【取材】旅立つ3日前まで普段どおり暮らし15歳で透明になったリオ。日本初のドッグリフレクソロジストが語る「長寿の秘訣」と「私がペットロスにならない理由」
東京都にお住いの飯野由佳子さんは、日本初の犬のリフレクソロジーを行うドッグリフレクソロジスト。大のレトリーバー好きで、リオくんという名前の黒ラブと暮らしていましたが、昨年11月に15歳でお空へ…。「もちろん悲しくて、さみしいけど、ペットロスにはなっていません」と言う飯野さんにその理由を伺うと、とても大切なことに気づかされました。
海外で統合医療やがんケアについても学ばれた飯野さんのお話には“愛犬の長寿の秘訣”や“ペットロスとの向き合い方”のヒントが盛りだくさんです!
目次
リオくんプロフィール
年齢&性別
昨年11月に15歳2か月で虹の橋を渡る。男の子。
体重
28kg
生前の病歴
・10歳の時に小麦アレルギーを発症。
・13歳で右前足に腫瘍ができ“軟部組織肉腫の疑い”と診断されるも、病名は確定させなかった。
“予防に勝る治療なし”。5歳の時から徹底的に病気予防に努める!
日本初のドッグリフレクソロジストとしてTBS「世界バリバリ★バリュー」、フジテレビ「あっぱれ!!さんま新教授」などにも出演経験もある飯野さん。
愛犬・リオくんとの生活の中で一番大切にしてきたのが“予防”の意識。
それにはアロマセラピーとリフレクソロジーの勉強のためにアメリカやヨーロッパを訪れた経験が大きく関係しているといいます。
「医療制度の違いから、アメリカやヨーロッパでは日本ほど簡単に診察を受けたり薬をもらったりできないんです。
なので、むこうの方はとにかく“病気になる前に予防する”という意識が高い。
それでアロマセラピーやリフレクソロジー、指圧といった自然療法が広く取り入れられているんですが、そういう海外のいい文化を目の当たりにして、私も“予防に勝る治療なし”と感じました」(飯野さん=以下「」内同)。
そんな気づきから、なんとリオくんが5歳の時にはもう病気予防対策を始めたのだそう。
たとえば、予防医療に力を入れている動物病院をかかりつけにする、ドイツで自然療法を専門とする獣医師が来日された際に診察を受け、ホメオパシーレメディ配合のサプリメントを処方してもらう、酸性に傾きがちな体内をアルカリ性に保つためのケルプ(海藻)サプリメントを与える…などなど。
これはほんの一部で、リオくんが10歳を過ぎてからは“Team HOPE”(充実した健康診断で病気の早期発見・早期治療を目指す獣医師団体)の健康診断を年に1〜2回、13歳以降は特に心配な症状がなくても1〜2ヶ月に診察を受けるようにもしていたのだとか。まさに万全の態勢!
遺伝子栄養学に基づいた食事管理
そして、毎日の食事にもかなりのこだわりが。
パピー期から『ニュートロ』や『ボッシュ』などプレミアムフードを与えていたのですが、10歳を過ぎたころ、リオくんが突然小麦アレルギーを発症。それを機にフードも小麦を含まないものに変えました。
「ニュージーランド産の『K9ナチュラル』のラム&サーモンです。
食事に関しては、なるべく土壌がいいところのものを与えるようにしていて、ニュージーランドのように自然豊かなところで育ったラムやサーモンなら安心して与えられるな、と思って選びました。
ほかにも熊本のほうから野生のシカ肉を取り寄せたりもして、10歳からは鶏肉やラム肉も含んだ生肉中心で、高たんぱく質の食事にしました」。
愛犬に生肉を与えることについては賛否両論ありますが、飯野さんはご自身が学んだ “ニュートリゲノミクス(遺伝子栄養学)”の考えを取り入れたのだそうです。
「“犬の祖先は狼”と言われるとおり、犬は狼が食べるものを食べる遺伝子を受け継いだ動物。
それなら祖先の遺伝子に合った食べ物をあげればいい。合わないものをあげるから不調を引き起こすというアメリカの獣医師の考え方なんです。
肉食動物である狼は自分がしとめた獲物の肉を生で食べるので、その遺伝子を受け継いだ犬にとっても生肉はいいんじゃないか、という私の判断です」
そして、狼などの肉食動物が獲物を食べる際、一番に食いつくのがその内蔵。
なぜならそこには食べた草を消化するための酵素や栄養素がいっぱい含まれているからです。
そこで、K9ナチュラルの『グリーントライプ』(牛や羊といった草食動物の胃袋をフリーズドライにしたもの。ビタミン、ミネラル、乳酸菌、必須脂肪酸、必須アミノ酸など、多くの栄養素を含んでいる)を与えていたそう。
「正直、生肉を食べさせることやグリーントライプが長寿につながったのかはわかりません。
でも、私はニュートリゲノミクスを勉強して納得ができたし、リオも楽しく、おいしく食べてくれていて、排泄物もキレイだったんです。
血液検査をしてもずっと健康を保っていたので、食事に関しても“これでいいんだな”と思って続けていました」。
ほかにもヒューマングレードのプロバイオティクス、プレバイオティクスで腸内環境を整えることも忘れませんでした。
これは一見、厳格な食事管理のようにも思えますが…。
「リオは小麦アレルギーなのにパンが大好きで。欲しがる時は時々あげたりもしていましたよ。
“人間の食べ物は与えちゃいけない”って言いますけど、ワンちゃんはおいしいものが食べたいというよりも、飼い主からもらえることがうれしいんだと思うんです。
