17歳の湘南ボーイ・ペン。丈夫な体を育んだのは「2歳から始めた手作りごはんと毎日の散歩」 #13ペン
平均寿命が10〜12歳と言われる大型犬のレトリーバーたち。しかしそんな平均を物ともせず、年齢を重ねても元気なレトリーバーを憧れと敬意を込めて“レジェンドレトリーバー”と呼んでいるRetriever life。その元気の秘訣をオーナーさんに伺うのが、特集『レジェンドレトリバーの肖像』です。今回は17歳というスーパーレジェンドのペンくんが登場。若い頃、アレルギー皮膚炎を薬に頼ることなく解決したという“手作りごはん”が、その長寿に大きく影響しているようです。
目次
ペンくんのプロフィール
年齢&性別
17歳の男の子(2005年5月30日生まれ)
体重
23Kg
大好きなこと
食べること。サツマイモが好物で、ふかしてる間から鍋の下で待っている。
既往歴
・2歳で小麦アレルギーが判明。
・6歳のころ右耳に血液がたまる耳血腫に。以来、何度か血を抜く処置を。
・8歳のころ、極度の貧血で入院。3日間の入院予定が、吠えるので1日で退院。
・14歳で、右目に網様体腺腫(眼球のがん)が見つかる。1年後に右眼球を摘出。
小麦アレルギーがきっかけで手作りごはんに
先日めでたく17歳のお誕生日を迎えた、チョコラブのペンくんは、お散歩が好きな男の子。オーナーの大藏布子さんは、ペンくんが小さいころから、手作りごはんで育ててきました。
きっかけは2歳のころ、背中やお尻の一部の毛が抜けたこと。
かかりつけ医では原因がわからずステロイドを投薬をしましたが、過剰な食欲やおもらしなどの副作用があり、皮膚科の専門医がいる病院へ。
その病院ではステロイドを中断、脱毛した部分を毎日お湯で洗ってくださいという指示が。すると、薬に頼ることなくみるみる回復!
このときやったアレルギー検査で、小麦にアレルギー反応が出たため、食生活を見直し。獣医師の指導のもと、手作りごはんにスイッチしたのです。
「普段は、豚肉と小松菜を炒めて、かぼちゃはレンジでチン、最後にターメリックをふりかけたものが定番。これにときどき豚レバーを追加していました。
すると、アレルギーによる目の周りや肉球の赤みが改善したんです」(大藏さん=以下「」内同)。
以来、ずっと手作りごはんを続けていましたが、老化とともに消化機能の衰えや栄養の吸収が低下することを考慮し、12歳からは小麦不使用のシニア向けドライフードに切り替えました。
「食べる事が大好きなのでフードを変えても喜んで食べていますが、やはり手作りの方がガッツき具合いが激しいです(笑)」。
瞳の中に小さなピンク色のものを発見
手作りごはんのおかげか、長い間、病気や怪我もなく、元気いっぱいだったペンくん。しかし14歳のある日、ペンくんの瞳の中にピンク色をした肉片のようなものを発見。
「米粒の半分ほどの、ごく小さいものでしたが、嫌な予感がしてすぐに病院へ行ったんです。
そしたら“腫瘍かもしれない。よく気付いたね!”と先生も驚いていました」。
高齢だったため、検査はせずにしばらく様子を見ることに。すると1年経ったころ、大きくなった腫瘍で目が開かなくなるほどに。
「辛そうなペンを見て、先生と相談して眼球の摘出を決意したんです。
「痛いままだとかわいそうだし、“目玉のがんは転移しないから、取っちゃえば大丈夫!”と先生の言葉に背中を押され、お任せすることにしました」。
14歳での全身麻酔はリスクが高いので、術前の検査はとても念入りに行ったそうです。
「目を取るなんて絶対嫌だと思っていたけど、ペンが“痛いよ”と訴えるような表情をしているので、お互いに辛くて」。
幸い手術は無事に終了。術後の経過も良く、麻酔が切れて痛みがあるはずなのに、食欲は衰えなかったそう。
「病院でしっかりおやつとごはんを食べてから、帰ってきましたね(笑)」。
このケースのように、小さな異変に気付けるのは、毎日スキンシップを欠かさないオーナーさんだからこそ。日頃から見て触って、健康チェックしてあげるのも大事ですね。
ソファやベッドには上らせず、床での生活を徹底
大藏さんは、ペンくんがパピーのころから、「もしシニアになったら……」と先を見据えて暮らしていたそうです。
「年を取って足腰が弱くなったら、ソファやベッドに自分で上れなくなるので、最初から上らせず、床で過ごすことにこだわりました。
友人宅の、いつもソファが定位置だったワンコは、自力で上れなくなったときに鳴き続けていたそうです。
私がいつもそばにいられれば手伝ってあげられるけど、お留守番のときにひとりで鳴いていたらかわいそうですよね。なので、今となってはソファ禁止でしつけてきたのが良かったと思っています」。
年齢を重ねるにつれて徐々に足腰も衰え、お散歩中に転んだり、起き上がるのに時間がかかることも増えました。
