【取材】ゴル2頭の次は最強の活発娘ラブラドゥードル!―田辺三由紀「ゴルの魅力VSラブの引力」
かつては2頭のゴールデンレトリーバー、現在はラブラドゥードルと暮らしている田辺三由紀さん。2代目ゴルの育犬に悩んだエピソードや、そのゴルと訓練競技会に出場した思い出、“最後の犬”として選んだラブラドゥードルとの生活などを紹介します。
“まるで人”だった理想どおりのゴールデンとの出会い
「実家に4歳までいて、私と一緒に嫁いだゴールデンのケネディは、ひと言で表現すると“人間”でした。
賢くて単語をたくさん覚えるとか、そういうレベルじゃないんです。家族として普通に会話ができる感じ(笑)。
“同志”と呼ぶにふさわしいような、まさに私が理想としていた犬でした」
田辺三由紀さんは、最初の愛犬のことをそう振り返ります。ケネディくんは、体重が46kgあったとか。
「昔のゴールデンって、大きいコが多かった気がします。ケネディがビッグサイズだったことも、目線も私に近いところにあるし、人のような存在感の大きさを感じさせたのかもしれませんね」
ケネディくんと心を通わせながらの日々は、田辺さんの予想ほど長くは続きませんでした。
ケネディくんがガンを発症し、8歳の若さで旅立ってしまったのです。
「心にぽっかり穴が開いたようになり、ケネディの面影を追い求めていました。
そして、血統書をもとにケネディと血縁関係のあるゴールデンをついに見つけ、家族に迎え入れたんです。
ブリーダーさん曰く、ケネディと血のつながりのある最後の1頭じゃないかと」
こうして、2代目ゴールデンバルトくんと田辺さんとの新しい生活がスタートしました。
育犬ノイローゼになり2代目ゴルの飼育放棄を決意!?
田辺さんは子犬を迎えてからほどなくして、温厚で落ち着いた性格だったケネディくんと違う、やんちゃなバルトくんに戸惑い始めました。
「『かわいい~、大好き!』って、どうしても思えなかったんですよね。
毎日『なんで、バルトはこうなの?』『ケネディは私に歯をあてたことないのに』と、ケネディと比べてばかり。
そうこうしているうちに、“育犬ノイローゼ”に近い状態に陥ってしまって……」
ついに田辺さんは、旦那さまに「お金を払ってでもいいから、バルトをブリーダーさんに返すか、保護団体に引き取ってもらい新しい家族に譲りたい」と告げるまでになってしまいました。
「でも、夫にも指摘されて、あまりにもケネディの姿をバルトに重ねて見すぎていた自分自身に気付いたんです。なんてかわいそうなことをバルトにしてしまったんだろうと、反省しました」
こうして田辺さんはバルトくんと、ケネディくんとは違う新しい関係性を築こうと心に決めたのです。
そこで田辺さんは、ドッグトレーニングの勉強をスタートしました。
エネルギッシュで活動的なレトリーバーの作業意欲を満たすために、トレーニングを積極的に取り入れる生活は役立つと言われています。
「ドッグトレーニングを学んでいくうちに、最初は『このコは手に負えない』と感じていたバルトの良さが、どんどん見えてきました」
バルトくんの訓練性能の高さを引き出すこともでき、田辺さんはJKC(ジャパンケネルクラブ)が主催する家庭犬訓練試験にも挑戦。
バルトくんと田辺さんのペアは満点を獲り、CD1(家庭犬初等科※初級レベル)に一発で合格しました。
田辺さんは現在、犬のしつけ方教室の講師としても活躍しています。
「バルトと出会っていなかったら、今の私はいません。トレーニングを始めると、どんどん応えてくれたバルト。そのおかげでドッグトレーニングの世界に入れたことに、本当に感謝しています」
憧れのクランバー・スパニエルとの多頭飼育
バルトくんとの生活が落ち着いてきた頃、田辺さんは、クランバー・スパニエルのうららちゃんを迎えました。
「憧れの多頭飼育の実現です(笑)。とにかく私は、大型犬が大好きなんです。
