【取材】15歳で大病も介護の必要もなし!健康長寿の秘訣は、大好きなオーナーさんと“もう一人のオーナーさん”から注がれた2倍の愛 #20ひるめ
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。今回登場するのは、15歳の女の子、ひるめちゃん。15歳にして、大病とは無縁というレジェンドです。その長寿の秘訣は、手作りごはんと、2倍注がれている愛情なのです。
ひるめちゃんプロフィール
年齢&性別
15歳の女の子(2007年8月24日生まれ)
体重
18kg(MAX 28kg)
大好きなこと
ごはん、おやつ、ドライブ、知ってる人
既往歴
・10歳で両前脚が関節炎になり、週1回のレーザー治療を2年間継続。先生の引退によりレーザー治療は終了し、その後は緑イ貝サプリ等で進行を緩和。
・12歳頃には後脚も関節炎に。
・13歳で歯周病治療(歯石除去)。全身麻酔できる最後のタイミングとの判断。
大家族と二人のオーナー
前のオーナーさんが亡くなり、ひるめちゃんは3歳で望月さんのところにやって来ました。
当時、ご主人が保護団体の代表をされていたこともあり、望月家には既に4頭の元保護犬と1頭の先住犬がいたそう。
「他の犬たちを前にして、ひるめも最初は大人しくしていましたが、2〜3日で慣れて元気になりました。
前のオーナーさんがちゃんと面倒を見られていたので、元保護犬としての問題などもなかったです。
ただ、他の犬がシニアだったり持病があったりでお世話が大変だったので、あまり構ってあげられなかったのが少し可哀想でした。
なので、萱間さんが友だちになってくれて本当に良かったと思います。長生きの秘訣は彼女かもれません(笑)」(望月さん)。
萱間さんとは、望月さんの近所に住む女性。当時小学5年生だった萱間さんは、犬が大好きだったものの、家では飼えない事情がありました。
そこで思い切って散歩中のご主人に声を掛けたことで、ひるめちゃんとのお付き合いが始まったそうです。
「私が行くといつも“遊び相手が来た!”っていう感じで大喜びしてくれて、私もすごく嬉しかったですね。
本当に元気いっぱいだったので、ひるめも寝ると聞いて驚いた記憶があります(笑)」(萱間さん)。
今では萱間家にいる時間の方が長いかもしれないというひるめちゃん。共同オーナーともいえるお二人にお話を伺いました。
健康の素は手作り食
まずは食事について。望月さんが偶然持っていた本が、ひるめちゃんの健康ボディをつくるきっかけになりました。
「仔犬の頃にどんなものを食べていたかは聞けませんでしたが、ウチに来てからはずっと手作り食です。
ひるめより先に保護していた子で、皮膚も内臓も状態が悪く、どんなフードをあげても全然良くならない子がいて。
たまたま家に手作り食の本があったので、試しに作ってみたんです。すると1週間で血液検査の数字が良くなり、お医者さんも驚いていました。
今思えば栄養失調だったのかもしれません。皮膚も内臓も病気ではなく、免疫が下がっていただけなのではないかと思います。
最初は道具もなかったので、ひたすら野菜を刻んで茹で、鶏肉やごはんも入れた雑炊みたいな感じでした。
野菜はカボチャ、人参、小松菜、キャベツ、それにしいたけなどのキノコ類も入れていました。
半年後くらいからは、刻むのが大変過ぎてブレンダーを使うようになり、時短のために圧力鍋も買いました。
その頃からお肉の種類も増やしました。鶏より良いと聞いた馬肉に、牛や魚も。特に魚はオメガ3を摂らせたくてマイワシを毎食入れています。
今一緒にいるシニアの“きくお”はアレルギーがあるので、マイワシの代わりに亜麻仁油をあげています。ひるめはアレルギーはありません」(望月さん)。
当時望月家にいた6頭は、ほとんどが大型犬。おやつはみんなに買うと相当な出費になることもあり、あまりあげてきませんでした。
今は無添加のものなどをあげていますが、特に好きなのが焼き芋だそう。3年前から大好物になり、少量ですが毎日楽しんでいます。
大学でも一緒!
