【取材】フラット・コーテッドのマインドは永遠の幼稚園生!? -日暮家「ゴルの魅力VSラブの引力」
ゴールデンが旅立ったのち、フラットコーテッド・レトリーバーを迎えた、日暮家。現在は2代目のフラットとの暮らしを満喫中です。「ゴールデンとフラットは、同じレトリーバーでも性格が結構違うんですよね。おもしろいですよ」と語る日暮さんに、今回はフラットの魅力をたっぷり教えてもらいます。
初代はゴル! すっかりレトリーバーにハマり…
「ゴールデンの知能と精神年齢は人間の中学生ぐらい、それに対して、フラットコーテッドは永遠の幼稚園生って感じがしますね」
そう言ってフラットコーテッド・レトリーバーのルーカス(Lukas)くんを撫でながら笑う、日暮清美さん。
日暮家で最初に迎えたのは、オスのゴールデン・レトリーバーでした。
「30年ほど前です。当時は世間でほとんどゴールデンは知られていなくて、子どもと仲良くできる温厚で大きめの犬種を探していたら、ゴールデンにたどり着きました。
期待通り、娘たちや息子ともすぐ仲良しに。
ボールを投げればどこまでも取りに行ってくれるし、本当に楽しい日々でしたね。
けれど、その子が旅立ってしまってから、私は1年半ほど暗闇の中にどっぷり入り込んでしまい……」
清美さんがペットロスを乗り越えて次に探したのも、ゴールデンでした。
「もう、ゴールデンしか考えられなくて。
ところが、ふとしたご縁でフラットに出会い、初代フラットのムート(Mut)を迎えたんです」
能天気なフラットとのアクティブな日々
ムートくんと清美さんは、さまざまなことにチャレンジしました。
「ゴールデンに比べて能天気で明るくて、いつも尻尾を振ってるのが、フラット。
なのでムートと楽しめると思って挑戦したのが、9頭9名が1チームでトレーニングの延長のようなゲーム種目をノーリードで行って競う“K9ゲーム”です。
競技会場の山中湖のホテルに泊まって、チームのみんなで宴会的な打ち上げをしたりと、“犬友”もたくさんできました。
ムートと楽しみながら基礎的なトレーニングも身に付いたのも大きな収穫でしたね」
ムートくんの個性的な行動によるハプニングも、清美さんの心に刻まれています。
「なぜかムートは、帽子が大好き。
公園で帽子をかぶっている人がしゃがんだりすると、すっ飛んで行って、帽子をパクっと取ってしまうんです。
冬は、ヒラヒラしているマフラーをくわえて引っ張ってしまったり。
『ごめんなさい!』と、何度かあやまった経験があります」
清美さんはムートくんとのアクティブな生活をとおして、レトリーバーは、飼い主と一緒になにかをしたいという気持ちにあふれている犬種だと、あらためて実感したそうです。
2代目フラットはなかなかの個性派!
ゴールデンとは異なり、シングルコートなので泳いでもシャンプーをしても、被毛がすぐに乾くという手入れの“ラク”さにも気づいたという清美さんは、3代目もフラットを選びました。
「なにより、永遠の幼稚園生としか思えない無邪気な性格に魅了されたのが大きいかもしれません。
今一緒に暮らしている7歳のルーカスは、生後5ヵ月齢でブリーダー犬舎から迎えました」
ルーカスくんはショードッグにしようと、ブリーダーさんが最後まで手元においていた子犬だったとか。
ブリーダーさんからの説明によると、フラットコーテッド・レトリーバーのスタンダード(犬種標準)では、おでこと鼻筋の境界線が、ゴールデンやラブラドールのようにくっきりしておらず、ルーカスくんのようにまっすぐに近いとのこと。
「ルーカスは見た目もハンサムボーイですが(笑)、中身も、ムートに比べてオスらしい強さを持っていますね。
尻尾をムートはやさしく振っていましたが、ルーカスの振りは激しくて強いんですよ」
ルーカスくんはソファを破壊したり、留守番をさせていたらドアを開けて出てきていたりと、初代や2代目レトがしなかった行動で家族を驚かせたとも。
「なによりびっくりしたのが、ムートと違って泳がないこと。
ムートは、水に入るといつまでも泳いでいたのに……。
ルーカスも水は好きで2時間くらいはプールに入るのですが、泳がずにお風呂のように浸かっているんですよ」
ルーカスくんは日暮家のレトリーバーとしては初めて、投げたボールを持ってきません。
清美さんはムートくんより、個性派フラットだと感じているそう。
「それから、ルーカスのおもしろいところは、車が苦手で、降りると急いで車から離れようとするんです。
7歳にしてやっと、スムーズに乗車できるようになりました(笑)」
このように語る清美さんは、朝と夕方1時間の合計2時間、ルーカスくんと散歩をするのが最近の日課。
「毎日1万歩は超えますよ。私の毎日は、確実に犬中心にまわっています」
枝が口に留まるハプニングを乗り越えて
ムートくんだけでなく、清美さんはルーカスくんともアクティブなレトリーバーライフを満喫しています。
「山にも海にも一緒に行っています。スノートレッキングは、とくに印象深い思い出です。
それから、ブリーダーさん主催のオフ会で、兄弟姉妹や親戚犬に会えたのも、うれしかったですね」
ルーカスくんのさらなるお楽しみは、犬の保育園兼でのほかのレトと触れ合い。
「ほかの犬たちと遊ぶのも、ルーカスは好きみたいですね。
ルーカスが尻尾を振りっぱなしで笑顔でいるのを見ていると、幸せな気持ちになります」と、清美さんは微笑みます。
最近、そのデイケア施設のドッグトレーナーとトリマー夫妻がルーカスくんの口の異常に気づき、手術で健康を取り戻したとか。
「ルーカスの唇にポチっとなにか腫れているものがあると、伝えられて。
動物病院で診てもらったら、草の種が刺さっていました。
さらに上顎には、細い枝が奥歯と奥歯を、まるで突っ張り棒かのような感じで真横にはまり込んでいたんです!
気づいてもらえたことや治療できたことに感謝しつつ、飼い主の至らなさには猛反省しました」と、清美さん。
2022年の秋には、“K9ゲーム”の会場だった山中湖のドッグリゾートで、清美さんはルーカスくんとドッグダンスのレッスンにも参加しました。
「ルーカスは、どうにもこうにも、個性的。
ゆったりと言えば聞こえはいいですが、なんだかスローな不思議な動きをしていました(笑)。
でも、ルーカスとの一体感が味わえてとても楽しかったですね。
レトリーバーは、飼い主の思いに、もっともこたえてくれる犬種なのは間違いありません。そこが、魅力です」
そう語る清美さんのことを、ルーカスくんは満足そうな表情でずっと見つめていました。
執筆者:臼井京音
ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。
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