2023年1月16日1,845 ビュー View

【取材】バナナとパパママが大好きな16歳。病から何度も立ち上がれたのは「食いしん坊&寂しがり屋パワー」のおかげ! #17ロビン

平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリーバーの肖像』です。今回登場するのは、16歳のロビンくん。食いしん坊&寂しがり屋パワーで、倒れる度に立ち上がっている男の子です!

レジェンドレト

ロビンくんプロフィール

レトリバー

年齢&性別

16歳の男の子(2006年7月22日生まれ)

体重

27kg(MAX 31kg)

大好きなこと

食べること、人、川遊び、おでかけ

既往歴

・6歳で肥満細胞種の疑い。

・11歳で右耳の外耳炎。

・12歳で左眼にメラノーマ 。

・13歳で腰椎ヘルニアの疑い、前庭疾患、左耳の外耳炎。

・14歳で関節炎と脾臓腫瘍、眼瞼(まぶた)腫瘤。

・16歳で痙攣発作

 

出戻ってきた愛息子!

ラブラドールレトリバー

 

ロビンくんは、オーナーの山本さんが繁殖した男の子。といっても山本さんは専業ブリーダーではなく、愛犬に子どもを産ませたくてブリーダーの資格を取られたそう。

 

ラブラドールの赤ちゃん

 

出生後、無事に巣立っていったロビンくんでしたが、とある事情で6歳を前に出戻ってきました。

 

「少し高齢のオーナーさんで、躾や近隣の方とのトラブルで困っている様子でした。何度か相談を受けたので、預かって躾をしたり、様子を見に行ったりしていました。

 

結局、ロビン本人に問題があるわけではなかったのですが、環境面も考えて私たちが引き取ることになったんです」(山本さん=以下「」内同)。

 

山本さんが引き取る前は、庭の奥まったところで飼われていたというロビンくん。そのせいか、とっても寂しがり屋になっていました。

 

ラブラドールの赤ちゃん

 

「普段からいつも目が届く所にいるんですよ。それでも、洗面所に行ったりとか、ちょっと離れるのも嫌がるんです。5分も離れると鳴いてしまいます。

 

お母さん犬がいた頃は大丈夫だったのですが、今は私か主人が一緒にいないとダメですね。“スーパー寂しがり屋”です」。

 

“寂しがり”対策として、お出かけに連れて行くのはもちろん、仕事も在宅にするなど、ロビンくん中心の生活になりました。

 

また、引き取り当時は衛生面に多少問題があったものの、すぐに病院で診てもらったこともあり、体調の心配はなかったそうです。

 

ベーシックごはんからバラエティ食へ

ラブラドールレトリバーの親子

お父さんのアトム・お母さんのメルと一緒に。

 

ちょっとイレギュラーな子育てになりましたが、そこはロビンくんの両親も立派に育てあげた山本さん。ベーシックなフードと手作り食で、しっかり健康な体をつくりました。

 

「お父さん犬が皮膚に少し疾患があったので、フードは色々と試して『ビタワン』のドライフードにしていました。ロビンもシニアまでずっとそれです。

 

元々食いしん坊なのでよく食べていたのですが、シニアになって体調の波もあり、食欲にバラツキが出てきました。

 

そこで、調子が悪いときはドライに手作り食を加えるようになりました。サツマイモや人参、鶏ミンチなどを細かく刻んで混ぜ、圧力鍋で煮たものです。

 

調子が良いときは、手作り食の代わりにウェットフードと普通に炊いたお米にしています。ウェットは『ペディグリーチャム』のビーフ、ささみ、チキンのローテーションです。

 

それと、途中で食べなくなったときは鰹節をかけてモチベーションを上げていたのですが、今では催促するくらいお気に入りになりました。

 

おやつはあまりあげてきませんでした。ただ最近はビスケットや手作りのササミジャーキー、干したサツマイモ、パンの耳のラスク、魚肉ソーセージ、お麩など、色々あげています」。

 

手作りごはん

療養食は、柔らかく炊いたお芋やお米と。

 

シニアになってすぐは、ふやかしたドライフードをあげていたものの、臭いが強くなるせいか食欲が減退。そのためドライフードはふやかさず、手作り食を加える方法になりました。

 

また、脾臓を悪くして薬が必要になってからは、好物のバナナやあんぱんに薬を入れて食べさせることも。

 

