心と身体に優しくアプローチ。レトリーバーとの『Tタッチ』を通して深まる絆、そして“本来の”健やかな姿へ。
日頃から愛レトに「何か良いことをしてあげたい」と思っている皆さまにとって、レトの健康は大きな関心ごとだと思います。でも意外と知っていそうで知らないものってあるものです。今回はその「知らなかった」ものの一つかもしれない「テリントンTタッチ(以後Tタッチ)」について、日本国内認定プラクティショナーのなかしまなおみ(中島なおみ)さんにお伺いしました。知っていると思っていた方も実は勘違いしていたってこと、あるかもしれません。
「Tタッチ」って何? マッサージとは違うの?
「Tタッチ」という言葉は聞いたことがあっても正直よく分からないという人は多いはず。
「私は“犬の心と身体のバランスを整えて、今のベストな状態に引き上がることができる愛犬のケア”と言っています」。

触り方はとても優しい
タッチという言葉から物質的に「触る」ということだけをイメージしますが、それだけではなく、身体を触ることで感情にもアプローチしていく、つまり心にも「触れる」ことで心と身体のバランスを整える、ということのようです。
そして今のベストな状態というのは治すというより戻すという感覚。
今のその子が本来あるべき状態に戻す、ということ。
また、混同されがちなマッサージとはこのような違いがあります。
「マッサージは押したり揉んだりして血液の流れやリンパの流れをよくして筋肉にアプローチするものです。Tタッチは心と身体のバランスを整えるもので、とても優しい触り方で触れて皮膚のすぐ下の神経にアプローチしていきます。何よりも精神面に働きかけること、というのが大きな違いです」。
<テリントンTタッチ>
テリントンTタッチは1970年代に、アメリカの世界的に有名な馬のトレーナーであるリンダ・テリントン・ジョーンズによって考え出されました。テリントンTタッチは、人を含めたあらゆる動物の身体と心と思考の健やかさを促進し、日々の生活を穏やかにすることができる方法で、それぞれの“現在”に合わせて、ベストな方法で心身のバランスを整えていきます。動物たちが自信をもって行動し、ストレスの軽減や自然治癒力を高めるなど、健康面に良い影響を与えます。
出典:公式サイト「テリントンTタッチ」
実際の変化は、驚くほどたくさんある
Tタッチによる具体的な変化は以下のようなものが挙げられます。
1. 姿勢が変わる
2. 精神面が落ち着く
3. 痛みが緩和される
4. 犬を触っていることによってお互いが落ち着いてくる
5. 問題行動の改善

愛レトに必要なものはなんだろう
1.姿勢が変わる
「例えば猫背。ボディラップ(身体に伸縮性のある専用のテープを巻く)によって“元々はこういう姿勢だったんだ”ということを犬に思い出させることができます」。
ボディラップはテーピングではないので、かなりふんわりとした巻き方です。
実際に人間が巻いてみるとわかるのですが、「何か付いてけれど締め付けるわけでもないから別に気にならない」という程度のもの。

締め付けている感じは全くない
「写真だけ見ると痛いのではないか、苦しいのではないか、と思う人もいますが、全くそんなことはありません。ゆるく巻くことで元の状態を思い出し、そこに戻っていく手助けをします」。
2.精神面が落ち着く
「テンションが高くて落ち着かない子は“何が起きるの? 何が起きるの?”と神経が過敏になっています。心の器が小さいから刺激が大きくなると器が破裂してしまうので、その器を大きくしてあげることが解決につながります」。
「Tタッチは皮膚のすぐ下にある神経に優しくアプローチするので、そうすると寝ていた細胞が目覚めて、色んな器が少しずつ大きくなって自制心や集中力がついて来ます」。
手でのアプローチだけでなく、ハーネスとリードを使用することもありますが、トレーニングではありません。

ここで使っているのはTタッチ用のハーネスとリード
なかしまさんからも購入することができる
「トレーニングは“行動を学ぶ”という感じですが、Tタッチは“ふるまいを覚える”という感じです。前傾になっているのが正しい姿勢に戻ったら、”この方がバランスをとれる”ということに犬自身が気づくことができます。自分で体験して、“この方が楽ならそうしよう”という気づきを与え、そして定着させるのです」。
3.痛みの緩和
「痛みがあって食欲がない時にTタッチで身体の緊張を解放してあげると、呼吸が楽になって食欲が出てきたり、膝が外れやすい子に問題がある箇所ではなく違う脚をタッチして全体のバランスを整えてあげると良い状態になって歩きやすくなったりすることがあります」。
確かに私たちも痛みや違和感があるとリラックスできません。
そしてそこばかりが気になってしまいどんどん緊張状態になるというのは、犬たちも同じなのです。
「腰が痛いとしても負担がかかっているのは他の場所かもしれません。Tタッチで細胞に働きかけると力が抜けて“身体はひとつのものである”という感覚を持てるようになります。力が抜けると呼吸が楽になってリラックスしますよね。身体の緊張している部分を解放してあげることによって意識が身体全体に向く、ということです」。
4.犬を触っていることによってお互いが落ち着いてくる
「飼い主の方へのアドバイスもします。呼吸をしっかりすることによってより良い触り方ができるようになりますし、しっかり地に足をつける(自分自身が落ち着くようになる)ことも大切です。また、周辺視野を持つ(気になるところだけを見るのではなく、犬全体を見る)こともお伝えしています」。

