【取材】“年齢詐称疑惑”が出る15歳!「お仕事」と「運動」の満ち足りた生活で元気過ぎるおじいワンに #15アズキ
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。今回登場するのは15歳、アズキ色の被毛が可愛いアズキくん。犬友さんから年齢詐称疑惑が出るほど元気な秘訣は、どうやらレトが本来持っている本能をしっかり満たしてあげる生活にあるようです。
アズキくんプロフィール
年齢&性別
15歳5か月の男の子(2007年6月14日生まれ)
体重
24kg(MAX 33kg)
大好きなこと
ごはん、おやつ、散歩、人(ご主人が一番! 次に女子)
既往歴
・仔犬の頃から胃腸が弱く、現在まで時々下痢や胃腸炎に。
・10歳で喉の下に良性の脂肪腫ができ、抗生剤とステロイドで治療。
・15歳で熱中症、ホルネル症候群、前庭疾患を続けて発症。休養と投薬ですべて完治。
このほか、誤飲が1度あり。猫用のトイレ砂を1リットル程飲んでしまったものの、嘔吐と便で自力で回復。トイレ砂が水分で膨張しない性質のものだったことが幸いした。
警察犬の血を引くビビリくん
ずっと犬や猫、特にラブを迎えたかったというママさん。仕事や育児に追われ中々実現できませんでしたが、お義母さんの介護がきっかけで、アズキくんを迎えることになりました。
「最初は認知症の義母の張りになればと、猫の“ミソ”を迎えました。その後すぐ、今度は介護で塞ぎがちだった私のために、ラブを迎えようということになったんです。
ペットショップには抵抗があったので、知り合いのツテを辿り、警察犬の訓練所から仔犬を譲っていただきました」(ママさん=以下「」内同)。
アズキくんは両親とも警察犬で、体型も逆三角形マッチョの“強面”。でもそんな外見とは裏腹に、ちょっと“ビビリ”な男の子でした。
「風で飛んでくるビニール袋にもビビるような子で、とにかく落ち着かないというか。今でも仔犬のようなところがあります。
それから“犬見知り”なのですが、人は好きでした。
でもずっとべったりではなく、特に寝る時は独りがいいみたいで、誰かと同じ部屋に居るのも落ち着かないという感じでした」。
お家に来たばかりの頃、どこに寝場所を作っても落ち着いてくれず、結局お風呂場がアズキくんの寝室になったそう。
より密室感があり、夏場にひんやり涼しかったのと、広さも四畳半あったので、少し歩いたりもできて落ち着いたのかもしれません。
ただ、夜に中々寝付けなかった原因は他にあったようです。
散歩もお仕事も思いっ切り
アズキくんが中々寝てくれない一番の理由は、運動が足りていないことでした。
「その頃、一緒に登山に行ったことがあるのですが、その日は落ち着いてぐっすり眠ったんです。
それで運動が足りてなかったのかと気付き、それからはしっかり散歩に行くようになりました。
日に2〜3回、合計で2〜4時間くらい歩いていました。
雨でも雪でも毎日長い時間歩いていたので、近所の方に目撃される機会も多く、ちょっとした有名人になってしまいました(笑)」。
散歩だけでなく、時間のあるときは車で大きな公園に行って思い切り遊んだり、タケノコ掘りのお手伝いをしたりと、とにかくよく身体を動かしたそうです。
「主人が掘ったタケノコを、少し離れた私のところまで運んできて、また主人のところに戻っていく、という感じで、大活躍してくれたんですよ」。
当時の動画を見せていただくと、尻尾をブンブン振りながら、さも嬉しそうにタケノコを運ぶアズキくんの姿が。可愛過ぎて悶絶ものでした!
アズキくんに限らず、ラブには相当量の運動や作業、遊びが必要です。犬に作業・仕事を与える=生きがいを与えるほうが長生きをする説も。
達成感を味わえるだけでなく、飼い主さんに褒められることで満足感も得られるので、愛ラブの好きなことを見つけながら、毎日の生活にうまく取り入れてあげたいですね。
因みに、ママさんたちがタケノコ掘りをした山はご自分の山です。登山や散歩もですが、私有地に無断で入るのは絶対に止めましょう。違法なだけでなく、思わぬ危険も潜んでいます。
ごはんは大好きだけど…
散歩や遊び以上にアズキくんが大好きなのが、食べること。でも残念ながら胃腸が弱かったため、ママさんは試行錯誤しながら、健康で満足できる食事を考えてきました。
「最初は譲り受けた警察犬訓練所であげていたフード『ユーカヌバ』でしたが、下痢をしていたので、病院で相談して『ロイヤルカナン』のラブ用に変えました。
その後、手作り食など身体に良いと言われているものも色々試しましたが、どれも合いませんでした。
最終的には『イースター ウェルケア』のレトリバー用と『ドクターズダイエット』に行き着いて、混ぜたり交互にあげたりしていました。
国産だったのと、便の硬さがちょうど良かったのが決め手です。その他には、家庭菜園のキュウリや白菜、それと市販のおやつも少量あげていました」。
やっと良いごはんに落ち着いたと思ったら、13歳の時にガクッと足腰が弱り、歩くのが大変になってしまいます。
「お医者さんに相談したら、体重を落としましょうと。それまでも太らないように気を付けてはいたのですが、体重は増えてなくても筋肉が減っているので、支えきれなくなったのだと思います。
それで『ロイヤルカナン 満腹感サポート』に変え、おやつも含めきっちりグラムで量を管理して、半年で33kgから24kgに落としました。それからは走れるくらい元気に動けています。
あとは、15歳になってからドライが飲み込み難くなったため、20〜30分、水でふやかしてあげるようになりました」。