薬を飲ませる目的のほか、これまであまりおやつをあげていなかった分、もうあまり厳しくせず、好きなものを食べさせたいという気持ちもあるそうです。

 

薬を入れたバナナ

バナナに薬を忍ばせて。

 

それから、体調が悪くごはんが食べられない時は、『メイバランス』という人間用の栄養飲料をシリンジであげたりもされています。

 

ラブラドール

バナナを見つめるロビンくん。

 

かかりつけ医を変えたのは⋯

黒ラブ

 

実家に戻って寂しさは解消、おいしいごはんもモリモリ食べて、第二の犬生を謳歌したロビンくん。シニアになるまでは大きな病気もありませんでした。

 

「結果的には違ったのですが、ウチに戻って少し経った頃、肥満細胞腫の疑いで手術をしました。胸から首にかけて腫れがあり、腫れ方が急だったためそういう診断になったようです。

 

肥満細胞腫を想定した手術だったので、取りこぼしがないよう、かなり大きく切除したと思います。

 

黒ラブ

 

それから11歳頃に右耳が外耳炎になり、耳血腫も併発して跡が残ってしまいました。

 

次は12歳で、左眼に黒い点を見つけて病院に行ったところ、メラノーマという診断でした。ただ小さかったので経過観察になり、その後も悪化はしませんでした」。

 

この少し後、山本さんは病院を変える決断をします。

 

理由は、ロビンくんより前に迎えていたコーギーのソラちゃんが、この病院で亡くなってしまったこと。

 

コーギー

 

胃捻転の手術中に亡くなったのですが、急を要する手術の前に長く待たされ、診察や術後の説明なども、心から信頼できるものではなかったそう。

 

新しくかかりつけ医になったのは、ちょうどその頃に開院した親戚の先生でした。

 

自宅からは少し遠かったものの、元々お父さん犬の癌治療等を相談していて、信頼関係ができていました。

 

初対面の時に噛まれてしまい、ロビンくんには少し苦手な相手だったというソラちゃん。でも最期には、信頼できるかかりつけ医との縁を結んで旅立っていきました。

 

サプリとスパルタが元気の源!?

黒ラブ

2018年11月。しっかりとした足取りでトレッキングを楽しんで。

 

13歳になり、軽い前庭疾患と左耳の外耳炎があった後、立て続けに足腰の症状が現れます。

 

「急に歩けなくなったので病院に連れて行ったのですが、着いた頃には歩けるようになっていました。念のため調べてもらうと、椎間板の軟骨に石灰化が見られるとのことでした。

 

治療は痛み止め程度で、あとはサプリの『アンチノール』を処方してもらいました。これは今でも飲み続けていて、元気になった実感があります。その後ヘルニアにもなっていません。

 

黒ラブ

2021年4月、15歳のころ。自宅の庭にて。

 

それから14歳になってまた歩けなくなり、このときは左後脚の関節炎でした。症状はすぐ治りましたが、先生に“年齢も年齢だし、もうそんなに歩かせなくていいよ”と言われて。

 

私はそれでもいいかなと思いましたが、散歩担当の主人がスパルタで(笑)。その後も変わらず行き続けました。でも今もロビンが元気なのは、そのおかげかもしれません」。

 

長野県にある雲海が広がる絶景、SORA terraceへ。犬もロープウェイで一緒に訪れることができるスポットです。

 

ご主人ももちろん厳しいだけではなく、年齢に合わせてペースをゆっくりにしたり、散歩の後にはしっかり身体を拭いてあげたりと、“優しいスパルタ”を実践されています。

 

この後は、右の下まぶたに腫瘤ができたり、痙攣発作を起こしたこともありましたが、何れも重い病状には至らず。

 

唯一深刻だったのが、かかりつけ医も山本さんも一度は覚悟を決めたという、脾臓の疾患でした。

 

板に乗せて病院へ

黒ラブ

 

最初の異変は14歳の時でした。

 

「寝たまま全然起き上がれなくなって、顔すら上げられない状態になったんです。ベッドから動かすこともできないので、ベッドごと大きな板に乗せて病院に運びました。

 

年齢的に詳しい検査をするのもリスクになるので、エコーで診てもらったところ、脾臓の腫瘍が破れて内出血しているのではないかとのことでした。

 

それで溜まった血を抜くのと同時に、“これで助かる子は30%くらいだけど、とにかくやってみましょう”と、止血剤で出血を止める処置をしてもらいました。

 

