2020年7月18日4,004 ビュー View

大切なレトリーバーの為に。『動物看護師』という仕事のことを知り、愛レトの健康を守ろう!

動物病院には獣医さんの他にも「動物看護師」という肩書の方がいて、動物のお世話や受付などをしてくれています。とても身近な存在ですが、細かいお仕事の内容などについては意外と知らないものです。そこで今回は第一線で活躍している動物看護師の新谷政人(ニイヤマサト)さんに仕事内容や思いをお伺いしました。

動物看護師という仕事を選んだ理由と、思いがけない壁

 新谷さんは動物看護師さんとしてはまだ珍しい存在である男性の看護師さん。進路を迷っていた高校生の時にこの道に入ることを決めたそうです。

 

「元々動物が好きで動物の命に関わる仕事がしたいと思っていたのですが、獣医師は条件的に厳しいと感じていました。そんなある日母が“ペット関連の職業”が出ている本を買ってきてくれたのです」。(新谷さん)

愛情溢れる眼差し
長身や体格を生かした力を使わない保定(安全に処置を行うためのその子に合った抑え方)を模索している (提供画像)

 

その本をパラパラとめくっていて目に飛び込んだのが「動物看護師」という言葉。

 

早速専門学校探しを始めたものの、思いがけない壁「動物看護師養成コースは男性の募集がない!」にぶつかりました。

 

今では男性・女性の区別はないそうですが、当時(10年以上前)は「女性の職業」という位置付けだったのです。

 

それでも諦めずに色々と探してようやく見つけたところに入学し、2年間学んで就職活動を始めたのですが、またもや壁が!

 

「男性の動物看護師は募集や採用していないと、電話だけで断られたこともありました。採用していないから実習もさせてもらえないんです。見学・実習・就職、という当たり前のコースに乗れないので、凹みました」。(新谷さん)

 

それでも諦めなかったことが現在に繋がっています。

 

動物看護師さんの日常的な仕事とは

新谷さんが勤務している病院は一次診療および眼科の二次診療(完全予約制)の施設です。

 

一次診療に関しては、私たちが普段お世話になっている「かかりつけの病院」、人間で言うと地域の診療所(総合診療科)に当たる一番身近な病院と考えるとわかりやすいと思います。

 

そこで動物看護師さんはどんな役割を果たしているのでしょうか。

 

「動物病院の中って診察室以外はなかなか入ってみることはないと思うのですが、中(奥)では色々なことが行われています。例えば医療機器を使って検査をする、ということも動物看護師がしています。操作や検査のためには専門的な知識が必要となります」。(新谷さん)

血液検査後に顕微鏡で確認しているところ (提供画像)

 

「検査をしたらその結果を獣医師に報告、結果によって次に必要なことの準備をします。また、手術があれば手術前のオペ室や器具の準備、患畜の毛刈りや消毒を行う、ということも担当します」。(新谷さん)

 

必要が生じたときにその薬がない、などということがないように在庫管理をすることも重要な仕事です。

 

カルテの整理なども動物看護師さんがやることが多いそうです。

動物看護師も預かっている子の聴診や状態を確認して、変化があれば獣医師に報告する (提供画像)

 

「動物病院って午前の診療と午後の診療の間が長いことが多いですよね。手術の時もありますが、休み時間にそういうことをやっているんですよ。休憩が決して長いわけでなく(笑)」。(新谷さん)

 

診断および治療をするのは獣医さんですが、治療をスムーズに行えるようにするための環境づくりをしているのが動物看護師さんなのです。

 

「獣医師は治療することがメインの仕事です。そして動物看護師は獣医療を全力でサポートするのが仕事です」。(新谷さん)

 

動物看護師だからわかることがある

「入院している子がいれば、その子の状態の確認をします。食事はとれているか、おしっこうんちはでているか、点滴の線が絡まったりしていないかなども注意して看ています」。(新谷さん)

 

そしてその「看る」には経験を積んだ動物看護師だからこそ、というところがあるそうです。

 

「例えば数時間後に看たときにちょっとしんどそうだとか、目を見たときに感じる違和感とか、そういうことは経験的にわかります」。(新谷さん)

物を言わない動物の顔や毛づや等で変化に気づく (提供画像)

 

もちろん獣医師さんにもそのような目や感覚は備わっているのでしょう。

 

ですが違う立場で看てくれる人がいるということはやはり大きな安心に繋がります。

 

「なんか変、という感覚。1年後にワクチンに来た子に“以前より元気がない”“毛艶が悪い”等の気づきがあることもあります。そしてそのような気づきを獣医師に報告して、治療に繋がっていくケースも多いです。獣医師は治療で忙しいので動物看護師が細かい違いに気がつくことは大切だと思います」。(新谷さん)

