画家・長友心平さんが描くレトリーバーの絵に、『心が引き付けられる理由』について探る
「ペットの絵と聞いて思い浮かべるのは長友心平さん」と答える方は多いのではないでしょうか。ポップな色使いと独特のタッチは誰が見ても「長友心平さんの絵だ!」とわかる特徴的なもの。レトリーバーの絵もたくさんあります。描かれている子はみんなとても楽しそうで、幸せそう! 長友心平さんはどんな気持ちで絵を描き、絵と向き合い、そして私たちに渡してくれているのでしょう。
目次
様々な画家としての活動
私が長友心平さん(以後心平さんと書かせていただきます)と初めてお会いする機会を得たのはレトリーバーたちが集まる大きなイベントでした。
心平さんは似顔絵を描くお仕事で、私はカメラマンとして参加していました。
すでに人気の画家さんだった心平さんには次から次へと似顔絵を希望する人がいたこともあり、それほどお話ができたわけではありませんでしたが、お会い出来てとてもうれしかったことを覚えています。
そしてその笑顔がとても優しくて話す言葉がとても穏やかであったことも。
すでにご存知の方も多いと思いますが、心平さんはペットの似顔絵だけでなく様々な種類のお仕事をされています。
記憶に新しいのは、NHK 連続テレビ小説「半分、青い。」や、大河ドラマ「西郷どん」での美術協力。
「半分、青い。」ではドラマの中に出てくるオフィスに飾られた4枚の犬の絵を描かれていて、私はその絵が映るたびにひとり興奮していたものです。(そういう方、他にもいますよね?)
その少し前になりますが同じくNHK Eテレ「 趣味どきっ!」では愛犬の似顔絵の講師として出演。
主催・招致共に絵画教室の開催は数知れず。
教える仕事も精力的に行っています。
また、2011年以降アートによる復興事業に参加するなど、幅広く活躍されています。
似顔絵がきかっけでレトリーバーを知る
ペットの似顔絵を描き始めたのは15年ほど前のこと。
「その頃埼玉のペットサロンに呼ばれて似顔絵を描いていたことがありました。セルフシャンプーやトリミングをしてくれた人に似顔絵プレゼントという企画です。ひたすらバックヤードで描いていましたね」。(心平さん)
今聞くとそんな豪華プレゼントがあるお店があったなんて! と知らずに行けなかった自分を残念に思ってしまいますが、心平さんにもそんな時代があったということなのでしょう。
そしてその時に出会ったゴールデンレトリーバーが心平さんの「レトリーバー」に対する印象を形作ったそうです。
お店にはゴールデンのお客様がとても多く、その中で何度もご家族で来てくださる多頭飼いのお客様がいらっしゃいました。
ある日、そのご家庭に招かれる機会があり行ってみると…。
「お店に来ている時と自宅ではその子たちの雰囲気が大きく違っていることを感じました。大型犬が家の中にいるという存在感。家族の一員であって、自分が昔知っていた外で飼う番犬とは全く別。大きくて優しくて…感動しました」。(心平さん)
ゴールデンたちの姿を心平さんは「大きな妖精」と表現してくれました。
そして、「ラブもそうだけれど、レトリーバーの存在感は特別なものがあると思う」とも。
まさにレトラバーたちが思っている通りのレト像ではないでしょうか。
【 天国のクジラ 】 がもたらしてくれるもの
長友さんがライフワークにしていることのひとつに「天国のクジラ」というプロジェクトがあります。
旅立ってしまった愛犬たち。
その子たちをクジラの背中に乗せて旅をさせてくれるのです。
クジラに乗船したペットたちが思い思いに過ごしている様子を見ていると、悲しみも癒されていくようです。
~長友心平 公式サイトより抜粋~
「天国のクジラ」は、天国に旅立った大切な家族が、
大きなクジラに乗って、世界各地を旅行している絵です。
今まで、雲の上、天の川、三陸海岸、金色の空、
岩手の上空を旅してきました。
クジラには、たくさんの仲間が載っています。
犬も猫も、鳥もハムスターも、子供も大人も、
みんなと出会って、いろんなご縁を感じながら、
楽しく賑やかに旅をしています。
このプロジェクトは2014年に始まり、すでに5頭のクジラがたくさんの人(人もいます)やペットを乗せて旅をしています。
ちなみに私も先代のゴールデンレトリーバーRubyを乗船させてもらっています。
三脚を立ててカメラを覗き込むRuby。
その絵を見た時、「あぁ、楽しそうに旅をしているのね。良かった」と心の底から思えました。
天国のクジラは、愛するものを失った悲しみを和らげてくれます。
※乗船員の募集は不定期ですので、興味のある方は見逃さないよう心平さんのサイトをチェックしていてくださいね。
