2021年4月5日3,603 ビュー View

【取材】ドッグダンスで“マジメに”活躍する黒ラブミックス―真壁律江「ゴルの魅力VSラブの引力」

ドッグトレーナーの真壁律江さんは、ドッグダンスのパートナーとして2代目となる黒ラブミックスをひょんなことから迎えました。真壁さんの最初の愛犬のイタリアン・グレーハウンドのルーチェくんとは性格がかなり違うという、黒ラブミックスの保護犬ラーラちゃんとのエピソードや、レトリーバーに向いているというドッグダンスの魅力を、たっぷり語ってもらいました。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

黒ラブミックスが偶然にやってきた!

「黒ラブミックスのラーラは、さすがラブラドール・レトリーバーの血が入っているだけあって、とにかくマジメにトレーニングに取り組むんですよね。

 

そして、トリックなどを着々と覚えていきます。

 

さらに、私の話をよ~く聞いてくれるんです。何を自分に求められているかも、素直に理解します。

 

これって、ラーラを迎える前にずっと一緒に過ごしてきた、イタリアン・グレーハウンドのルーチェくんにはなかった、まさにレトリーバー! っていう気質だといつも感心しています」

 

ドッグダンス競技に取り組むドッグトレーナーの真壁律江さんは、こう語ります。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

レトリーバー系はダイナミックな技でもドッグダンスの観客の目をくぎ付けにします。

 

真壁さんとラーラちゃんとの出会いは、2012年。

 

東京都練馬区でペットスタジオHocciを運営する真壁さんは、スクール生のワンちゃんたちの犬慣れのために、黒い大きな犬がスタッフ犬にいたら良いのではないかと考えていました。

 

「黒い大きな犬は、黒いかたまりに目がついているので、他の犬から警戒されることが多いんですよ。特に小型犬は、子犬期から大きい犬に慣らす事で警戒心が軽減されますからね」

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

真壁さんが経営するドッグスクールでのワンシーン

 

そんなある日、知人が迎えた保護犬のお腹に保護時からいて誕生したという黒ラブミックスを、真壁さんは譲り受けることになりました。

 

「パピー期から通う、犬の保育園や犬の幼稚園的なドッグスクールなので、正しいボディランゲージを他の犬に伝えてもらったり、犬慣れの役割を担ってもらおうと迎えた黒い大きな犬ですから、まずはラーラの社会化に力を注ぎました」と、真壁さんは振り返ります。

 

ラーラちゃんには一般的なラブラドールよりも警戒心が高いところもあったので、生後5ヵ月頃から1歳にかけて、仕事先で会う男性におやつをあげてもらったりもしたとか。

 

「おかげで、ラブ本来の陽気さも引き出せて、気持ちのキャパを広げてあげられたのではないかと思っています」

 

マジメなラブ系はドッグダンスの才能満点!?

真壁さんの最初の愛犬であるイタグレのルーチェくんは、迎える前からドッグダンスに取り組む運命でした。

 

「世界最大級のドッグショーであるイギリスのクラフツ(クラフト展)の動画を、16年ほど前に見せてもらったことがあったんです。

 

その時に受けた衝撃と言ったら(笑)。

 

『うわ~、犬がバックしながらステップ踏んでる!』とか『えっ、こんな動きも犬はできるんだ』と目が釘付けで、すっかりドッグダンスに魅せられてしまいました」

 

こうして、真壁さんは愛犬を迎えたら一緒にドッグダンスをしようと心に決めたのです。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

真壁さんの愛犬であるイタグレのルーチェくん、ラーラちゃん、ボーダー・コリーのレイナちゃん

 

複数の種目をグループで行う“K9ゲームの一種目である犬とワルツの練習から、真壁さんはルーチェくんとスタートしました。

 

「イタグレは、主に視力を活かして狩猟を行うサイトハウンドの一種です。なので、ダンス中に気になるものが視界に入ると、集中力が切れてパッーっと走っていってしまったりと、かなり苦労しましたね」

 

それに比べて、トレーニングにコツコツと意欲的に取り組み、様々なトリックを着々と覚えるラーラちゃんに、真壁さんはドッグダンスの適正を見い出しました。

 

「もちろん、サイトハウンド系であれば視界をコントロールしたり、嗅覚で仕事をするセントハウンド系であれば地面から顔を遠ざけて上を向かせるなど、ドッグダンスのトレーニングでは犬種ごとの特性を考慮しつつ、人に集中させる工夫をしています。

 

