【取材】パートナーはゴールデン。“犬と暮らすイラストレーター”セツサチアキさんのイラストには愛レトへの愛が詰まっている
今年12歳になる英国ゴールデンレトリーバーのさっちゃんと都内で暮らしているイラストレーターのセツサチアキさんは、皆さんもきっとどこかで目にしたことがある「もうどう犬エルくん」の生みの親。可愛くHappyなだけではなく私たちの心に静かに寄り添ってくれるかのようなイラストはどのように生み出されているのでしょうか。
目次
犬との暮らしに憧れ続けていた子供の頃
肩書きに「犬と暮らすイラストレーター 」とあるほど、犬との暮らしが当たり前になっているセツサチアキさん。
でも子供の頃、それは憧れに過ぎませんでした。
「とにかく動物が好きでした。そんな私のことを説明する例として良くお話しするのですが、学級委員というものになったのは後にも先にも小学生の時の『飼育係委員長』だけ。でも超がつくほどの転勤族だったので家で動物を飼うことはできませんでした」(セツサチアキさん)
飼育係委員長に任命されたということは自他ともに認める動物好きだったということ。
それほど好きなのに家では飼えないというのは、事情がわかっていても寂しかったと思います。
そのような時代を過ぎ、大人になって念願の犬との暮らしを実現したセツサチアキさん。
最初のパートナードッグは英国ゴールデンレトリーバーのせっちゃんでした。
セツサチアキさん的「犬との暮らしの理想」を実現してくれたせっちゃん
セツサチアキさんの犬との暮らし方の理想は、犬が自分に合わせてくれること。
「住んでいるのが都会なので、そこで暮らしていくために問題がないことは重要です。街中の普通のカフェでも静かに待っていられれば一緒に行ける場所も広がります。ボールよりも散歩よりも飼い主が好きという関係がいいですね。こちらが犬に合わせるのではなく、犬が私に合わせてくれるのが理想です」(セツサチアキさん)
どのような暮らしが理想かはオーナーのライフスタイルや性格によって異なります。
セツサチアキさんは刺激より平穏さを求めるタイプ。
強引な服従でもなく自然に静かに一緒にいられる。
せっちゃんはその理想を見事に実現してくれました。
「初めての犬との暮らしでしたが困るようなことは特になく、とても楽でした。自分が行きたいところに一緒についてきてくれる、引っ張られて散歩するのではなく共に歩く感じがとても素晴らしいと思いました。こんなに意思疎通ができるものなんだという嬉しい驚きもありました」(セツサチアキさん)
せっちゃんのいない四季をひとりで受け止める
共に暮らす喜び、幸せに満ちた日々。
しかしその暮らしにやがて終わりが訪れることになります。
その時セツサチアキさんが決めたことはこのようなことでした。
「1年間はせっちゃんがいない春夏秋冬をしっかり体感しようと思いました。せっちゃんがいた時はどうだったか、ということをひとりでなぞっていきたかったのです」(セツサチアキさん)
いないという事実と真正面から向き合う。
精神的にとても辛く厳しい方法のように思えますが、セツサチアキさんが選んだのはこのような方法でした。
「夏なら、この暑い時にゆっくりこの辺りを散歩したなぁ、とか秋なら食いしん坊だったからこの焼き芋の匂いが好きだったなぁとか、1年かけてせっちゃんとの時間を感じようと思いました。一緒に行った旅先にも訪れました」(セツサチアキさん)
一緒にいた時間、たくさんの思い出、いつか薄れて行ってしまう記憶を1年という時間をかけて定着させていく。
スパッと途切れてしまうような終わり方ではなく、余韻を持たせることで悲しみと折り合いをつける、そんな方法もあるのだと教えていただいたように思います。
それでも悲しみとはいつも隣り合わせ。
「今いないんだ、と泣いて泣いて…の1年でもありました」(セツサチアキさん)
現在のパートナー、さっちゃんとの暮らし
せっちゃんが旅立ってから1年が過ぎた頃、同じブリーダーさんのところからさっちゃんを迎えました。
せっちゃん同様、さっちゃんとも理想の暮らしを実現しているとのこと。基本的にどこにでも一緒に行き、打ち合わせにも同伴します。
「さっちゃんとの時間は私の中では生きていく上での一番の大きな支えです。どんなことがあってもこの子との時間がなくなってしまうことに比べたらなんてことない、と思えます」(セツサチアキさん)
イラストレーターとして独立する前は会社員をしながら副業で犬の絵を描いていたセツサチアキさん。
でもさっちゃんはセツサチアキさんさえいれば他には何も望まないというタイプで、留守番が何より苦手。
なので、いつも一緒にいられる今の生活はさっちゃんにとっても理想の暮らしです。
「すやすやと気持ちよさそうに眠っている姿を見ると、その幸せを守るために頑張ろうと思うのです。さっちゃんは留守番が苦手だからお勤めに出たらストレスになってしまうし、そうならないためにこの仕事で頑張らなくちゃ!(笑)」(セツサチアキさん)
全ては繋がっている。お守り絵本と動画「犬と小さな芽」
セツサチアキさんは絵本も手がけています。
