2019年6月17日694 ビュー View

【取材】 モノクロパステルで描かれたペットの肖像画は、内面を映す癒しの絵画

ある日SNS上の画面からモノクロで描かれたペットの肖像画が私の目に飛び込んで来ました。それはとても繊細なのに力強い生命力を感じるものでした。作者は西宮在住の画家「香川かづあきさん」。この取材では香川さんがペットの肖像画を描くようになった経緯や現在のスタイルを確立するまでのお話、そしてこれからのことをお伺いしました。香川さんはペットの肖像画によって深いペットロスに陥っている人の心の助けになりたいという気持ちを強く持っており、ペットの内面へのアプローチも徹底して行っています。なぜ多くの人たちが香川さんの描く肖像画に惹きつけられるのか、この記事で少しでもわかっていただけたらと思います。

香川さんの描くペットの肖像画の不思議

ペットの似顔絵やイラストにはたくさんの種類があり、描いている人や商品もたくさん存在しています。

 

そのように様々な作品がある中、画家である香川かづきさんの描くペットの肖像画はひときわ美しく優しく、絵の中のペットたちは光をまとっているようです。

4月に京都で行われた個展会場のサインボードに使われた絵。
普段画廊に入ることがない人たちもこのゴールデンの笑顔に引き寄せられて続々と入って来たそう。

 

モノクロ写真?細密画?と一瞬思った後すぐに「これは何か別の、もっと特別なものだ」という感覚が浮かんでくる絵。見れば見るほど引き込まれる絵。

 

そしていつの間にかじっと見入ってしまっていた自分に気が付く。そんな肖像画です。

それは一体なぜなのでしょう?

 

どんな芸術作品にも言えることですが、作者の技術が高ければその作品を好きになれるかというとそうではありません。気持ちが伝わってくるというわけでもありません。

 

技術だけでなく私たちの心の奥に語りかける「何か」が香川さんの絵にはあるのだと思います。

ペットの肖像画を描くようになった経緯とモノクロパステル

香川さんは元々TV・雑誌・広告・装丁などを手掛けるイラストレーターやグラフィックデザイナーとして活躍されていました。

 

その香川さんがペットの肖像画を描くようになったのは水彩画の個展会場が始まりだったそうです。

 

「個展会場では“あなたの好きなものを描きます”というイラストライブをしていたのですが、そこでのオーダーがほとんどペットだったのです。ペットの絵などひとつもないのにも関わらず」。(香川さん)

大型犬、小型犬、猫やうさぎなどオーダーされる動物の種類は多岐にわたる

 

最初は驚いたものの動物は元々好きだったこともあり、徐々にペットの肖像画を描くことがメインに。

 

そして評判が評判を呼びオーダーは増え続け、ペット肖像画に特化することになります。

 

順調だったペットの肖像画でしたが、描いているうちに香川さんの心に変化が訪れます。

それは「水彩画での表現の限界」に対する葛藤でした。

 

内面的なものが描けない、描けていない、という気持ちに強くとらわれるようになったのです。

パピーの可愛らしさには香川さんも描きながらついニマニマしてしまうそう

 

「絵を描くことは技術だけではなく内面をどう捉えるかです。写実的なものなら写真で良いわけですよね。写真にどうしても写らないもの、それを表現することが画家の使命です。けれど細かく書いても粗く書いても動物の息遣い、熱意、喜び、恐怖などがどうしても表現できないと感じていました」。(香川さん)

 

そのような苦しい時代もありましたが、その末にたどり着いたのが現在のパステルを使ったモノクロ陰影画でした。

 

使用するのはモノクロのパステル(白・黒・グレー)3本とグレーの紙だけという非常にシンプルなスタイルです。

制作途中の作品を見ると動物が生まれる瞬間を見ているような不思議な気持ちに

 

しかしこのシンプルさが「内面を描く」ために必要なことでした。

 

モノクロであること、途中までで全部を描かないこと、グレーの紙は影になり光になること。

 

それらによって陰影を表現しているのが現在のペットの肖像画です。

 

あるべきものをあるように描く、見えざるものを描く

肖像画を描く時には数日その子の写真を眺め暮らすのだそうです。

 