癒される私たち、描く側の気持ち
天国のクジラに乗船している子たちの様子
天国のクジラはそのように飼い主にとっては慰めでもあり、失ってしまった我が子の今の理想の姿です。
色々な表情やしぐさの犬たち、幸せそうな我が子の姿を絵から得た私たち飼い主は「良かった」と安堵することができるのです。
「天国のクジラは“こうあってほしい”というような祈りや癒し、浄化されていくようなものかもしれません」。(心平さん)
それは飼い主にとってのゴールもしくは正解なのかとも思えます。
心平さんはクジラに乗船する子たちを直感的に描いていきます。
頭で考えて描くというより「降りてくる」という感覚なのかもしれません。
ただ、感じたままに描いていく。
「自分が何で絵を描いているのかという原点に戻る、答えがあの行為(作業)の中にある気がしています」。(心平さん)
常に飼い主の気持ちや犬たちの気持ち、そして画家としての思想と向き合いながら描き続ける。
だからこそ私たちは天国のクジラに希望を見出すのかもしれません。
似顔絵も進化し続ける
「似顔絵の場合は色んな引き出しを持つようにしています。ブリブリに盛っていくとか、クラシックな感じとか、最近では余白がある感じ、自分が好きだと思うようなものなど色々ですね」。(心平さん)
そうして進化し続けている似顔絵ですが、描き方(向かい合い方)も変化しています。
以前は「似せて描く」「お客様から感じたものを通して描く」という描き方が多かったそうですが、今はそれよりものを自分の中、胸や腹の中にあるものを描くようになってきたとのこと。
「最近は考えなく楽に描いている、という感覚になっています」。(心平さん)
似せて描くということにこだわるのではなく、感じたまま、感覚で描くようになった似顔絵。
ここで勘違いしてはいけないのは、楽に描いているというのは手を抜いているというわけではないということ。
「集中するし、結果に対する不安というのはなくしてはいけないものですが、自分のこだわりや欲、肩に力が入っていたものがなくなったように思います」。(心平さん)
また、長い時間をかけて描き込むものと10分くらいの短い時間で描くもの、そこへの意識も変わったそうです。
「今までは長い時間かけて一生懸命向き合わないといけないと思っていたので、短い時間で描くものにちょっと苦手意識のようなものや許されないような気持ちがありました。でもそこも向き合い方が変わって、それが例えば1分であったとしてもそこで感じたものを描けばいいんだと思うようになりました」。
「そもそも自分のために書いている絵は感覚だけで描いていて、自分は子供のころからそうしてきたんです」。(心平さん)
心平さんの絵が支持されている理由
心平さんの描く絵はとにかくかわいいです。
ラブラドールもゴールデンもとにかくかわいい!
ですがそういう表面的なことだけではなく、画家としての真摯な想いや優しさがあるからこそ私たちを惹きつける絵になっているのだということがよくわかりました。
思いがこもったものは必ず伝わります。
これからも心平さんの絵は犬を愛する、レトリーバーを愛する私たちを幸せにし続けてくれることでしょう。
画家 長友心平(ながともしんぺい)
プロフィール
1977年鹿児島生まれ。
20歳の時に自転車で日本横断スケッチの旅。
大学卒業後、吉祥寺の井の頭公園にて似顔絵を描き始める
その後、ペット関連会社を経てフリー。
NHK「趣味どきっ!」にて絵画教室の講師(ゲスト具志堅用高・佐藤藍子)
2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」朝の連続テレビ小説「半分、青い。」にて美術担当。
2011年以降、アートによる復興事業に参加。
岩手県平泉市の世界遺産・毛越寺での屏風画など仏画制作にも取り組む。
Roco
『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。
撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。
フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。
子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」
Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター
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