【取材】 歯科医院で地域の人々を見守る、ゴールデンの充実ライフ ―特集「ゴルの魅力vsラブの引力」
東京都狛江市の歯科医院に、商店街の人々からも患者さんからも愛されるゴールデン・レトリーバーのココちゃんがいます。今回は、出会う人みんなを笑顔にしてしまうというココちゃんのハッピーライフを紹介します。
チワワの次に、ゴールデン!
小田急線の和泉多摩川駅からすぐの商店街に、2019年現在、一時移転中の相馬歯科医院を構える院長の相馬桂さんは、自宅から朝夕30分ずつ、散歩を兼ねてココちゃんと一緒に通勤しているそうです。
「多摩川沿いで朝と夕方、犬友達にあいさつを交わすのが私とココの日課です。レトリーバー仲間とじゃれ合って遊ぶこともあります。ホントに、以前の愛犬とは、散歩スタイルからして違いますね」と微笑む相馬さん。
最初の愛犬はココちゃんの顔ほどの大きさの、実家にいたチワワだったそうです。
結婚をして実家を離れ、妻の遥菜さんとともに小型犬を探してペットショップを訪れたところ、ゴールデンの子犬たちを見てノックアウトされてしまったとか。
「当時は、私の意識の中に大型犬と暮らすイメージがありませんでした。飼いやすいのは、サイズ的にも小型犬だと決めてつけていたんですよ。でも、ゴールデンのかわいい姿が脳裏に焼きついて離れず、妻と話し合ってゴールデンのブリーダーを探すことにしたんです」。
そして埼玉県のブリーダーから、兄弟姉妹の中で毛色がもっとも薄く、四肢ががっしりと太いパピーを迎え入れました。
「実は、ココは離乳前のまだごく小さい頃、母犬に踏まれてしっぽが直角に曲がってしまったそうなんです。そこも、個性であり愛嬌があるなと感じましたね」と、相馬さん。
保護犬と暮らした経験もある妻の遥菜さんにとっても、念願の大型犬との暮らしが、こうしてスタートしたそうです。
予想外に活発だったパピー時代
ココちゃんがパピーの頃、それほどリードをぎゅっと握らずに相馬さんが河川敷を歩いていたら、リードを振り切ってココちゃんは多摩川まで一直線!
そのまま飛び込んでしばらく泳いでしまうというハプニングを経験したと言います。
「いやぁ~。やっぱりチワワの散歩では起こり得ないことが起きるものですね(笑)。でも、さすがレトリーバー。教えたわけでもないのに、気づいたら泳いでいました。ココは気持ちよさそうでしたが、川から上がってきたら悪臭がして、被毛はドロドロ。飼い主としては微妙な気分になりました」。
この騒動以来、相馬さんはココちゃんには定期的に泳ぐ楽しみを提供してあげようと、心に決めたと言います。
それから、犬用プールに連れて行ったり、奥多摩の清流に出かけたりしているそうです。
ココちゃんが2歳の頃には相馬夫妻の長男が、さらに5歳の頃に次男が誕生したとのこと。
「2歳を過ぎるとココはかなり落ち着いてきました。とはいっても、庭に子供用プールを出すと、いつも真っ先に飛び込むのはココですね」と、相馬さんは笑います。
そんなココちゃんは、息子さんたちに引っ張られても乗っかられても、穏やかな表情でデーンと構えているそうです。
「これこそ、ゴールデンのすばらしいところだとも、妻と話しています」。
歯科医院で過ごす刺激的な日々
ココちゃんは、歯科医院に出勤するとまずはスタッフルームのドッグベッドへ。そこで午前中はのんびり過ごします。
「診察室にココを滞在させることはありません。でも、診察前後にココの顔を見たいという患者さんがいれば、待合室などで触れ合ってもらうこともあります」。
ココちゃんの顔を見ると、老若男女問わず、患者さんはみんな笑顔になると言います。
「セラピードッグというほどではないでしょうが、少しは治療の緊張や痛みを軽減させる役割を果たせていればうれしいですね」と、相馬さん。
昼の休憩タイムに入ると、ココちゃんは待合室へ移動。ガラスドア越しに、商店街を行き交う人々や地域猫などを眺めるのが、ココちゃんの楽しみだとか。
そんなココちゃんの姿を見つけると、手を振ってくれる親子連れや商店街の方も多いと言います。
「歯科医院のスタッフにも、ココはかわいがられています。なのでランチタイムにいつの間にか、スタッフが教えた“ゴロン”というトリックを習得していたんですよ(笑)」。
休憩タイムが終了してスタッフルームに戻そうとすると、ココちゃんは全力で抵抗します。
トリックではなく、ゴロンと横になってしまい、顔には明らかに「まだここにいたいんです」と書いてあるかのよう。(※上の写真)
観念すると、午後の診察時は再びスタッフルームのドッグベッドでゆっくり休みます。
会社帰りの人々の癒しの存在に
診察時間が終了すると、ココちゃんは待合室で相馬さんの帰り支度が整うのを待ちます。
「その間、会社帰りの人が何人も、ガラスドア越しにココに微笑みかけて帰路についていくのを見ますね。ココは、歯科医院の前を通る方々の、1日の疲れをほっと一瞬癒やす存在にもなっているのかもしれません」。
街の人々とすっかり顔なじみになったココちゃんですが、新しい歯科医院が完成すると、また住宅街に近いエリアに戻ることになるそうです。
「といっても、ここからは歩いて10分ほどの場所なので、患者さんはこれまでどおりココの顔を見られると思います。今度の医院は、実は気づけば“ココ仕様”になってしまいました(笑)。診察室は2階なので、1階の待合室にはココのためのスペースも造ったり、院長室もココがくつろげるかを重視したり……」。
そう話す相馬さんをじっと見つめるココちゃんは、もはや院長の貫禄を備えているようにも思えてきます。
現在7歳の、ココちゃん。しばらくは駅前の医院で、そして新しい医院に移っても、いつまでも癒しの“サブ院長”としての役割を果たしながら、相馬さんと楽しく歯科医院ライフを満喫していくことでしょう。
相馬歯科医院
取材・文/臼井京音
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