シニアレトには歯のケアと唾液の分泌促進が欠かせない
犬は歯周病になりやすい動物です。とくにシニアになると唾液の分泌量が減って、口腔内に歯周病菌が増殖しやすくなります。歯周病菌は、すぐ近くの鼻腔にまわったり、心臓などの内臓にまわってしまうことも。そうすると、愛レトは歯周病菌による病気で苦しむことになってしまいます。
愛レトの口腔内をなるべく衛生的に保つために、今日からぜひ対策を!
シニアになると唾液の分泌量が減る
全身の状態で考えれば、レトリーバーのシニア期は8歳頃から始まると考えられます。でも、口だけの状態で言えば、シニア期突入は6歳頃から。
そもそも、2歳以上の犬の多くが歯周病になっていると言われます。犬には虫歯はほとんどありませんが、人間と比べれば歯周病にずっとかかりやすい動物なのです。
若齢のうちは歯が汚れていても、唾液の分泌量が多かったり、菌がそれほど多くないので大きなトラブルにはなりません。けれども、6歳以降になると急激に唾液の量が減ってきます。すると、初期の歯周病でとどまっていた状態から、一気に歯周病菌が増殖して歯周病が悪化していくことに。
唾液には、歯垢(プラーク)を洗い流す自浄作用、口の中の細菌の増殖を抑える抗菌作用、粘膜を保護する作用、酵素のアミラーゼがでんぷんを分解して消化を促進する作用などが備わっています。そんなスゴイはたらきを担う唾液の分泌を、可能であれば促進してあげたいものですよね。
唾液が減ると口臭が増す
シニアレトの口がなんだかにおうなぁ……、と感じている飼い主さんも少なくないでしょう。その理由のひとつが、唾液の分泌量の低下。唾液によって殺菌されないので、口腔内のばい菌が悪臭を放っているのです。もちろん、唾液が減ったことで歯周病が悪化して、口臭が強くなっていることも考えられます。
子犬のうちから歯磨きを習慣化していても、シニアレトへの歯磨きで唾液の分泌量まではコントロールできないため、シニアドッグにつきものの口臭からはなかなか逃れられません。
歯磨きのほかに、唾液が分泌されやすくなる裏技を、シニア期に片足を突っ込み始めた愛レトのためにぜひ行ってあげてください。
口元マッサージで唾液の分泌を促進
唾液パワーで口腔内の健康を促進したい! ならばまず、簡単な方法を伝授します。
口元のマッサージです。
唾液は、耳下腺や舌下腺といった大きな唾液腺と、軟口蓋など口のあらゆるところに存在する小さな唾液腺との共同作業によって作られています。
そのため、口のまわり全体を飼い主さんが手でやさしくマッサージをするようにして刺激してあげると、唾液の分泌が促されます。
とくに、犬が威嚇しているときにシワが寄る“咬筋”まわりをしっかりとほぐすのが効果的。
飼い主さんが決して気負わず、テレビを見ているついでなど、リラックスして愛レトの口のまわりをマッサージしてあげてください。
歯磨きも大切
みなさんは愛レトに歯磨きをしていますか?
歯磨きは歯周病予防にとても有効なので、ぜひ子犬のうちから習慣にしてあげたいものです。
歯磨き用のガーゼやおやつなどで歯の表面の汚れを除去するだけでは、実際のところは十分とは言えません。
歯と歯茎の境目にできる歯周ポケットの汚れを掻き出すのは、歯ブラシにしかできない芸当。歯磨きは歯ブラシで、歯周ポケットにブラシの先端が入るように意識して行ってあげましょう。
シニアになって口が渇きやすくなると、ペースト状の歯磨き粉は歯周ポケットに入りづらくなってきます。シニアレトの歯磨き剤は、水分が多い液体状のものをチョイスして。浸透力がアップするので、歯周病の進行を予防するのにも役立ちます。
シニアになるとガマンができなくなってくるという精神面への変化も見られます。これまでは問題なかったのに、歯磨きを急に嫌がるようになるかもしれません。
そんなレトには、歯磨きの前後におやつのご褒美などを用意して、楽しい雰囲気で歯磨きができるように工夫してあげましょう。
デンタルスプレーも便利
急に歯ブラシでの歯磨きを嫌がるようになって、飼い主さんがどうしても磨けなくなってしまったり、もともと歯ブラシで歯磨きをしてこなかったというレトには、デンタルスプレーが便利です。
歯磨きそのものをあきらめて何もしないというより、デンタルスプレーだけでもよいので、歯のケアをしてあげましょう。
犬用のデンタルスプレーが数多く市販されています。レトたちが好みそうなおいしいフレーバーのついたものや、口臭が軽減できるクロロフィルなどが配合されたものなど、多彩なデンタルスプレーのなかから愛レトにマッチするスプレーを見つけてみてください。
スプレーはそもそも水分なので、スプレーが口腔内に入ることで唾液の分泌が促されるというメリットもあります。
味をつけてでも水を飲ませよう
水を飲むことで、口の中の汚れを洗い流す効果が期待できます。
人間同様、シニアになると自身ののどの渇きに気づきにくいもの。そもそも脱水症状を防ぐためにも、シニアレトにはこまめに水分補給をさせてあげましょう。
とはいっても、犬には「健康のために飲んで」と水を差し出しても飲んではくれないでしょう。水分を摂らせるためには工夫が必要です。
簡単なのは、味つきのおいしい水を飲ませること。鶏肉の煮汁などを少しだけ水を入れたボウルに加えるのがおすすめです。チキンスープを作るのが面倒であれば、ごはんのトッピングやおやつに用意する鶏のササミを茹でた際のスープを、キューブ型の氷を作るためのトレイに流し込んで冷凍しておき、必要なときに使用すると便利です。
夏であれば、熱中症予防策にもなる麦茶などを少し混ぜてあげる方法もあります。
愛レトのために、ぜひ今日から小さな工夫を積み重ねて口腔内の環境を整え、健康寿命を延ばしてあげましょう!
こちらの記事も合わせてチェックしてみてくださいね。
臼井京音 プロフィール
ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。
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