それを拒否したら後々後悔するだろうな…と。
だけど、アレルギーがあるのはわかっていたので量には気をつけて、本当にハトにあげるくらいの量を食べさせていました」。
食に関しても愛犬にストレスを与えないことや、コミュニケーションを大事にされていたのがわかります。
オリジナルのドッグリフレで全身をケア
人間のリフレクソロジストでもある飯野さんは、日本ではまだ馴染みのないドッグリフレも積極的に取り入れました。
アメリカ、スペインなど数名の海外の先生からメソッドを学んだうえで、犬用のオリジナルの足裏、顔リフレクソロジーチャートを編み出し、リオくんに施術していたそうです。
「アメリカの耳鼻咽喉科医師が見出したゾーン理論を応用すると、ワンちゃんの足裏や顔にも全身臓器が反射されていると考えることができます。
特に足裏は全身臓器へ刺激を送るリモコンのようなもの。
ほかの療法ではおよびにくい、胃、腸、腎臓、肝臓などへ刺激を送ることが可能です。
ドッグリフレをすることで、全身バランスをとり、免疫力や自然治癒力も高められる。それがひいては病気の予防。長生きにもつながっていくと考えています」。
ちょっとしたコツを知っておくだけで、いつものスキンシップがさらに意味のあるものに。
リラックス効果もあるようなので、取り入れてみる価値はありそうです。
“病気になったかわいそうな子”ではなく、リオはリオ。毎日を楽しく、おいしく!
リオくんが11歳を過ぎたころには、大型犬介護の経験が豊富な老犬介護士さんから老犬ケアについて学んだりもしました。
この時、リオくんはまったく介護が必要な状況ではなく、これもいざという時にあわてないための準備。
しかし、実際にその介護士さんのお世話になることはなく、リオくんはお空へ旅立ちました。
13歳過ぎに右前足にしこりができ、細胞診により“軟部組織肉腫の疑い”と診断(血液検査やレントゲン写真は異常なし)されるも、それ以上に病名を明らかにする検査や積極的治療は行わず、緩和ケアに努めて1年半でした。
「まず、腫瘍の正体を調べなかったのは、その時点でラブラドールの平均寿命は過ぎていた、ということがあります。
そうじゃなかったら私も主人も違う選択をしていたかもしれません。
でも、私は病名を追求し過ぎなかったことをよかったと思ってるんです。
知ってしまったら、それに合う治療、それに合う薬、それに合った何か…って、病気にばかり目がいってしまう。
だけど、私はリオが“うれしい、楽しい、おいしい、幸せ”と感じながら毎日を過ごせるように…というほうに力を注ぎました」。
老犬介護士さんの「最期は犬が決める」という言葉で覚悟が決まり、緩和ケアに入ってからは犬の尊厳を守りながら、1日1日を丁寧に過ごすことを心がけた飯野さん。
リオくんは亡くなる3日前までいつも通りごはんを食べ、カートに乗ってお散歩へ行っていたそうです。
私がペットロスにならなかった理由
リオくんが亡くなって4か月(※取材時)。飯野さんは今、感じているのは…。
「愛犬との別れはとても悲しいことですけど、後悔しないように、パピー期、成犬期、シニア期と、それぞれの年齢に応じてやれることはやってきました。
最善の医療を受けさせてあげたくていい先生を探したし、家でのケアも自分が納得できるものを取り入れた。
ワンちゃんの体に優しく、リオが喜んでくれるものをやってきた自負がひとつの救いになってるような気はします」。
また、海外でいろいろと学んできたことが影響しているとも考えます。
「リオはすごく天真爛漫でかわいい子だったので、とにかく痛い思い、苦しい思いをさせたくないっていうのが一番にあって。
亡くなってしまってもう顔が見られない、体に触れられないのはものすごくさみしいことですけど、自由に動き回れる魂になったほうがリオらしいと私は思ったんです。
魂は永遠で、ずっと私のそばにいてくれる。そうと思えるからペットロスになっていないんだと思います」。
リオくんの葬儀の際、葬儀社の方から「毛艶がよくて、骨もぎっしり重く太い。
とても15歳とは思えない。骨や内臓への腫瘍の浸食も見られないのでがんではなかったのではないか」という言葉をかけられ、「飼い主としてしっかり健康を守ってあげられたんだな」と、報われた想いになったという飯野さん。
これはきっと、リオくんからママへの通信簿。100点満点を送ってお空に旅立ったのだと思わずにいられませんでした。
最後に…
ラブラドールの平均寿命、がんになりやすい犬種であることを考えて、早い段階から対策を行ったこと。
自分の納得のいく病院やケアの方法を取り入れたこと。
「やれることはすべてやった」と思えるくらい愛情を注いだこと。
愛犬の尊厳を最期まで守れたこと…。
そのすべてがペットロスにならずに済むことにつながったと考えられます。
ですが、最後に飯野さんはこんな言葉を残してくれました。
「愛犬への愛情が“依存”にならないように、自分たちの生活を一番の基本にしながら、最大限の愛情を注ぐことが大事かな、と思います。
無理はしない。これは人間の介護と同じですね」。
取材・文/永野ゆかり
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