けれど、ラーラは私にすぐ集中するし陽気でマジメだし、生まれながらにしてドッグダンス向きの性質だったのでしょうね」

 

こうして、最初はドッグダンスのパートナーではなく、スクール生のために迎えられたラーラちゃんでしたが、1歳を過ぎた頃からは真壁さんとドッグダンスの練習に励むようになりました。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

ドッグダンスのトレーニング風景。ラーラちゃんは小物を使ったトリックが得意

 

ドッグダンスの世界大会に出場

真壁さんとラーラちゃんのドッグダンスデビューは、ラーラちゃんが1歳半の時。

 

K9ゲーム大会の昼休みに、披露したんです。ラーラは警戒心がやや高いので、大勢の人に見られて緊張していました。

 

そんなラーラに必要なのは、事前に会場を見せて安心させておくことと、音楽がかかるとすぐにラーラに声をかけて気持ちを持ち上げること。

 

デビューの日は楽しそうに演じてくれてホッとしました」

 

その後、「あ~あ、今日はラーラは気持ちがドヨンドヨンだったなぁ……」という日もあったと真壁さんは振り返りますが、場数を踏むにつれてラーラちゃんとの息が合っていったのは想像にかたくありません。

 

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

人間と犬とが半々の割合で目立つバランスが大切

ラーラちゃんが23ヵ月の時、真壁さんはドイツで開催されたドッグダンス大会OEC2014(オープンヨーロッパチャンピオンシップ・シュッツガルト2014)に出場しました。

 

「フリースタイル種目では49組中39位、HTM(ヒールワーク・トゥ・ミュージック)種目では39組中29位の成績でした。

 

無謀にも2種目にエントリーしてしまいましたが、ラーラは、しっかり演技してくれました。

 

『ラーラ、すごい、すごい! 楽しかったね!』と、競技後に興奮しながら語りかけたのを思い出します(笑)」

 

その後も、ラーラちゃんは国内のドッグダンスの競技会で優秀な成績を収め続ています。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

ドイツのドッグダンス競技会での思い出の一コマ

 

58個の合図を理解するラーラちゃん

真壁さんは202011月の競技会で、ラーラちゃんに58個のコマンド(合図)を使っていたと語ります。

 

「ラーラって、あらためてスゴイなぁと感心してしまいます(笑)。

 

ドッグダンスでは、犬と背中合わせで逆方向に前進したり、遠隔で指示を出したりと、複雑な動きが要求されます。

 

さらには4分間、ご褒美のトリーツなしでたくさんのコマンドを犬にこなしてもらわなければなりません。

 

次の行動が、その時に行っている行動のご褒美になるように、トレーニングするんです」

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

ステッキと帽子を使ったトリックを披露

 

また、自分たちの出番がまわってくるまでは、犬たちはクレートで待機する必要もあります。もちろん、会場で出会うほかの犬に吠えたするのもマナー違反。競技中に吠えると、減点されます。

 

「ダンスだけができればいいというわけでも、ないんですよね。なかなか、奥が深いんですよ!」

 

出番前後も含めて、ドッグダンスは愛犬との生活で日常的にも役立つトレーニング項目が盛りだくさん。

 

さらに、飼い主さんとの信頼関係を深められるドッグダンスを、真壁さんはもっと日本に広めつつ、日本のドッグダンス競技者のレベルを世界クラスに引き上げていきたいとも意気込んでいます。

 

そこで、202141011日には、「Japan Open Dogdance Competition 」(山梨県山中湖村)も主催。

 

そのほか、自身が運営するペットスタジオHocciなどでも、レッスンを行っています。

ラブラドールレトリーバー,ドッグダンス

ラーラちゃんとレイナちゃんが、2021年現在は真壁さんの大切なパートナー

 

「マジメで飼い主さんとの協働作業が大好きなレトリーバー系は、とにかくドッグダンスには向いていて、私のまわりでざっと数えただけでも10頭のラブやゴールデンがドッグダンスに取り組んでいますね」

 

笑顔でそう語る真壁さんと、その足元で真壁さんに熱い視線を送り続けるラーラちゃんは、現在は競技会からは一線を引いていますが、トリックレッスンやデモンストレーションなどでも活躍する姿から、今後も目が離せません。

 

ドッグダンスのレッスンなどをご希望の方は以下まで

ペットスタジオHocci

 

*ドッグダンス競技会のページ
Japan Open Dogdance Competition

 

本特集のドッグダンスの写真提供:(有)ケイワークス、東京フライングドッグス

 

 

執筆者:臼井京音

ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。

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