2021年2月20日1,436 ビュー View

【取材】司法の場で子どもを支える“付添犬”は14歳、元セラピードッグのゴル―田野裕子[ゴルの魅力VSラブの引力]

取材時の2020年12月、裁判所などの司法の場で“付添犬”として活躍するゴールデンのフランちゃんは、これまで介護施設や病院や教育の場でセラピードッグとしての経験を重ねてきました。そんなフランちゃんのハンドラーである田野裕子さんに、フランちゃんとの出会いから現在までの14年あまりのヒストリーをうかがいます。

セラピードッグに最適なゴールデンとの出会い

2020年12月時点で、14歳のゴールデンフランちゃんと、推定12歳のダルメシアン・エリーちゃんと暮らす田野裕子さんは、司法の場で子どもの精神面をサポートする“付添犬”のハンドラー。

 

「ドッグトレーニングを学び始めて、当時3歳だった小梅と一緒に、老人ホームや介護施設などを訪問するボランティア活動に参加したいと思うようになりました。

 

そこで、当時しつけ教室のアシスタントをしていた動物病院の獣医師の先生に相談すると、『小梅ちゃんの性格では、少しむずかしいかもしれません。穏やかで友好的なゴールデンレトリーバーがおすすめです』と言われたんです」

ドッグランで遊ぶフランちゃんと元保護犬のエリーちゃん

 

田野さんは、すぐにゴールデンを迎えることを決意。

 

動物病院の獣医師がセラピードッグに適したゴールデンを探してくれたおかげで、トントン拍子に迎える準備が整いました。

 

「生後2ヵ月で我が家にやってきたフランは、それはもう、かわいくてかわいくて! 憧れていたゴールデンが目の前にいる喜びも噛みしめる日々でした。

 

セラピードッグに育てたいと願って迎えたこともあり、子犬期の社会化には力を入れましたね」と、田野さんは当時を振り返ります。

フランちゃんの若犬時代

 

ところが、順調に思えたのは最初だけ。

 

その後田野さんとフランちゃんは、一筋縄では行かない状況に追い込まれることになりました。

 

重要なテストでの不合格が続く

田野さんは、アニマルセラピーの活動を幅広く行っているJAHA(公益社団法人 日本動物病院協会)主催の“家庭犬しつけインストラクター養成講座”犬連れトレーニングキャンプに参加することを目指していました。

 

ただし、14年前当時は犬連れキャンプの参加資格として、“優良家庭犬協会のグッドシチズンテスト※”に合格していることが条件でもありました。

 

※一般社団法人優良家庭犬普及協会が実施する、家庭犬とその飼い主を対象とした認定試験。アメリカンケネルクラブで行われている“Canine Good Citizen Test”を参考とし、優良家庭犬普及協会理事・全米家庭犬しつけインストラクター協会元会長テリー・ライアン氏らにより、日本の生活習慣等に適合させて作り上げられたもの

田野さんのトレーニング風景

 

「トレーニングの専門学校を出たわけでもなく知識も技能も足りない主婦の私だったからこそ、フランとならばすぐにグッドシチズンテストに合格すると思い込んでいたんですよね(笑)。

 

そうしたら、11回も試験に落ちました。

 

1歳前からスタートして、12回目の試験に合格するまでに費やしたのは約2年。自宅のある横浜市から行ける範囲で、試験が開催されるたびに駆け付けました。

 

けれども、落ちまくったおかげで、多くを学べて結果的には良かったと思っています」と、田野さんは振り返ります。

 

グッドシチズンテストに合格後は、念願だったJAHAの犬連れキャンプにも参加し、田野さんはさらに大きな学びを得ました。

田野さん曰く“おっとり&おとぼけキャラ”のフランちゃん

 

フランちゃんは天性のセラピードッグ向きの気質を備えていますが、やはりレトリーバーらしさも日常生活でのぞかせると言います。

 

「散歩に行くと、少し深めの水たまりに入ってしまい、ドロドロになるまで遊んでいます。

 

もちろん、水を見ると目の色が変わるくらい泳ぐのが大好きです。

 

でも、川は水流が速いと面食らうようで、流れをじーっと見つめ続けているのがおもしろいですね」

 

セラピードッグとしての活動がスタート

グッドシチズンテストに合格する前から、JAHAでボランティアのアニマルセラピー活動を行っていた田野さんですが、常にさらなる進歩を目指していました。

 

「フランと一緒に、小学生が登下校する時間帯に歩道に立って“子ども慣れ”を行ったりもしましたね。

 

けれども、フランはもともと誰でも大丈夫で、苦手な人はいません。お子さんも大好きだから、撫でられるとうれしそうに目を細めていました」

CAPP活動でのワンシーン

 

こうしてフランちゃんは、JAHAのCAPP活動(人と動物のふれあい活動)に参加して、動物介在教育(AAE=アニマル・アシステッド・エデュケーション)の場で子どもたちと触れ合ったり。

 

時に、動物介在活動(AAA=アニマル・アシステッド・アクティビティ)の場で介護施設や老人ホームなどの入所者さんの笑顔を誘ったり。

 

さらには、動物介在療法(AAT=アニマル・アシステッド・セラピー)を行うために、病院の患者さんをサポートしたりするようになりました。

 

「愛犬と一緒に活動ができ、フランと触れ合った皆さんの表情がほころぶのを見られるのがうれしいですね」と、田野さんは微笑みます。

 

司法の場で子どもを支える“付添犬”に

「フランは、これを行うために我が家にやって来たに違いない! と思える活動を、4年ほど前からスタートしました」と、田野さん。

 

それは、裁判や事情聴取といった司法の場で、刑事事件の被害を受けた子どもが安心して他者に話せるようにサポートをする“付添犬”の活動です。

 

付添犬は、“NPO法人 神奈川子ども支援センター つなっぐ”が行う取り組みのひとつ。

 

現在はJAHA所属のフランちゃんと、社会福祉法人 日本介助犬協会に所属する数頭の犬が、付添犬認証委員会(前コートハウスドッグ準備委員会)から“付添犬”の認証を受けて子どもの精神的なサポートを行っています。

 

「付添犬になるための特別なトレーニングはしていません。

 

JAHAの“CAPP認定パートナーズ”として、これまでのアニマルセラピー活動で培った長年の経験が活かされ、役立っていると言えます」(田野さん)

どこでもいつでも穏やかな寝息を立てて人の心を癒します

 

以前、付添犬としてそばに寄り添った際、お子さんから「本気で寝ているフランちゃんの姿を見てほっとしました」と言われたそうです。

 

「フランは、グーグーといびきをかいて寝ていたんですよ。

付添犬の活動でも、またこれまでのセラピードッグとしての活動でも感じてきたことですが、犬には人間にはない不思議な癒しの力がありますね」と、田野さんはフランちゃんを撫でながら語ります。

 

幅広い活動をとおして、多くの人を癒してきたフランちゃんも、2020年末現在14歳。

 

「フランはあと何回位、様々な活動に参加できるかなぁ……と、考えずにはいられません。

 

セラピードッグや付添犬としてフランのあとを継いでいってくれる犬、そしてハンドラーを育てたい。それが、今の私の強い願いです」

 

そう話す田野さんは、2018年には横浜市で“犬のなかよし幼稚園”の運営も始めました。

犬のなかよし幼稚園にて。トレーニングを行う田野さん

 

そこでは、JAHAで学んだ陽性強化のトレーニング手法で、犬のやる気を引き出しながら楽しくトレーニングを行っています。

 

もちろん、田野さんの傍らにフランちゃんも寄り添いながら。

 

 

執筆者:臼井京音

ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。

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