本当はセント・バーナードと暮らす夢があったんですが、さすがに大きすぎて大変かなぁ、と。
そこで、顔がセント・バーナードにそっくりで、体重が30kg台と小柄なクランバー・スパニエルを家族の一員として選びました」
うららちゃんとも、田辺さんはJKCの家庭犬訓練試験にチャレンジしました。
「やっぱり、レトリーバー系とは違う役割を担うスパニエル系ですからね。バルトよりも、訓練性能は少々劣っていた部分は否めません。
それでも、うららなりの実力を発揮してくれて、ギリギリの点数でCD1に合格できました。うれしかったですね~!」
バルトくんは、うららちゃんとの毎日をマイペースに過ごしていたとか。
「うららが、私にべったりの甘えっ子だったんですよ。バルトは、私たちから少し離れた場所でくつろいでいることも少なくありませんでした」
ところが、バルトくんが11歳でガンを発症して動物病院に通うようになると、田辺さんに甘えるように。
「『今はママをひとり占めできるね、抱っこしてよー』と。私も『ねぇバルト、もしかして今まで少し遠慮していたの? 本当はうららと同じくらい甘えん坊なの?』と話しかけながら。
なるべくスキンシップを取るように心がけました」
自分でも意外だったラブラドゥードルを迎えて
バルトくんに次いで、2016年に14歳でうららちゃんが旅立ってから田辺さんが陥ったのは、激しいペットロスでした。
「見るに見かねた夫が、たまたまオーストラリアン・ラブラドゥードル(AL)の犬舎のホームぺージで、うららと同じ毛色の配色の子犬を見つけたんです。それが、2021年現在3歳の愛犬、カオです」
カオちゃんは、天真爛漫なところがチャームポイントだそう。
ラブラドゥードルには、ゴールデンレトリーバーと比べると活動的で、テンションも少し高めだと言われるラブラドールレトリーバーの血が入っているからかもしれません。
「実は、いくらクランバーと同じ毛色だとはいえ、私たち夫婦がラブラドゥードルを飼うことになるとは思ってもいなかったんですよ。
ただ、ケネディとバルトとうららの介護は、体重が重いので大変でした。
だから、飼い主が40代を過ぎて迎えるにあたり、ラクに抱っこができて介護もしやすい10kg台の犬種にしておきたいとは考えていましたね。
その点、体重15kgのカオは本当に扱いやすい。しょっちゅう抱っこもしています(笑)」
また、プードルの血が入っているだけあり、抜け毛がほとんどないのも助かると言います。
「『レトリーバーが好き。でも、飼い主の体力が衰えた時は大変かな』と悩んでいる私のような方には、ラブラドゥードルやゴールデンドゥードルは、一緒に暮らしやすくておすすめですね」と、微笑む田辺さん。
カオちゃんとも訓練試験に挑戦するのかと尋ねたところ、その予定はないと語ります。
「日常生活や発災時に必要だと思われるトレーニングは、ひと通り行いました。でも、あとはもうカオちゃんらしく、明るく元気に自然体で過ごして欲しんですよ。
私たち夫婦にとって最後の犬だと思って迎えたので、ストレスなく長生きして欲しい。それだけです」
そう言いながら田辺さんが投げたボールを、カオちゃんはジャンプしながらキャッチして、田辺さんのもとに届けていました。
さすが、レトリーバーの血が入っているだけあって、カオちゃんの“回収能力”は天賦のもの。
笑顔の絶えない田辺さんと一緒に楽しい毎日を重ねていけば、きっとカオちゃんは幸せに長生きしてくれるに違いありません。
*田辺さんが講師を務める“愛犬同伴型しつけ教室”の問い合わせはこちら
【NPO法人PAL(パル)】
https://pal-doglesson.jimdofree.com/
執筆者:臼井京音
ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。
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