完全オーダーの「お守り絵本」は旅立ってしまったペットとの思い出を絵と文章で絵本に仕立てるもの。
絵本という形で亡くしてしまった愛犬の姿や思い出を残すことはグリーフケアとしても大きな役割を担っているようです。
「あのようなものが描けるようになったのはせっちゃんとの時間があったからです。お客様からたくさんのエピソードをいただくのですが、楽しいだけではなく悲しい思い、辛い思いも理解できます。
せっちゃんが亡くなった翌日、冷蔵庫の中に手作りごはん用のお肉がまだたくさん残っていたその時の想いとか、そういう体験があるからお客様の気持ちがわかってそれが絵本へと繋がっています」(セツサチアキさん)
実はせっちゃんには闘病している期間がありました。
看取った経験だけでなくその時の経験もセツサチアキさんの絵に大きな影響を与えているそうです。
「余命宣告のようなものを受けましたが、私はせっちゃんの生きるという力を信じて、絶対大丈夫と信じて一緒に過ごしました。せっちゃんを介護した時間は本当に涙もいっぱい出るけれど関係が濃くなっていく、おもちゃで遊んでいる姿や若い頃には感じなかったささやかなことに幸せを感じる、貴重なものでした」(セツサチアキさん)
物語が作れるようになったのはその経験が強く影響しているのだそうです。
そして今年4月、不安な毎日に光を刺すようにアップされた「犬と小さな芽」はたくさんの人の気持ちを優しくしてくれました。
せっちゃんとの時間は全て「体験する」ための時間。
セツサチアキさんはせっちゃんの残してくれたものをみんなにシェアしてくれているのだと思います。
お守り絵本
犬と小さな芽
夢が広がる「これからしたいこと」
一人の愛レト家としてさっちゃんとしたいこと、イラストレーター としてしたいこと、それぞれお聞きしました。
・さっちゃんと北海道に行きたい
「大自然の中をのんびり散歩したりドライブしたりしたいですね。レトリーバーと北海道って絵になると思いませんか? フェリーに乗って行きたいので、そこで朝日を眺めたい! なんて妄想が膨らんでます。ちょっとお金はかかるけど、そのために働いているようなところもありますしね。犬との時間はプライスレスです」
・絵本を出したい
「イメージはもうあるんです。大人のため少し悲しかったり寂しかったりしたときにサッと広げて読んでもらえるようなもの、お友達にもプレゼントしたいと思ってもらえるようなもの、そんな犬の絵本を出したいと思っています。そのためにまずはYouTubeでと思ってアップしたという経緯があります」
・イベントをやりたい
「去年横浜で初めてブロガーのマーティン・ゆうさんと二人でイベントを主宰したのですが、1日で300人もの人が来てくださいました。それまでは直接お客様とお話する事がなかったので、本当に楽しくて。亡くなった子と今いる子と一緒の絵を描かせていただいたら飼い主さんが涙を流してくださる事があって、そのような経験も仕事のモチベーションになっています。イベントは難しい時なのでいつかまたできたらいいなという感じですが」
セツサチアキさんの描く犬たちはどれもキュート。
でもレトリーバーの絵は特に可愛いと思ってしまうのは皆様も同じはず。
今後増えていくであろう動画や新商品も楽しみです!
<セツサチアキ>
犬と暮らすイラストレーター セツサチアキ
盲導犬チャリティーグッズ全般のデザイン・イラスト、盲導犬のキャラクター「もうどう犬 エルくん」など手がけている。また亡くなったペットの思い出をオリジナル絵本にする「お守り絵本」の絵本コラボレーターとしても高い評価を得ている。近年はペット雑誌、ペットWEB等でも活躍。現在、英国ゴールデン・レトリバーのさっちゃんと暮らしている。東京在住。
HP:https://www.setsusachiaki.com/
Instagram :@setsusachiaki
Twitter:@setsusachiaki
<愛ゴルのプロフィール>
せっちゃん:1995年生まれ 2008年虹の橋へ
性格:とても穏やかな性格。ご近所からは「面倒見のいいせっちゃん」と言われるほど、どんな犬とも仲良くなる子。
さっちゃん:2008年生まれ
性格:一言で言うなら「天真爛漫」。ちょっとした事でビックリしたり、はしゃいだり、いつまでもパピーのような性格。
執筆者:Roco
『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。
撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。
フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。
子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」
Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター
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