【連載】『炎症』と付き合うということ。「kitchen Dog!」南村友紀のハッピークッキング#14
「Kitchen Dog(キッチンドッグ)」代表の南村友紀さんは、ゴールデンレトリーバーと暮らす生粋のレトラバー。Kitchen Dogは、犬の消化・吸収・代謝を考えて、安心安全な犬のゴハンを真面目に製造・販売する犬用食品ブランド。 さらに美味しさも追求しているため、多くの愛犬家に親しまれています。 レトと暮らし、さらに犬ゴハンのプロともいえる南村友紀さんの連載、第14回目!
犬の身体システムは、肉食動物のものです。
犬の歯の構造は、獲物を掴み、肉をひきちぎり、強い顎の筋肉と奥歯で飲み込める程度に潰すようにできています。
胃は酸性度がとても高くなっていますが、この酸性のpHが消化のプロセスを開始し、胃に入ってくる病原体を排除します。
腸は比較的短いので、健康な犬は数時間で食物を消化します。
犬も猫も、穀物や野菜などの植物性のものを消化するようにはできていません。
馬や牛などの草食動物は、植物性の食べ物を柔らかくする大きな臼歯があり、消化管の一部が発酵に利用され、そこに存在する細菌のおかげで植物性食物の消化ができます。
犬や猫は、このシステムをもっていないのです。
彼らが麦や米や芋や豆などの植物性の食べものベースのフードを食べ続けると何が起こるかというと、『炎症』です。
Dr.Judy Jasekは言っています。
調理された穀物や豆類、イモ類、その他の野菜に含まれるデンプンは、血糖値を上げ、その後インシュリンレベルを上げます。
インシュリンは、高血糖などの栄養過剰に対処するために放出されるホルモンです。
血中のグルコースを取り込ませることによって血糖値を下げる重要な役割を持っています。
過剰なグルコース(ブドウ糖)をグリコーゲンとして貯蔵し、後に利用するために肝臓や筋肉組織に運びます。
しかし、グリコーゲンの貯蔵には限界があるので、満杯になるとそれらは脂肪として身体につくことになります。
グルコースの消費が続くと、血中の細胞が絶えず上昇したレベルまで脱感作されるため、インシュリン抵抗性(インシュリンが効きにくく、高血糖が続く状態のこと)につながります。
血糖値は上昇したままの状態になり、組織を損傷する原因になり、そこから慢性的な炎症が起こります。
これは、身体にとっては炭水化物の代謝の影響だけでなく、身体に有毒になる深刻なリスクでもあります。
また、安価な穀物は、グリフォサートというラウンドアップの主な原料である農薬を生育時に吹きかけられているばかりか、早く乾燥させるためにさらに収穫後にも散布されます。
さらに安価な小麦、コーン、大豆などは遺伝子組み換え作物がほとんどで、それらは腸内細菌叢に壊滅的な影響を与える原因となります。
成長過程でグリフォサートを散布されると、豆はその中にグリフォサートを蓄積し、食べる者はそれごと食べることになります。
これでは、グレインフリー(穀物の代わりに豆類や芋類をデンプンとして使用している)のドッグフードも安全ではないですね!
Bioavailable(バイオアベイラブル)とは
これらのリスクを回避するには、やはり新鮮な生のままの食品が良いと思います。
精製も加工もされていない、または、最低限の加工しかしていないもの。
そういう食品は、本来の意味での栄養を摂ることができます。
新鮮な自然食品からの栄養は、適切に身体に認識され、同化することができます。
つまり、Bioavailable=生物学的に利用可能だということです。
自然食品の栄養素は、複数の違うもの同士が身体に相乗的に働きますが、化学的に作られた単体のものは同じようには働かないのです。
手作り食は、個体差に合わせることができて、犬には適切な食事です。
ドライフードよりもお金がかかりますが、後々病気になってお医者さんに払う金額のことを考えれば、安いものです。
身体に合わない食事を食べ続けることによって病気になったとしたら、お金だけではなく、精神的にも辛いですものね。
良い『炎症』、悪い『炎症』
炎症は、犬の健康的な免疫力の印でもあります。
怪我をしたときや感染したとき、毒素に晒されたときの最初の反応が、炎症です。
身体は、炎症を起こすことにより菌やウイルスを殺し、傷を治し、傷付いた組織に残された残骸(死んだ細胞など)や毒素を掃除するように働いています。
健康的な炎症反応は、血管の収縮によって患部への血流をコントロールし、血流からの液体と免疫細胞が救急車が駆けつけるように患部に移動します。
それらはほとんどが病原菌などを退治する白血球で、患部を治癒させます。
様々な種類の白血球が細菌やウイルスを飲み込み、抗体の産生を引き起こし、治癒プロセスを助ける化学物質をすべて放出し、さらに白血球の応援部隊を呼び出して助け、毒素や組織の損傷と死によってできた不要なゴミを飲み込んでいきます。
この時、患部には熱が発生し、赤く腫れ、痛みを感じます。
私たちが傷を見て、「炎症が起こっているね」とわかるあの感じです。
その後、腫れや痛みは徐々に落ち着き、身体は傷んだ箇所を修復するために線維芽細胞という細胞を患部に送り込み、最終的には結合組織が集結し、瘢痕が形成されます。
白血球が触手を伸ばして細菌やウイルスを捕まえ、飲み込んでいく様子は、さながら宇宙戦争のようです。
私はこの様子を捉えた写真を見るのが大好きなのですが、これなんかもう、タコの怪物のようにしか見えませんよね!