一通りの処置は終わり、入院させるか聞かれましたが、家に連れて帰ることにしました。入院してもダメかもしれないくらい危険な状態だったので、それなら家でと思ったんです。

 

“家までもたないかもしれない”と言われながら病院を後にし、30〜40分車を走らせて、何とか家まで辿り着きました。

 

黒ラブと飼い主

 

家に着いても横になったまま動けず、2〜3時間置きに私たちが体位変換する以外は、2日間トイレもせずに寝たままでした。

 

食事ももちろん摂れず、当日は水を口に含ませるのがやっとでした。ところが、2日目に好物のバナナを口のそばに持っていったら、少しだけ食べたんです。

 

これはと思ってリンゴやフライドポテトなど、とにかく好きなものを口に持っていったら、少しずつ食べ始めました。

 

3〜4日経つと、野菜とごはん、そして元気になりそうな鶏の肝を煮た流動食が食べられるようになり、そして立って歩けるようになりました」。

 

奇跡の復活を遂げたロビンくん。この後も15歳と16歳で同じ症状に見舞われますが、何れも1回目よりは軽症でした。

 

好きなものが食べたい、そしてご夫妻の側に行きたいという、“食いしん坊&寂しがり屋”パワーで、倒れる度に立ち上がっています!

 

シニアライフのお役立ち

黒ラブ

長寿の表彰状を前に誇らしげ。

 

病気と闘いながらも、調子が良ければ今もグイグイ歩くというロビンくん。スパルタ散歩や川遊びなどで鍛えた足腰は健在ですが、ケアも必要になってきました。

 

「足腰の対策は、以前からフローリングにタイルカーペットを敷いているのと、今は『Help ‘Em Up Harness』という、前後両方を支えられるベルトタイプの介護ハーネスを使っています。

 

車に乗るときや段差の移動、トイレなど、“自力ではきつくなったけど、補助してあげればできる”という場面で重宝します。抱えるようなときは布タイプのハーネスを使っています。

 

黒ラブ

 

ほかに買って良かったと思うのは『ブレスエア』です。お母さん犬の頃から使っていて、リビングと寝室、長時間おでかけするときは車にも敷いていました。

 

ここ1〜2年、たまに寝ながらウンチしてしまうことがあるので、簡単に洗えてすぐ乾くのは助かります。

 

あと、お漏らし対策に布製のマナーベルトも使っていますが、洗う回数を減らすため人間用の尿漏れパッドを付けています」。

 

このほか、物ではありませんが“触るボディランゲージ”も役に立っているそう。

 

耳が聞こえないだけならジェスチャーも使えますが、目も見え難くなると、触ることが唯一のコミュニケーションになってきます。

 

山本さんは寂しがり屋のロビンくんを安心させるため、若い頃からよくボディタッチをしてきました。おかげでシニアになってもタッチを嫌がらず、しっかりコミュニケーションが取れています。

 

儲けもん

田植えに付きそう黒ラブ

2022年4月。田植えのシーズンには、一緒に田植え機に乗って。

 

山本家に戻ってきて10年余り。大きな環境の変化も病気も乗り越え、16歳というレジェンドになれた秘訣は、どんなところにあったのでしょう。

 

「やっぱり、寂しがり屋と食いしん坊に応えてあげたことでしょうか(笑)。とにかく独りになるのがストレスだと感じたので、私も主人もできるだけ一緒にいるようにしてきました。

 

それから食に関しては、身体をつくってきたこともですが、何より食べたいという気持ちが、何度も病気から復活できた原動力になっていると思います」。

 

田植え機に乗る黒ラブ

2022年4月。田植え機に乗るロビンくん。

 

もしかしたら、あのままずっと寂しい暮らしをしていたかもしれないロビンくん。ご夫妻の下に戻り、一緒にいられて、どんなに安心で嬉しかったことでしょう。

 

家族で一緒に過ごせる普通の毎日が、ロビンくんにとっては最高の幸せだったに違いありません。

 

そして山本さんも、ロビンくんが生きていてくれる今の日々を、“儲けもん”と思って大事にしたいと仰っていました。

 

“儲けもの”とは、思いがけない形で手に入ったものや幸運のこと。愛犬と出会い、一緒に暮らし、そして長生きしてくれることは、まさに“儲けもん”ですね。

 

黒ラブとその家族

 

取材・文/橋本文平(メイドイン編集舎)

 

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