飼い主自身がケアできるようになるのが一番だという
Tタッチをする人間がしっかり準備をするとよりよいケアができるようになります。
自分を安定させると犬との関係も安定し、それだけでなく生きやすくなるのだそうです。
「私がケアをして犬がリラックスすると飼い主さんもリラックスして一緒に寝ちゃったりすることがあります。その時のその場の空気がとても好きです」。
5.問題行動の改善
「身体のバランスを整えてあげることで吠える・噛むが軽減することもあります。原因は、いきなり触られるのが嫌、ガサツな触り方が嫌、人間がイライラしている場合など様々。それを口でしか表現できない子も身体を緩めることで、問題の行動までにワンテンポ置くことができるようになっていきます」。
なかしまさんのクライアントさんは小型犬が多く、吠える・噛む・音響シャイという問題が多いとのこと。
なぜレトリーバーなどの大型犬が少ないのでしょうか。
「変化が起きるのは変わらないのですが、“大型犬を制御するにはトレーニングだ!”というイメージがあって、Tタッチというところにはなかなか考えが行かないからかもしれません」。
Tタッチに興味が湧いたら
Tタッチに興味が湧いて、なかしまさんのようなプラクティショナーに習ってみたい、やってもらいたい、と思った時にはどうすれば良いのでしょうか。
「まだまだ少ない日本のプラクティショナー(Tタッチの資格保持者)。リストはTタッチ日本事務局のサイトに掲載されています。種別がいくつかあるので、それを確認してコンタクトを取ってみるのが一番だと思います」。

なかしまさんは数少ない「テリントンTタッチプラクティショナーP2」資格保有者
Tタッチを行うために必要なものはあまりありません。
基本は「手」。
他にはボディラップ、ハーネス・リードがあります。
ボディラップは専用のものを使うことになりますが、ハーネスとリードは持っているもので代用できることもあるそうです。
「最初から自己流でやるより、プラクティショナーにご相談いただいた方が良いでしょう」。
なかしまさんが目指すのは「犬との絆を深めること」
「一番最初の子がいなかったら、今の私はいなかった」というなかしまさん。

豊富な知識と経験でクライアントからの信頼も厚い
「犬はおしっこと言えばそこでするし、おすわりと言えば座るものだと思っていたという超初心者でした。でも実際は足にまとわりつくし、噛むし、もういや! って、迎えて数日後にはノイローゼみたいな状態になっていました」。
ですがその半ばパニック状態の時、手のなかにあるのは「命」である、ということに気づきます。
「かわいそうなことしていてごめんね。勉強するからね、としつけ教室に通い始め、それだけでなく食やマッサージなど犬にできることを色々学びに行きました」。
そのように熱心に勉強している中でTタッチを知ることになり、Tタッチを学んでいくうちに自分自身が楽に生きられるようになり、心に余裕が出てきたのでした。
「Tタッチを勉強していたのは犬のためだと思っていたけれど、自分のためにもなっている? と気づきました。それで自分だけでなく人にも伝えたいと思って学びを深めていったのです」。
最後に、なかしまさんが目指しているものは何かと尋ねると、すぐに「犬との絆を深めること」という答えが返ってきました。
そして続けて「愛犬ともっと笑顔になる暮らし」「最後にありがとうと言える暮らし」とも。
自分だけでなく、たくさんの人と犬がそんな幸せな暮らしができるようと活動していることが伝わってきました。
ぱれっと 人と犬研究家
なかしまなおみ
犬に対してまったく知識のなかった自分を反省したことで、身体のケアの視点から犬とのよりよい関係を作っていくための学びを始める
学ぶにつれ、愛犬のためにと思っていたことが自分自身の人生をより豊かにするということに気づく
現在は「愛犬のケアができる・できない、やる・やらないとでは大きな違いがある」という想いから「愛犬のためにケアができる飼い主さん」を増やすべく、訪問や講座で愛犬ケアを伝えている
2017年5月にこの仕事を始めたきっかけとなった愛犬が旅立ったが、やりきった、愛犬も十分生ききってくれたと感じている
テリントンTタッチプラクティショナーP2
執筆者:Roco
『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。
撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。
フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。
子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」
Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター
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