続いては、萱間さんの大学生時代のお話です。専攻は動物行動学でしたが、選んだ理由は何とひるめちゃんと一緒に授業を受けられるから。
萱間さんにとって、ひるめちゃんといることがどれだけ大事だったのかが分かります。
「大学では別に飼育している犬がいて、そのお世話をしたりもしていたのですが、ひるめとも“ドッグトレーナー研修”で1年間トレーニングをしました。
その時ひるめは13歳だったので、負担の少ないトレーニングをすることにし、まず付いて歩く側歩から始めました。
アジリティも少しやったのですが、転んでも平気で、シーソーを走って渡ろうとしたり、トレーナーさんが驚くくらい怖いもの知らずでした。
そして一番頑張って役にも立ったのが“待つこと”です。いつも人に依存気味というか、置いていけないタイプだったんですよね。
トレーニングは反復で、離れたところで待つことを繰り返して、最終的には70m離れて1分間待てるようになりました。
日常では旅先などで役に立ちましたが、何よりコミュニケーションや運動の一環として、ひるめも楽しみながらトレーニングできたのが良かったと思います」(萱間さん)。
今でも公園の土管トンネルに突入したりと、常に好奇心を忘れないひるめちゃん。そのメンタルは間違いなく元気の源になっていることでしょう。
また大学では、トレーニングや学術的なことだけでなく、歯磨きやシャンプーといった実践的なことも学んだそうです。
充実のシニアライフ
シニアになってからはどんな暮らしぶりなのでしょうか。
「落ち着きましたね。若い頃は動きが激しく、はしゃぐ感じの子だったので、イベントやカフェなどにもあまり行けませんでした。
食べ物があるとパッと行っちゃうこともあり、当時は頭数も多かったので注意できなかったんです。
特に子どもがいる場所では、子どもが手に食べ物を持っていると、ちょうどひるめの目の高さになるので。
それから若い時は遊びがコミュニケーションでしたが、今はマッサージがその代わりになりました。
犬用のアロママッサージを教えてもらい、いつもよりたくさん歩いた時などにやっています」(萱間さん)。
今も散歩やお出かけを満喫しているひるめちゃんですが、歩く距離は短く、速度もゆっくりになったので、大きな公園などにはカートで行っているそう。
最初はアウトドア用のキャリーカートを使っていましたが、タイヤが擦り減ってガタガタするようになり、専用カートを探すことに。
“伏せの状態でも景色が楽しめる高さ”のこだわり条件で探し続け、『オールフォーワンズライフ』というインポートショップで、外国製のペットストローラーに辿り着きました。
両手で押せて、タイヤもゴム製でしっかりしているため、ひるめちゃんの快適さはもちろん、人間側の大変さも全然違って驚いたそうです。
オムツも介護も不要です
お家の環境や、シニアグッズについても伺いました。
「今の家を建てた時、人間用ですが滑り難い床にはしていました。それでも滑りやすくなったので、ひるめが歩くところには、滑り難いビニール素材のシートを敷いています。
グッズは、前の子から使っている取手付きのベストや、ひるめではなくきくおが寝ているのですが、『エアウィーヴ』のベッドくらいです。これも10年以上前のものです。
オムツも使ってないんですよね。たまにおねしょすることもありますが、だいたい夜11時くらいにおしっこさせれば、朝までちゃんと寝てくれます」(望月さん)。
15歳ながら、まだまだ介護不要なひるめちゃん。リビングを中心に、家中をフリーに動けています。
グッズ等も少なく済んでいますが、動線すべてに敷いたというビニールシートは、内装業者さんに依頼したオーダー品。
薄く透明で少し摩擦が強く、滑り難いのはもちろん、掃除がしやすいのも利点だそうです。
手をかけるべきところはしっかりかけ、先住犬たちのシニア経験やお下がりも活かしながら、快適なシニアライフを実現しています。
2倍の愛情を受けて
最後に、お二人それぞれから長寿の秘訣を伺いました。
「来た時はぽっちゃりしてたんですが、毎日の散歩と体重管理で、スリムで筋肉質な子になりました。
当時、股関節形成不全の子がいたので、筋力や体重には気を付けていたんですが、それがひるめにとっても良かったのかなと思います。
それから手作り食も。やっぱり何が入っているか分かるので安心ですし、体重管理もしやすかったです」(望月さん)。
「私のことで言うと、一緒に大学に行ったりお出かけしたりしたことが、いい刺激になっていたのかなと思います。
大学で友だちに会う時なんか、駆け寄って尻尾を振って、“来たよ!”アピールがすごかったんですよ。普段私たちにはそこまでしてくれません(笑)」(萱間さん)。
終始とても楽しそうにひるめちゃんのことを話してくださったお二人。心からひるめちゃんが大切で大好きなことが伝わってきました。
ひるめちゃんが若い頃にあまり構ってあげられなかった分、今はひるめちゃんだけを見る時間を増やすようにしているという望月さん。
そして大学までひるめちゃんとのことを考えて選び、今は自分の部屋で一緒に過ごすことも多いという萱間さん。
“アピール”しなくてもいつも愛情を注いでくれる二人のオーナーさんの間で、ひるめちゃんは穏やかに、でもしっかりと幸せを感じていると思います。
取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)
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