【取材】おおらかな家族に愛されて16才7ヶ月に。病気知らずの秘訣はノンストレスライフ #4ミッシェル
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。
今回お話を伺ったのは16歳(取材時)の黒ラブ、ミッシェルちゃん。生後4ヶ月でご主人のお家にやってきて以来、大きな怪我や病気もなく今まで来たそう。今回はオーナーの渡邊さんとミッシェルちゃんを家族に迎えたご本人でもあるそのお母さまに、彼女の元気の源をたっぷり伺いました。
目次
ミッシェルちゃんのプロフィール
年齢&性別
16歳の女の子(11/18生まれ)
体重
20kg(一番多い時は34kg)
大好きなこと
ボールやぬいぐるみを投げてもらい取ってくる遊び。でも取ってきたものは離さない。
キャベツや白菜、水で割った牛乳が大好物。
既往歴
・2歳から5歳くらいまでの間に3度膀胱炎に。
・その後は病気知らずで現在は3ヶ月に1度体調チェックのため獣医師の診察を受けるも、加齢による変化のみで病気などはなし。
家族みんながその成長を見守り、愛に満たされて育ったお転婆娘。
ミッシェルちゃんは福島県で暮らす16歳の女の子ラブ。
人生の半分をミッシェルちゃんと過ごしているという兄妹のような存在のオーナーさんと、その両親に目一杯愛されて日々を過ごしています。
もともとミッシェルちゃんを迎えようと決めたのはお母さまで、盲導犬協会のデモンストレーションイベントに行った際、黒ラブが活躍する姿を見て「絶対に黒ラブと暮らしたい!」と黒ラブ探しを始めたそう。
「探しているとき、ちょうどペットショップにいるからと言われ見に行ったんです。
小さなパピーを抱っこしていると、私の背中をちょいちょいとつついてくる別の子がいて、それがミッシェルでした。
出会った時点で生後4ヶ月だったミッシェルはもうパピーの雰囲気はなかったけれど、抱っこしたら甘えてきて。
これも縁だなと思い、この子に決めたんです」とお母さまが話す横で、渡邊さんも「そうそう、僕が16歳の時にうちに来たけれど、コロコロのパピーを想像していたら大きくてびっくりですよ」と笑います。
ミッシェルちゃんの名はお母さまと渡邊さんが好きなビートルズの曲から取りました。
あたたかなお家に迎えられた彼女は、その後いかんなくお転婆ぶりを発揮。
「何足もスニーカーをかじられました。しかも全部片方ばかり。
一度サイドボードにリードをつないでいた時は、サイドボードの脚を全部かじって壊すし、庭のあちこちに穴を掘って花壇の花を引き抜いたこともあって、それはもうやりたい放題でした。
でも好きで迎えた子だから、あれもこれもダメとは言いません。
2歳の時には警察犬の訓練士さんに基本のしつけを教えてもらい、その頃から徐々に落ち着きつきが出ましたね」とお母さま。
渡邊さんも「ミッシェルが来た時から我が家は家全体が犬のスペースになり、僕ら家族がミッシェルの家に住んでいるようなもの(笑)。
犬を支配下に置くオーナーさんもいるけれど、うちは好きなように過ごさせる共存スタイル。
犬との暮らしで何が正解かはわからないけど、うちはこれが正解なんです」と、お母さまと同じように、ミッシェルちゃんをのびのびと育ててきたそうです。
「元来丈夫なのもあると思いますが、今まで大きな病気も怪我もなく過ごせてきたのは、ストレスフリーな生活をしてきたのが長寿の秘訣だと僕は思っているんです」(渡邊さん)。
なんとダンボールで箱買い! 強い体の屋台骨を作ったのは特製おやつ
最近こそガツガツ食べなくなったものの、食欲旺盛だったミッシェルちゃん。
16歳まで体のトラブルがなかったのは、食べるものにも何かヒントがありそうです。
「去年から食欲にムラが出始め、今は白菜やささみを細かく切ってドライフードにトッピングしたり、ささみを食べない時は犬用チュールをあげてみたり。
食事は昔から朝夜の2回ですが、今は気ままに食べるのでお皿はすぐに下げず、ミッシェルのタイミングに合わせています。
昔から牛乳を水で割ったものも好きで、それは今も変わらずあげていますね」(渡邊さん)
「あと若い頃は豚のゲンコツが好きで、生後6ヶ月頃から肉屋さんに頼んで、ケースで購入していましたね。
下茹でした後にまとめて冷凍し、食べる分ずつその都度グリルで焼いてあげていたんですが、硬いので噛むおもちゃ感覚で夢中で食べていました。