 

飼い主さんとのコミュニケーションも大切な役割

 動物病院には色々な症状の子が来ており、飼い主さんの心境も様々です。大きな不安を抱えている方もいるでしょう。

 

「例えば、吐いてしまったからその原因をネットで調べて不安になる。獣医師に診てもらってちょっと安心する。けれどまだ不安は全て拭えたわけではない。そういう人の話を聞いてあげたり、相談に乗ってあげたり、わかりやすく話してあげる必要性を感じています」。(新谷さん)

動物病院を嫌いにならないでもらえるように治療が終わったら誉める (提供画像)

 

先生の言ったことを全部理解するのは難しい。でもその場ではあれこれ聞けなくてネットで調べてどんどん不安になっていく…。

 

たくさんの人が経験してきたことかもしれません。

 

「治療方法や今後の方針を提供するのが獣医師の仕事ですが、最終的にどうするかは飼い主さんが決断することになります。飼い主さんの不安な気持ちに寄り添いパイプ役をするのが動物看護師だと思っています。“先生のおっしゃったここがちょっとわからなかったんです”ということを気軽に聞ける相手であると良いですよね」。(新谷さん)

 

飼い主さんとコミュニケーションを取り、少しでも不安をなくすことができたらと考えて、病院の雰囲気作りにも気を使っています。

 

「病院にいるときは1〜2トーン声を高くしていますよ(笑)。緊張している飼い主さんも多いと思うので、気持ちに寄り添えるように、その場の空気を読みながら対応しています」。(新谷さん)

 

動物看護師さんにもっと相談しよう

動物看護師さんは専門的な知識を持ってお仕事をしています。しかし、時おり耳にするのが「看護師さんに聞いても結局獣医さんに代わるので悪いかなと思ってしまう」というお話。

 

でもこれには理由があるのです。

 

「動物看護師は自分だけで判断してはいけない職業で、獣医師への相談と報告が義務になっています。看護師に聞いて獣医師が出てくる、というのは当たり前のことですから気にしないで大丈夫です。(ただし動物看護師さんによっては、聞かれると困ってしまう人もいるので優しく見守ってほしいです)」。(新谷さん)

 

参考:獣医師法(飼育動物診療業務の制限)

第17条 獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。

 

「しつけのことや日々の小さな不安はぜひ聞いて欲しいと思います。日常的なことで構いません。動物看護師は必ず獣医師に報告・相談しますが、結果としてその子の健康維持に役立つはずです」。(新谷さん)

爪切り特に前(稀に後ろも)狼爪(親指)が散歩等では削れず伸びているのでカットすることも大切とのこと(提供画像)

 

獣医さんや動物看護師さんに聞かずにネットで調べてしまう飼い主さんも多いと思いますが、その点についてはどうなのでしょう。

 

「ネットに走ってしまう心理にしてしまったという反省があります。診療時に100%で対応しているつもりだけれど、飼い主さんとしてはそれでは足りなかったからネット、となるわけで。限られた時間でどれだけできるかというのは悩みです。ネットで調べることは悪いことではないですし、調べたことについて聞かれるのも嫌ではないので、不安や困ったときには聞いて(相談して)欲しいですね」。(新谷さん)

 

動物看護師さんは獣医さんと動物、飼い主を繋いでくれる大切な人

お話を伺って改めて動物看護師さんの担うものの大きさを感じました。その動物看護師さんですが、現時点では国が認定する国家資格ではありません。

 

専門学校や大学などで一定のカリキュラムをクリアし、「動物看護師統一認定機構」が実施している試験に合格した人を「認定動物看護師」と呼んでいます。

参考:動物看護師養成モデルコアカリキュラム - 動物看護師統一認定機構

 

病院に「認定動物看護師登録証」というのが貼ってある場合もあるので、見てみましょう!

 

ただし、令和元年6月に愛玩動物看護師法が公布され、「愛玩動物看護師」という国家資格が制定されたことにより、今後は国家資格となることが決まっています。

参考:農林水産省

 

国が認める職業となる動物看護師さんはますます活躍の場が広がることでしょう。

 

もっと頼りにして、愛レトの健康をみんなで守りましょう!

 

新谷 政人(ニイヤ マサト)

学校法人 シモゾノ学園 大宮国際動物専門学校卒業

くみ動物病院 動物看護師 主任

認定動物看護師

RECOVER BLS/ALS認定

災害支援動物危機管理士

 

動物看護師という職を通してペットや飼い主および社会貢献を目的に活動中

 

 

執筆者:Roco

『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。

撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。

フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。

子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」

 

 Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター

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