「炎症が起きているのか、前足を地面につけないことが月に1回くらいあるんです。
夜も寝返りをしようとして転んでしまい、ひとりでもがいていることがあるので、ひと晩に1回は、私が体勢を整えるのを手伝っています。大きくて重たいから大変です(笑)」。
そう言いながらも、ペンくんをかいがいしく世話をするのが嬉しそうな大藏さんでした。
今、何をしてあげられるか?を考えた
ペンくんが若いころと同じように歩けなくなっていくのを目の当たりにした時は、ショックと困惑があったそうです。
大藏さんにとって、犬の介護は経験がなく未知の世界。「ひとりでやっていけるのか? 実家に帰ろうか?」と頭をよぎったそう。
そんな悩みを獣医師さんに相談すると、「そうやって何が一番いい方法かを考えてあげるのも楽しいですよね」と、大藏さんに寄り添う言葉をかけてもらったのだそう。
その言葉が心にしみ、大藏さんはより一層“ペンくんに何をしてあげられるのか”を懸命に考えたそうです。
そのひとつがマッサージ。
「鍼灸師の友人にマッサージをしてもらうと、気持ちよさそうにするんです。普段は自分から近寄って行かないのに、その子が来ると“マッサージして!”とすり寄って行ったり(笑)。
私もマッサージ方法を教わって、背中やお尻周り、前足をもんであげたり、背中にお灸をしてあげたりしています。最後まで、自分の足で歩いてほしいですからね」。
ほかにも、ときどき手作りごはんにしたり、おしっこの出が悪いとカリカリにスープを混ぜたりと工夫しているそう。
「お散歩で後ろ足を引きずるときがあるから、後ろ足を吊るような補助具を試してみようとか、お誕生日にいただいたカートに乗せれば、海まで行かれるかなぁとか。
ペンの介護について考えることを、最近ちょっとずつ楽しめるようになってきました。
きっと余裕と覚悟が、できたのかもしれないですね(笑)」。
手作りごはんも深夜のお散歩も「愛情と責任感」
ペンくんの長寿の秘訣を伺うと、「やっぱり愛情かなぁ」と大藏さん。
「長年にわたる手作りごはんが良かったと思いますが、毎日作るのは大変なので、やっぱり愛情がなかったら続かないですよね」。
また、朝は30分、夜は1時間~1時間30分のお散歩も、毎日欠かしたことがありません。
「夏は朝5時ごろ、そして真夜中に。仕事で帰りが遅くなったり、飲んで帰って12時過ぎた日でも、そこから1時間くらいは行ってましたね。
犬は、お散歩とごはんしか楽しみがないので、それだけは欠かさないようにと思って。愛情と責任感です」。
ペンくんを迎えたころは、都内の実家で家族と暮らしていたそうですが、当時からお世話は全てひとりで担っていたんだそう。
「両親はペンを甘やかすだけ。“年を取ったら、私が面倒を見るんだからやめて!”と思い、厳しくしつけました。
ペンが13歳のときに、仕事の都合で湘南エリアへ引越してきて、今はひとりで介護をしているので、言葉通りになったなぁと(笑)」。
高齢での環境の変化は、体調を崩したりしないかと心配もありました。
「だけど引っ越してきてよかったかなぁと、今は思っています。都内だと大型犬が遊べる場所は限られていましたが、海のそばだとペンがのびのびとしているので」。
近所にいる、お互いにサポートし合う犬友さんの存在も大きいようです。
「仕事でどうしても帰れないときや、具合が悪そうなときは見に行ってもらったり。助けられていますね」。
17歳のお誕生日は泊りがけでお祝い!
今の大藏さんの願いは、「元気に過ごしてほしい」ということだけ。
「元気だったら、それでいいと思っています。17歳だから、もし病気が見つかっても手術はできないだろうし、なるべく自然な形で逝かせてあげたいですね。私は、そのお手伝いをしてあげるだけです」。
お誕生日の直前には箱根の温泉へ、誕生日当日は、友人と貸別荘にお泊まりと、アクティブに過ごしました。
「思い切って行ってよかったです。ペンも楽しそうだったし、みんなにいい顔してるねって言われました。
長時間の車移動で疲れたかな?と心配していたら、その後、調子が良いんです。お散歩でも足がよく上がり、ルンルンと歩いてて。
ワンちゃんにもよると思いますが、違う環境を経験したり、いろんな人に会ったことが、いい刺激になったのかも」。
「介護が初めてで、どうしたらいいのかわからないと戸惑っている方のお役に少しでも立てたら」と、ペンくんとの暮らしについてお話してくださった大藏さん。
あふれる愛情と同じくらい、大きな責任感を持つこと。そしてひとりでも気持ちの余裕と覚悟を持つことが、シニア犬との暮らしをより楽しく豊かにしてくれるのですね。
取材・文/都丸優子
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