【取材】“もしも”の時に愛レトを守る方法の一つとして考えてみる。日本初「犬の信託の家」リリモナハウス
千葉県大網白里市に1,000坪の敷地を持つ「庭全部がドッグラン」というドッグホテル&ドッグラン「リリモナハウス」があります。ですがこのリリモナハウスはただのホテルとドッグランではありません。日本で初めての『犬の信託』の受け皿となっているのです。まるでそこにいる子たち全員が家族のように暮らして(過ごして)いるリリモナハウスとはどんな場所なのでしょうか。
目次
守れたはずの命があった。その思いが設立のきっかけ
リリモナハウスはペットホテル&ドッグラン。犬たちは、50坪もある古民家の中でも自由、そして1,000坪を誇る広い敷地内でも自由。
みな「我が家」のように過ごしています。

まさに「自宅」という雰囲気
オーナーの佐藤芳子(さとうよしこ)さんがリリモナハウスを作ろうと思ったきっかけは2011年の東日本大震災でした。
「飼い主と一緒に避難できなかったペットや牛や馬などの動物の姿を見て、守れたはずの命が失われていくことに強いショックを受けました。
それでそのような動物たちの命を守るための何かをしたい、少しでもそういう子たちを救いたい、そういうことにお金を使いたい、と思ったのです」。(佐藤さん)
そのために不動産投資について勉強し、ペットと暮らしている人限定のアパートを経営することを考えました。
アパート経営だけでなく、飼い主さんが留守にしている間にペットのお世話をするというビジネスプランです。
「でもそうすると10頭とかそういう数にしかなりませんよね。それでは少なすぎるし、お金儲けのためみたいになってしまうし」。(佐藤さん)
“ペット信託”との出会いが大きな使命に繋がった
最初に考えていたアパート経営は自分のやりたいこととは違うと感じ、他の道を考えていた時に佐藤さんとスタッフの岡部さんが出会ったのが「ペット信託」でした。
『ペット信託について(リリモナハウス公式サイトより抜粋)』
「ペット信託」は飼い主の方が死亡や病気、要介護状態になる等、何らかの理由でペットを飼い続ける事ができなくなったときに備えて、ペットの余命に基づいて食費や医療費、その他の費用等の生活費をあらかじめ信託することです。
“もしも”の時に愛犬を安心して託せる場所があれば、救える命も増えるはず。
佐藤さんは「託される側」になることに決めました。
また、そこには高齢者が安心してペットと暮らせる社会にしたいという願いも含まれています。
「高齢化していく社会で、高齢者だけがペットを飼うことが許されないというのは少し違うのではないでしょうか。
愛情を注ぐ対象がいること、責任を持つこと、社会との関わりを持つこと。そういうことが健康に幸せに生きていくことに繋がるのではないかと考えています」。(岡部さん)
こうしてこのペット信託を広めることが大きなテーマとなり、進むべき方向性が決まったのでした。
しかし経営の面で言えば信託は保険と一緒なので契約したからと言って現金収入につながるわけではなく、もしそのシステムが稼働することがあっても預かったお金はペットのためのお金。
ビジネスとして考えると利益は大きくないのです。
「でもそれでもやろうと。やるためには預かりも必要になってくるので場所が必要になると思い、2年かけて場所を探しました」。(佐藤さん)」
「生きたお金にしたかった」という想い
理想的な場所を探し続けて2年。
ようやく古民家付きの1,000坪の敷地と300坪の畑を見つけ、購入したのは2016年2月のこと。
改修を重ねて2017年5月にリリモナハウスはオープンしました。

どの子も佐藤さんと岡部さんが大好き
購入費用は全てオーナーである佐藤さん。実はご主人が亡くなったその遺産を使ったのだそうです。
「2014年4月に夫が交通事故で亡くなって、その補償などのお金が入りました。でもお金は入っても人は戻らない。子供たちは大人になっているので相談の上そのお金を“生かす”ために、全額この事業に注ぎ込みました」。(佐藤さん)
同じように動物が大好きだったご主人。
妻である佐藤さんが震災後に「何かしたい」と動いていることも応援してくれていたそうです。
「死にたくないと思っていたのに死んでしまった人がいる。失いたくない命がある。それは犬猫も同じだから同じ命のためにお金を使うのはいいと思ったのです」。(佐藤さん)」
その気持ちに共感する人は多いと思います。ですがそれを実行に移すことができるかどうかとなると、どうでしょう?
けれど佐藤さんは全く何の迷いもなく「命のために使う、その道に突き進む」と決めたのだそうです。
「私は目的がなかったら好きなもの買ったりしてだらだら使っちゃうと思ったので、ちゃんと使いたかったんです」。(佐藤さん)
その意志を受け入れたご家族、ニコニコと何でもない事のように話す佐藤さん。
そこには大きな愛がありました。
現在のメインは、我が家のように過ごせる預かりサービス
広めたいのはペット信託。
でもまだ「信託」というシステムの認知度が低いのが現実ということもあり、現時点での収入源は預かりがメインだそう。
預かっている子は年齢も犬種もバラバラで、超小型犬から超大型犬まで様々な子たちが基本的には家の中で自由に過ごしています。