健康ならば、目に見えない私たちの身体の中で、このように免疫が知らないうちに働いてくれているのですから驚きです。
感染症の場合は、細菌またはウイルスが最初に体内に入った組織(口、目、鼻などの粘膜組織や怪我部分)で最初に反応します。
しかし、ウイルスや細菌が全身に行き渡り、全身症状が現れ、炎症が慢性になると、病気という状態になります。
ところが、やがて炎症が慢性的に起こるとなると、問題です。
あらゆる免疫不全の病気は慢性炎症から始まります。
慢性炎症になる過程
アメリカのホリスティック獣医師であるDr.Edward Bassingthwaighte が言うには、関節炎などのように、体のある一部分に長期的にちょっとした炎症が続いている場合に、健康的な炎症反応から、慢性炎症にスイッチが切り替わります。
慢性炎症は全身性になりやすく、多くの箇所に影響します。免疫反応は混乱し、そうすべきではないときに反応し始めます。
休むべきときに免疫系が作動しているわけなので、それは身体を攻撃し始めます。
犬の健康問題の原因として近年増加している自己免疫疾患は、慢性炎症の典型的な例です。
組織の損傷、痛み、発赤、腫れ、かゆみ、臓器の機能障害または損傷、あるいはさまざまな症状や病気が見られることがあります。
炎症性腸疾患(IBD)、糖尿病、がん、腎不全、関節炎、心臓病、自己免疫疾患、アレルギー、膵炎などは、慢性炎症の結果なのだそうです。
慢性炎症を引き起こす可能性のあるきっかけは、以下のようなこと。
・病気による感染
・ワクチン
身体は普通、注射針ではなく、口か鼻か目から侵入した1種類の病気に適応するようにできているのに、ワクチンは、体内に複数の病原菌を不自然な形で注射で入れるため。また、水銀などを含むものもあるのです。
・ノミやダニよけなどの害虫予防薬
・医薬品
抗生物質などの処方薬は腸内細菌叢を壊し、慢性炎症を起こす毒となることがあります。
・加工食品による食生活
加工食品も、農薬のついた原材料も、とても炎症を起こしやすいです。タンパク質が高温で加工されるのも良くないですが、さらに犬が生物学的に必要としない炭水化物がたくさん含まれているとなおさらです。
・環境汚染
殺虫剤、農薬、石油化学製品、人工香料。正常な免疫システムの機能をこわします。
・電磁波
携帯電話、ネットワークタワー、wi-fiルーターなども含みます。
・屋内にいてばかりで日光に直接当たる機会が極端に少ない
・ストレスと心配事
留守番やペットホテルなども。
慢性炎症を、自然なやり方で治すには?
食事
慢性炎症を治す最初の一歩は、健康的な食事です。科学的な農薬が散布されていないものなら、なお良し。
たくさんの抗酸化物質が含まれている新鮮な生の自然食を食べさせてあげてください。
それでも、レクチンは植物に自然に備わっていますから、収穫する時期や調理方法により取り除いたほうが良いのです。
じゃがいも、トマト、ナス、ピーマンのような茄子科の野菜は炎症性なので避け、炭水化物はなしにするか最小限にして、カボチャやサツマイモのようなデンプンを多く含む野菜を少量使うのが理想的。
ブルーベリーやその他のベリー類、冷水で一晩抽出した緑茶(冷水で出すとカフェインが抽出されないため)、葉物野菜などの抗酸化食物を加えることはとても良いです。
腸の健康
腸を健康的に保つことはとても大切です。健康的な食事は第一歩として重要ですが、プレバイオティクスとプロバイオティクスは腸内に炎症を持つ犬にとても有益です。
一週間に一度くらい、絶食させるのはとても健康的です。
サプリメント
良質な必須脂肪酸、ビタミンC、E 、Aは、慢性炎症を和らげます。
自然な原料のビタミン剤を使うことが一番。化学合成品は身体にうまく吸収されずに長期的に害になるので避けましょう。
その他
健康的な食事とサプリだけでは立ち行かないような免疫システムが著しく不全になっている場合、糞便移植やCBD を試す方法もあります。
PEA パルミトリルエタノールアミド と CBD
抗炎症性の自然な抽出物です。CBDと一緒に与えると相乗効果により副作用もなく効果がみられるのだそうです。
もちろん、獣医さんとご相談になってくださいね。
どのようなケースでも、慢性炎症の場合には、ホリスティックな獣医師に診てもらうことをお勧めします。
慢性炎症には、ハーブやホメオパシーのような選択肢もあるし、鍼灸や指圧なども効果があるということですから。
wi-fiだらけの都会ばかりではなく、海や山などの自然に触れ、靴などはかせず、洋服も着せず、地面にダイレクトに体全体を触れさせ、身体に滞留した静電気をアースさせてあげてください。
犬という生き物はダイレクトに飼い主のストレスに影響されるので、飼い主さんもハッピーに生きてください!
飼い主さんが笑っていると、犬は嬉しいのです、健気ですよね。
どんな場所で生活していても、犬は少しずつ種々の毒に触れる機会があるので、たっぷりの抗酸化物質を使った健康的な食事は必須です。
南村友紀 プロフィール
2001年に犬のためのビスケット&デリカテッセンショップ「キッチンドッグ!」をオープン。手作りごはんに悩む飼い主さんたちを正しい知識でサポートしながら、「愛と幸福とおいしいゴハンを!」をモットーに活動している。
お料理教室も大人気!
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