夜間の留守番時に照明は不要。犬は暗くても見えるのです
秋の夜長と言われる時期から、日照時間が短い冬場。留守番をさせている愛レトが夜間に照明がついていないと見えづらくてかわいそうだからと、電灯のスイッチをONにして外出している飼い主さんもいるかと思います。でも、きっと「暗くても見えるんだけどなぁ」というのがほとんどのレトの本音。犬の目のしくみを知るとともに、夜間の照明環境について今一度考えてみましょう。
帰宅が日没後になるときは電灯をつけている?
愛レトを留守番させているとき、暗くなるとトイレに行くときや水を飲むときに困るのではないかと心配して、電灯をつけて出かける飼い主さんがいるかもしれません。
もちろん、後述のとおり、電灯をつけたほうがよいケースもあります。けれども、ほとんどのケースではその心配は不要です。なぜなら、犬の目のしくみは人間と違うから。
以前の記事で、犬は色を見分ける感度は人間ほど優れていないことを紹介しました。その代わり、犬は明暗を感知する能力は人間よりもずっと優れています。
夜行性の動物が多いことは周知の事実。では犬はどうかというと、ざっくりと分ければ夜行性に入りますが、厳密に言えば日が暮れかける夕方に活性が高くなると考えられています。
夕方や夜間の狩りにおいて、色を見分けられることはあまり意味がありません。犬が獲物を狩って生きていくためには、光の感度が高いほうがずっと重要なのです。
犬の目が緑色に光るのはなぜか
夜間にカメラのフラッシュをたいて写真を撮影したり、車のヘッドライトなどが当たると、愛レトの目が緑色に光っているのに気づいた経験はありませんか?
これは、犬の目の網膜の後ろにタペタムという膜があるから。薄い板のようなタペタムは反射鏡の役割を果たしていて、網膜で光を受け取る細胞を刺激します。そのおかげで、犬は光の量を最大限にとらえることができるのです。
光を受け取る細胞には、明暗を感知する桿状体と、色を認識する錐状体の2種類の視細胞があります。人間の場合は錐状体と桿状体の比率がおよそ1:2であるのに対して、犬はおよそ1:17だと考えられています。
つまり、光の明るさを高めるタペタムと多数の桿状体細胞を備えているおかげで、犬は暗いところでも視界がきくのです。
人間が物を見るのに必要とされる光の量の4分の1~3分の1ほどしか、犬には必要ないのだとか。ちなみに猫は、犬よりもさらに感度の高いタペタムを持っているため、人間に必要な光の量の7分の1ほどで物が見分けられるそうです。
タペタムがあると、物が不鮮明に見える
タペタムから反射される光は、入ってきた方向から少しずれてしまうようです。
そのため、犬の網膜の上に像が結ばれる際に、シャープさに欠ける像を描いてしまうのだとか。これが、実はタペタムを持ったことのデメリットでもあると言えるでしょう。
とはいっても、イヌ科の動物が狩りを行ううえでは、ものが鮮明に見えることよりも薄暗いところでよく見えるほうが重要なので、当の犬たちは気にしていないのでしょうが。
電灯をつけて留守番をさせたほうがいいケース
さて、ここまでの説明で、暗いところでも物がちゃんと見えるレトたちには、留守番中に夜になることがあっても電灯をつけておく必要がないとおわかりいただけたでしょう。
けれども、目の病気が原因で暗いところが見えにくくなるケースもあります。
ひとつは、白内障。加齢によって白内障になることがあるので、シニアレトがいる場合は、夜間の留守番時に電灯をつけたほうがよいかもしれません。
もうひとつは、進行性網膜萎縮症(PRA)という遺伝性の眼疾患。いずれは失明してしまいますが、初期の症状は暗い場所で見えにくくなる「夜盲症」です。
もし愛レトに、暗いところで家具にぶつかったりするといった様子が見られたら、PRAの初期症状かもしれないので早めに獣医師に診てもらうようにしてください。PRAに罹患している愛レトには、夜間でも明るくして過ごさせてあげましょう。
白内障やPRAを患っていて、飼い主さんの就寝時に室内トイレに行ったり水を飲みに行くレトと暮らしている場合に、ずっと電灯をつけっぱなしにするのは気になるかと思います。そのような場合、人感センサーで点灯するライトなどを設置するのもひとつの方法です。
あまり多くはありませんが、暗くなるとさびしさを感じ、飼い主さんを呼ぶように吠え始めるレトもいるようです。さびしがりやのレトには、タイマーなどで電灯がつくようにしてあげるのもよいでしょう。
愛犬と暮らしているかいないかにかかわらず、日が暮れると電灯をタイマーでオンにするのは防犯対策に役立つと言われています。
様々なことを考慮しつつ、愛レトと暮らすうえでのベストな照明環境を整えてみてくださいね!
こちらの記事も合わせてチェックしてみてくださいね。
臼井京音 プロフィール
ドッグライター・写真家として約20年間、世界の犬事情を取材。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んだのち、家庭犬のしつけインストラクターや犬の幼稚園UrbanPaws(2017年閉園)の園長としても活動。犬専門誌をはじめ新聞連載や週刊誌などでの執筆多数。
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