部屋の中で静かに過ごす時間も大事
ケージなどに入れることなく自由に過ごしていられることは飼い主としてもありがたいものの、縄張り意識などの問題はないのでしょうか。
「はじめましての時はまずみんな匂いをかいで、フェンスの中に入ってきたらもうOKです。特別な感情も持ちません。ただ、いつまでもビクビクしていると目をつけられることもあります。小さな諍いもあるのでその場合は仲裁に入ります」。(岡部さん)
初めての預かりの前には何回か遊びに来てもらうということをしているそう。
必ず迎えに来るということを理解していれば安心して待っていることができるからです。

リラックスした表情
そして飼い主さんがいなくなった後の犬たちはと言うと…。
「大体の子は飼い主さんがいなくなったら“さあ遊ぼう!”という感じで切り替わります。飼い主さんとしては残念かもしれませんが(笑)。
ただ、そうじゃない子もいますので、外にいたければ外にいさせて、中に入りたいという気持ちになるまで待っています。無理やりということはしないようにしています」。(岡部さん)
犬たちにとっては楽しい遊び場なのがリリモナハウスなのでしょう。
中には「まだ帰りたくない!」とお迎えから逃げる子もいるそうですよ。
「毎日が合宿か修学旅行ですね」。(岡部さん)
全てを経験させてくれたラブラドール「しんのすけくん」との出会い
たくさんの出会いがあるリリモナハウスですが、2018年2月〜2019年6月という長い期間預かっていた(最終的には引き取った)イエローラブのしんのすけくんとの日々は特に忘れられないものだそう。

しんのすけくんの穏やかな表情から愛されていたことがわかる(提供画像)
始まりは実家で飼育放棄されていたしんのすけくんを離れて暮らす娘さんが見つけ、助けたいと言う思いで連れてきたこと。
しかしその時の状況は口にするのも憚られる程でした。
「異臭がひどく褥瘡(じょくそう)が全身にできていて、そこから体液が流れ続けました。思わず悲鳴が上がりました。なぜこんなひどい状態に、と泣きながらお世話をしました」。(佐藤さん)
瀕死の状態だったしんのすけくんは、佐藤さんたちの献身的なお世話で徐々に回復。
傷も良くなり、肉付きも良くなり、寝たきりだったのが顔を上げることもできるようになったのだそうです。
「痛みもありすごく辛かったと思いますが、しんのすけは一度も泣きませんでした。元気だった頃は可愛がられていたのだと思います」。(佐藤さん)
連れてきた娘さんは一生懸命バイトをして費用を捻出してくれていたものの、家庭の事情で支払いが出来なくなり、しんのすけくんを預けることができなくなると言う事態が起こります。
そこで佐藤さんは、しんのすけくんをリリモナハウスで引き取って最後まで見ることにしたのです。
「私は今でも“しんのすけを連れてきてくれてありがとう”と思っています。
娘さんは支払いが出来なくなったこと、託してしまったことに負い目を感じていたようですが、そうではないのです。うちを見つけてくれてありがとう、という気持ちしかありません。
初めての大型犬の介護でしたが、しんのすけが全てを経験させてくれました」。(佐藤さん)
そうは言っても寝たきりの大型犬の介護というのはたやすいものではありません。
壮絶な体験もあったはずですが、それを「ありがとう」と言えるのは愛あればこそだと思います。
“もしも”の時に、託す相手を考えておく必要性
しんのすけくんは「ペット信託」の契約ではありませんでしたが、もしも飼育が出来なくなった時にリリモナハウスのような施設に託すことができれば、飼い主としては最後の務めを果たせたと言えるように思います。

いつも笑顔のおふたりがリリモナハウスを支えている
高齢であってもなくても“もしも”はあるかもしれません。
安心して愛レトを託せる相手は誰なのか、相手に金銭的な負担をかけないようにするにはどうしたら良いのか。
「ペット信託」がもっと広がってリリモナハウスのような施設ももっと増えると日本におけるペットとの暮らしが少し変わってくるように思います。
プロフィール
佐藤芳子(さとうよしこ)
気づいたらいつも犬が横にいた。
当たり前の様に傍にいた。
時として姉妹・親友の様に時間を過ごしていた。
これからもそうでありたいと思う。
リリモナハウス
千葉県大網白里市桂山1271
2016年 千葉県起業家大賞入賞
2017年 千葉市ビジネスコンペディション 入賞
執筆者:Roco
『ヒトとイヌ』を永遠のテーマにしているフォトグラファー&ライター。
撮影・執筆の他、写真のレッスンも行う。
フォトグラファーになるきっかけを作ってくれた英国ゴールデンのRubyは15歳2か月で虹の橋へ。 現在の愛犬はトイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードル。
子供の頃からの夢は「ドリトル先生になること」
Facebook:Roco ~LoveLetters~ 写真と言う名のラブレター
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