骨が丈夫になったのはそのせいかも。おかげで歯も強く、今も全部の歯が揃っているんですよ」(お母さま)
少しずつ見え始めた老化のサインには、家族が一丸となってケア&サポートを
ミッシェルちゃんは14歳頃まで活発に走り、目に見えて足腰が弱くなったのは16歳になってからだそう。
シニア以降は家の中でも様々な工夫をしたようで...。
「去年の11月に16歳を迎えてから急に老いを感じるように。
今思えば去年の夏くらいから徐々に耳が遠くなってきて、今も自分の足で歩くけれど寝起きや起き上がる時はサポートしたり、散歩の時は歩行補助ハーネスを使うようになりました」(渡邊さん)
「15歳の時に少し足を痛そうにしていたので獣医さんに診せたら、加齢による神経痛と言われ、それ以降は犬用ビタミン剤を毎日1錠飲ませています。お薬はそれだけ。
3年ほど前からつまずくようになったので、玄関や庭までの段差に全部スロープをつけてもらうなど、いかにミッシェルが快適に暮らせるかを考えています」(お母さま)
「ミッシェルの動線に滑りにくいシートを敷いたり、以前はフードボウルを乗せる台を使っていましたが、今は頭を上げるのが負担のようだから台を使わないなど、細かな部分もシニア仕様に変えました」(渡邊さん)
ほかにもストレスをかけない工夫はたくさん。
「昔から家族で時間帯を調節して、極力留守番はさせていません。
この子を迎えて旅行の回数は減ったけれど、欲しくて飼ったワンコですから」(お母さま)
じつは最近、夜中に起きて家の中を徘徊することが増えてきてたそうです。
「僕ら家族は“天使モード”と呼んでいるんですが(笑)。
そんな時は少し体を動かして疲れないと寝ないので、深夜でも近所を散歩します。
これはミッシェルと一緒に寝ている父か僕の役目。現在の足腰では日々の散歩は難しいので、トイレのタイミングを見計らい庭を歩かせるなどもしていますよ」(渡邊さん)
「ミッシェルは年齢を重ねるごとに、家族をバランス良く頼るようになり、甘えるさじ加減が上手になりました。きっと家族の役割を理解しているんですね」(お母さま)
深い愛情があってこそできる献身的なサポート。ミッシェルちゃんもその愛をしっかり受け止めているのですね。
家族みんなの温かな瞳に見守られ、マイペースに穏やかな老後を過ごしているそうです。
1日、1秒でも長く一緒に。年を重ねるほどに愛は増す一方
白くなった眉毛がとびきりチャーミングなミッシェルちゃんは、年齢を聞くと驚くほどの毛艶の良さ。
病気知らずの体に豊かな被毛、その理由を渡邊さんが教えてくれました。
「ずっと自宅でシャンプーしていましたが、15歳からは月に1度トリミングサロンでお手入れしてもらっています。
でも去年頃から換毛期が分かり辛くなり、生え変わりが少なくなったのはきっと新陳代謝が落ちているんでしょうね。
体にも被毛にも栄養が必要なので、食べムラが出始めて以降は手っ取り早くカロリーが取れて喜んで食べるアイスクリームもあげています。
この年齢になると好きなものを食べさせてあげたいから」(渡邊さん)
「今は3ヶ月に1度獣医さんに往診してもらい健康チェックをしています。
心音などは年齢相応だそうですが、もう16歳。
このままの生活ができるよう、1日でも長生きして長く一緒にいられたらというのが今の願いです。
でも、お別れの心の準備はしているんですよ。ただその日ができるだけ遅く来て欲しいですよね」(お母さま)
「迎えた時からみんなで目一杯愛情を注いできたけれど、今の可愛さは格別。
大事にしてきたと胸を張って言えますが、僕がツーリングにカヤックなどが趣味で家を開けることも多いので、もし別れが来たら、“もっと側にいられたなら”と後悔するのかも。
でも今はまずこの夏を乗り切って欲しいです」(渡邊さん)
「ミッシェルと過ごしてきた毎日が思い出だ」と親子で笑うお二人の膝の上には、両方に寄りかかるようにミッシェルちゃんが乗っていました。
そうれはもう天使のような穏やかな顔つきで。
そんな彼女に声をかける時は、耳をめくって口を寄せ、優しく語りかける。
そんな姿を見て、彼女がご長寿なのは、注がれる愛が何よりの栄養になっているのだと確信したのです。
取材・文/横田愛子
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