「眺めていると言ってもじっと見つめ続けているわけではありませんよ。(笑)傍に置いてその子を感じて暮らすだけです。そして感じているうちにある瞬間が訪れるのです」。(香川さん)

 

いつしか「その子の存在に入っていく」「犬の匂いがする、鳴き声が聞こえる、触れた感覚」「描いていいよ」というような感覚が生まれ、そこでようやく絵を描き始めます。

「そこに居るように描く」
手を伸ばしたらその柔らかな被毛に触れられるような気がする

 

「絵描きは最初の1本を引いた時に完成図がわかるのです。それをごまかして修正しても結果的に納得いかないものになる。最初の1本の瞬間が来るまで、その子と会話ができるようになったと感じた瞬間にスタートすることが大切なのです」。(香川さん)

 

香川さんが持つ、「その子の後ろにある子犬の時からの思い出や記録を理解したい」という強い気持ち。その結果「成長記録が蘇る絵」が完成します。

 

一枚の絵からその子のそれまでの犬生が見えてくるような絵。私が惹きつけられたのはその世界だったのです。

 

写真そのままではなく、内面を描くというのはそのようなことなのでした。

 

「形を再現するのではありません。背景に何もないのは全てがそこに在るがために何もないのです」。(香川さん)

 

美しい物を見て美しいと思う心、それが愛であり絵心

「絵を飾る習慣がない方にもペットの絵をきっかけに気軽に絵を飾る生活を楽しんでもらいたいと思っています。また、“絵心がない”という人があまりにも多いのでそれも崩したいのです」。(香川さん)

 

私たちはアートや絵画と聞くとつい敷居が高いものだと感じてしまいますが、香川さんはもっとアートを身近に感じてもらいたいと願っているそうです。

目指しているのは 「飾った瞬間にその空間に静謐な空気が流れるような作品」

 

「アーティストが描いたものを見て解釈するのは絵心とは違います。感じたままで良いのです。理解なんてしなくて大丈夫です」。(香川さん)

 

確かにペットの肖像画だったら感じたままに「これいいね」と言えますよね。あれこれ理屈を考える必要はありません。

 

そしてモノクロであることは私たちが自分の思うような色で想像の世界を作ることを可能にしています。

 

「うちの子に似ている」「きっとこんな性格だったのじゃないかな」そんな風に楽しむ余白が作られているのです。

 

悲しみの感情を受け取って喜びに変えて返す

現在の依頼は亡くなった子の飼い主さんからの依頼が大きな割合を占めており、これは始めた当初は考えていなかったことだそうです。

 

飼い主さんの中にはつらくて愛犬・愛猫の写真が見られない、選べないという方もいらっしゃるそうです。そしてようやく選んで絵になって帰ってきたとき、号泣される方も多いのだとか。

 

その気持ちはとても良くわかります。

 

けれどその時に「心の整理」が付く方も多いようで、肖像画は前に進むためのひとつのきっかけになっているようです。

たくさんの人に感動を与えた個展会場

 

しかしそのような辛く悲しい感情を受け取ってしまう側である香川さんはどのようにご自身の気持ちを整理しているのでしょうか。

 

そのことを聞いてみると「それは絵にすることで浄化されていく」という答えが返ってきました。

 

「深いペットロスにいる方は写真から絵になることでリアリティがなくなり、心でも理解ができるようになり、ようやく苦しみを手放すことが出来るようになるようです。もし自分の絵に癒しの効果があるのであればそのお手伝いをすることが自分の仕事のひとつであると思っています」。(香川さん)

作品の大きさはA4サイズとB4サイズの二種類。それぞれ額装して納品される。

 

うちの子をアートにして飾る、感じる、癒される。

 

たくさんの意味を持つペットの肖像画。

 

これからもたくさんの飼い主さんたちに幸せを運んでくれることでしょう。

 

Profile 香川かづあき

 

高松工芸高校美術科卒。

専門学校桑沢デザイン研究所リビングデザイン科卒/グラフィック研修室卒。

株式会社SPAZIO研究所にてグラフィックデザイナー職を経て、フリーデザイナ・フリーイラストレーターとして独立。

2015年よりペット画を描き始める。西宮在住。

 

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