食欲旺盛なのは何よりですが、それだけに制限するのは可哀想で難しいもの。ストレスなく減量できたのは、何でも相談できるお医者さんの存在も大きかったようです。
希望を汲んでくれたかかりつけ医
今の病院と出合ったのは、アズキくんが2歳の頃。歩いて行ける距離に開院したことがきっかけでした。
「それまでは車で行く距離の病院に行っていたのですが、ここなら散歩がてら行けて、アズキのストレスも少ないと思ったんです。車は苦手だし、“病院だ!”とすぐバレるので(笑)。
行ってみたら先生がとても良い方で、アズキも私もフィーリングが合ったというか。前の病院の先生はちょっと厳しい感じだったんですよね」。
2歳で良いかかりつけ医に巡り会えたのはとても幸運なことだと思います。アズキくんは10歳頃から何度か病気に罹りましたが、ここで治療を受け、どれもすっかり回復しました。
「10歳の時に喉の下辺りにしこりができ、血や膿も出ていましたが、抗生剤とステロイドで完治しました。診断は良性の脂肪腫です。
それから15歳になった今年、8月にホルネル症候群(交感神経の異常により、主に眼の周辺に症状が出る疾患)、9月に前庭疾患と続きました。
ホルネル症候群は、詳しく病状を調べるには精密検査が必要でした。でも10歳以降は麻酔や手術はしないと決めていたので、症状に応じて薬で対処してもらうことにしました。
それで抗生剤を飲ませていたらすぐに回復し、垂れていたまぶたも元に戻りました。
前庭疾患の時は、フラフラして立てなくなり、生まれて始めてごはんを食べなくなったので心配でしたが、抗生剤とステロイドで完治しました。今は薬もなしで大丈夫です」。
10歳を過ぎたら、リスクの高い麻酔や手術はせず、極力病院にも行かなくていいようにしたい。そんなご家族の希望を理解し、尊重してくれたかかりつけ医の先生。
アズキくんの治癒力を信じましょうと、希望に沿った治療で、しかもしっかり治してくれました。また、猫のミソちゃんが亡くなった時も、親身になって対応してくれたそうです。
シニアになっても全然変わりません!
お医者さんにも支えられ、インスタ友だちから“年齢詐称”と言われるほど元気なアズキくん。
もちろん歳と共に多少の変化はありましたが、ご家族の工夫や気遣いで健やかに暮らせています。
「10歳くらいから筋力が落ちてきました。見て判るくらい脚が細くなって、踏ん張りが利かず床や玄関で滑ったり、段差を越えるのも辛そうになってきました。
そこで、玄関には人工芝とヨガマット、玄関を上がったアズキの居場所には絨毯やパネルマットを敷きました。
また、玄関と前庭の間の段差は、盛り土をしてスロープのようにしています」。
脚力が落ちたとは言え、今でも走れる健脚ですから、この工夫があればまだまだ大丈夫そうですね。他にはどんな変化があったのでしょう。
「散歩は家と会社の300mの往復になりました。会社の敷地が割と広いので、そこを歩いたりもしていますが、以前のように長時間歩き続けることはありません。
今でも散歩は大好きなのですが、長時間だと息が上がって、身体が付いていかないという感じです。
それから、あまり一人にしておくのも心配なので、留守番の回数や時間を減らしました。今は長くても数時間くらいにしています。
あとは、寝る時間が増えたことと、夜中に時々トイレに行くことくらいでしょうか。外でしかしないので私が付き添うのですが、トイレは家の中でもできるようにしておけば良かったと思います。
その他は、若い頃と本当に変わっていません。ごはんの時なんか、今でも大はしゃぎするんですよ」。
“全然変わらないんです”。ママさんは何度もそう仰いました。でもアズキくんが変わらずにいられるのは、そうできるように、お家の環境や自分たちの行動を変えてこられたからだと思います。
無理なく自由に
最後に、長生きと元気の秘訣を伺いました。
「一番は自由だったことでしょうか。ずっと近くで構い続ける関係より、適度な距離感を持った関係の方が、私たちとアズキには合っていたように思います。
それと、お互いに無理をしないこと。“アズキのために”とか“犬のために”とか、特別に考えて一生懸命やってきた、というようなことは何もありません。
アズキに良さそうなことがあれば試してはみますが、望んでないと感じたらすぐ止めるようにしていました。
あとは、環境も良かったと思います。洋犬ですけど、日本の家と田舎の空気でのんびり育ち、会社の人たちにも可愛がられて。
山歩きや長時間の散歩が楽しめる場所だったことも、強い身体をつくってくれました。それから、もちろん良い病院に出合えたことも。
そういう環境の中で、自由に、ストレスなく暮らしてきたことが、アズキを長生きさせてくれているのだと思います」。
納得の秘訣でしたが、最後に慌てて付け加えられたことがもう一つ。それは、アズキくんがご主人のことを本当に大好きだということ。
きっとアズキくんはママさんのことも大好きに違いありません。でも、ママさんがアズキくんのことを想う時、心に浮かぶのはご主人とアズキくんの幸せな姿なのでしょうね。
愛することも愛されることも、自分のためにあるのではなく、アズキくんやご主人と共にあるもの。そんなママさんの心のあり方が、アズキくんをレジェンドに導いたのかもしれません。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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