【取材】北国に暮らす18歳目前のおじいワン!長寿の秘訣は「こだわりの食と筋トレ」 #9 りち
平均寿命が10〜12才と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリバーの肖像』です。
今回紹介するのは18歳を目前にしたラブラドール、りちくん。今も食欲旺盛で、毎日散歩へと出かける元気の源は食と運動にありました。
りちくんのプロフィール
年齢&性別
17歳の男の子(2004年3/17生まれ)
体重
29.4kg(以前は31kg前後)
大好きなこと
散歩と水遊び、蝦夷鹿のお肉が大好物
既往歴
・2018年に膀胱内に腫瘍が見つかる。
・2021年10月、膀胱の腫瘍が大きくなっている他、脾臓にも60mmの腫瘍があることが判明。現在、膀胱の止血をする投薬治療を継続中。
豆腐に納豆、新鮮な鹿肉と「手作り食」が培った骨太な体
知人宅で生まれた6頭のレトリバーのうち、手足が大きく一番最後まで母犬のお乳に食らいついていたというりちくん。
ちょうど犬を迎えたいと考えていた山本秀樹さん家族は、その丈夫そうな姿を見てりちくんを迎えることに決めたそう。
そして想像通り、骨太で頑丈、スクスクと大きく育ってくれたのです。
「犬を飼うのは初めてでしたが、りちを譲ってくれたお家や獣医師の友人からアドバイスをもらい、手探りでここまで来ました。
生家ではリチャードという仮名で呼ばれていて、りちと言う名はそこから」(山本さん=以下「」内同)。
そんなりちくんは、お母様の「手作りの方が材料がわかるから安心」という考えから、パピー期からずっと手作りご飯を食べてきました。
そのため4年前までは茹でた鶏胸肉をメインに、その茹で汁で煮た野菜、納豆に豆腐などが定番だったそう。
「納豆が好きで1食1パック。好き嫌いがなくなんでも食べるから、持って生まれた胃袋の丈夫さが長寿に一役買っていると思います。
ただ4年前に便が緩くなり、獣医に相談したら年齢と共に消化機能が衰えるから食を見直した方が良いと言われ、ロイヤルカナンのシニアラブラドール用のドライフードをメインに、トッピングで鶏胸肉、豆腐といった食事にシフト。
フードを変えた翌日から良い便が出て、年相応の食の大事さを実感しましたね」。
発酵食品である納豆や豆腐に動物性タンパク質とヘルシーな食事を続けてきたことに加え、りちくんが暮らす北海道ならではの味覚も、その筋肉を支える柱に。
「僕が友人と獲ってきたエゾ鹿が大好物。新鮮な鹿肉を焼いたりボイルしてあげています。
また、良質なタンパク質が豊富で脂肪を燃焼させるカルニチンが豊富な羊肉も、北海道ではスーパーで売っているので時々あげていますね。
こういった食事内容に加え、毎日たっぷり歩く散歩やキャンプで走り回ったり湖で泳いだりといった運動が良かったのかも」。
14歳までは自然豊かな暮らしを全力で満喫していたりちくん。さらに、こんな工夫もありました。
筋肉をつけるために、運動後すぐのタンパク質おやつを意識
テニスをやっていた山本さん。以前、テニスでの怪我でリハビリをした経験があり、その時の知識がりちくんにも役立っています。
「人間の筋トレと同じで、運動後にタンパク質を摂ることで筋肉がつくんです。
だから意図的に散歩後にタンパク質豊富なおやつをあげていました。
おかげで筋肉量が減ってきてからも周囲の子たちと比較しても筋肉が残っていて、だからこそ今も歩けているんじゃないかな」。
また、「成長期には競走馬用のカルシウム剤をサプリ感覚で与え、ある程度骨格ができてから筋トレを始めたのが良かったのかも」とも考えているそう。
丈夫な体づくりへの努力は成長してからも欠かすことなく、5年前からは『コセクイン』というグルコサミン系のサプリを取り入れていたり、添加物や市販のおやつはなるべくあげないでいたそうです。
しかし18歳を目前にした今は、ストレスをかけず日々を大切に過ごしたいとの思いから、りちくんが好きなものをちょっとだけあげているそう。
「トーストした食パンとか、すごく喜ぶんですよ。
りちは我が家に来た時からお利口で本当に手のかからない子でしたが、6年前の留守中に食パンを一斤、丸ごと食べてしまったことが(笑)。
きれいに袋だけ残っていてお腹はポンポン状態。よほど美味しそうな匂いだったんでしょうね。今もそのことを思い出したら笑えます」。
好きなものを食べさせてあげたい。その理由のひとつに、今年脾臓に見つかった腫瘍の存在があります。
「15歳を超えるまでは病院に縁遠かったりちですが、膀胱や脾臓に腫瘍があるとわかり、年齢を考えて手術はせずに共存していくことにしたんです。
運よく腫瘍のある場所が痛みを感じる箇所ではないと聞き、ほっとはしたんですが…、いわば爆弾を抱えた状態。
だから今はストレスをなるだけかけず、散歩もりちのペースで好きなように過ごさせています」。
頼れる知人のサポートや、シッターさんとの縁にも恵まれて
昼間はひとり留守番をしているりちくん。
ハイシニアゆえに「留守中に何かあったら」という心配はつきものですが、山本さんご夫妻以外にもりちくんを見守る存在が。
「留守中の昼間、りちを譲ってくれた家の方が様子を見に来てくれるんです。
りちも当然懐いているので、こちらも安心。本当にありがたいですね。
それに出張などでどうしても家を空けないといけない時には、7年間ずっと同じペットシッターさんに来てもらっています。
これもなるべく普段通りの生活を送ってもらう工夫。留守中も自宅内を自由に動けるようフリーにしています」。
ちなみにりちくんの父犬は北海道警察のチャンピオン犬、母犬は介助犬の資格を有しており、りちくんにもその優秀なDNAはしっかり遺伝しています。
が、オーナーさんは“ただの犬”であることを大事にしてきました。
「当初は訓練させたら伸びると言われましたが、りちはあくまで家族であり家庭犬。
何でもすぐに覚える利口さを見るにつけ、遺伝子の凄さを感じますが、家庭犬らしく穏やかに一生を楽しんで欲しいんです」。
ただ、小さな頃から“これだけは”と意識して教えてきたことがあり、それは今とても役立っているそう。
「歳を重ねて耳が聞こえなくったあとのことを考え、パピーの頃からコマンドは全部ジェスチャー付きで教えていました。
ここ半年で急に体力や聴力などに衰えを感じるようになったけど、これはやっていて良かったですね」。
お利口さはそのまま、いっそう穏やかで甘えん坊になったりちくん。
取材中はオーナーさんご夫妻の足元ですやすや眠るその大きな背中からは、なんともいえない幸福感が漂っていました。
取材・文/横田愛子
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