独身だ。
何度も書いているが、結婚することが出来たらラブラドールを飼おうと思っている。
だけど、結婚してラブラドール飼って離婚したら? そんな事をものすごく真剣に先日の夜に考えていたんです。
暇なのかな、僕は(笑)。

Heather Skau/shutterstock
※この辺からサイコな妄想に入っていきますので真面目に読まないでください(笑)。
夜に布団の中で動悸などが起きると『孤独死』が頭をよぎりますし仮に2日間仕事がなければ2日間誰も気がつかないはず。
奥さんに逃げられた年老いた僕に飼われてるラブラドールは可哀想だ。
自分の死期を感じたら信頼できる誰かにラブラドールを託したいけれど、そんな人がいなかったら、ラブの意見も聞いてだけど、僕は静かに山の奥の奥に潜ってラブラドールと2人で生きよう。

Gchapel/shutterstock
誰にも迷惑かけない場所で、ラブに餌を取る術を教えながら僕は最後の時を待とう。
人里よりも僕との孤独を選んでくれたラブを最後の夜は抱きしめよう。
先に死んでごめんねと謝ろう。愛をありがとうと感謝を伝えよう。
君が先に冷たくなったら、僕は君のお墓を掘ろう。
でも、やはり呼吸を止めるのは僕の方が先みたいだ。
数日経って、君があまりにも空腹の時は、どうか僕を君の血や肉にしてくれないか?
死して尚、君の中で生き続けたい! 僕はそんな傲慢なことは思わないんだ。
僕は、心の底から大好きな君の、命のたしに微塵でもなれたら本望なんだ。
僕は君を食べることはできないけど、どうかいざという時には僕を食べてくれ。
矛盾したことを願ってごめんね。
……僕はどこにどんな文章を書いているんだ? お恥ずかしい(涙)。
マンボウやしろ
元お笑い芸人。1997年よりお笑いコンビ「カリカ」として活動し、2011年に解散。その後ピン芸人を経て2016年に芸人を引退。現在はラジオパーソナリティ、演出家、脚本家、MCなど多方面で活躍中。
Twitter:https://twitter.com/manbouyashiro
メルマガ:マンボウやしろの『死ぬまで生きます』
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