【取材】トリマーさんを愛レトの健康サポーターに!お手入れの基本も教えます
「トリミングサロンに通っているレトリーバーってどのくらいいるのかな?」ある日ふとした疑問が浮かびました。私は現在トイプードルとオーストラリアン・ラブラドゥードルと暮らしているのでトリミングは必須なのですが、先代犬のゴールデンレトリーバーの時からサロンでのお手入れを習慣にしていました。自宅シャンプーが苦手であるということだけでなく、サロンには美容目的以外の大きな役割もあると思っているからです。そこで今回はゴールデンレトリーバーと15年暮らしてきたトリマーの萱沼五十鈴さんにお手入れの目的や方法と共にトリミングサロンの役割についてお伺いしてきました。
目次
愛レトのお手入れと目的にはどんなものがある?
萱沼さんは愛犬のゴールデン(ガウくん・昨年15歳で他界)を15年間お手入れしてきたので、ゴールデンのプロ。お願いしたらとても早く美しく仕上げてくれると思うのですが、その腕を発揮する機会は少ないようです。
「私が勤務しているサロンにはレトリーバーはまず来ることがありません。他のサロンでもあまりないと思います。ゴールデン来ないかなー、って思っているのですけれど」。(萱沼さん)
ではお手入れの目的とはそもそもどういうものなのでしょうか。
「トリミングサロンというとカットでかわいくするというイメージの方も多いと思いますが、お手入れの目的はそれだけではありません。トリマーはその子の生活が快適であるようにと考えて仕事をしています。見るところも細部にわたっています」。(萱沼さん)
1.皮膚と被毛の健康を維持する
長い間シャンプーをしないと皮脂でべとべとになっていたらかゆみが出たり雑菌が繁殖したりして健康を大きく損なう可能性があります。
また、レトが大好きな水遊びや泥んこになって遊んだ後は被毛だけでなく皮膚まで汚れている可能性もあり、そこから雑菌が繁殖するということも。
肛門やおしっこがつきやすい場所の周辺も雑菌が繁殖しやすいので洗うだけでなくバリカンなどを使ってすっきりさせてあげることが必要です。
皮膚と被毛の健康を維持するために必要なブラッシングやシャンプーですが、そこで大切なのはその方法が「正しいやり方」かどうかという点。
「オーナーさんが行うシャンプーで気を付けていただきたいのが“洗い残し・すすぎ残し・乾かし残し”です。気を付けていらっしゃるのは承知していますが、プロから見ると中途半端な仕上がりになっていることが多いのです。これらがしっかり出来ていないと皮膚を良くない状態にしてしまう可能性があるのでこの3つは徹底的にチェックしてください。長毛か短毛かは関係ありません」。(萱沼さん)
私はこれを「3つの忘れ物」と呼びたいと思います。自戒を込めて。
レトリーバーはダブルコートなので表面が乾いていても内側はなかなか乾かないのは皆さんもご存知の通りです。
自宅で乾かす場合は、ドライヤーの温風の後冷風をかけてから中の感触をチェックすると良いそうです。
「温風だけで終わると温かさで乾いている気がしてしまうのですが、冷ましてから中に手を入れると冷たくてまだ乾いていないということがわかります。その感触がなくなるまでしっかり乾かしてあげてください」。(萱沼さん)
2.暮らしやすくする
足裏の毛が伸びているとフローリングで滑ったりして足を痛める可能性があります。
肉球が毛で覆われてしまわないようにしっかり表面に出してあげることで防げる怪我があるので、伸びたら切る、をマメに行いましょう。爪切りも同様です。
また、夏にはおなか周りの毛をすっきりさせることで少し涼しく感じさせてあげることもできます。
ただし、極度なサマーカットは逆効果のこともあるのでご注意を。
「個人的にはサマーカットは推奨出来ません。紫外線の影響も受けやすくなりますし、枝などに引っかかった時には毛がある時よりも怪我をしやすくなります。シニアになると刈り上げてしまった後に思うように毛が伸びなくなっていて元に戻らないということもあるので我が子のためであるならその点を良く考えてからにしていただきたいと思っています」。(萱沼さん)
3.病気を防ぐ、病気に気付く
毎日ブラッシングをしていれば前日との変化に気が付きます。
また、シャンプーしてドライをする時には身体全部の細かい部分まで毛をかき分けて見ていくので小さな湿疹やイボなどの異変にも気が付くことができます。
耳の中が汚れていないか、爪の状態は健康か、肛門は腫れたりしていないか、体全体を触ることでしこりやどこかに痛みがないかなどもチェックしましょう。
愛レトを毎日見ている飼い主だからこそ気が付くことはたくさんありますが、それとは別にトリミングサロンでも見てもらうことでダブルチェックが可能になります。
「トリマーだから気が付くということがあると思うのです。私たちはコームやブラシでことこまかく毛を分けてチェックします。病気がないかのチェックというよりはシャンプーやカットが出来る状態かどうか、終了後はきちんと乾いているか、ブラシが通るようになっているかのチェックが基本ではあるのですが、結果的には全身の皮膚の状態を確認することになります。飼い主さんがそこまでやるのはとても大変だと思いますが、私たちはプロですので抜かりなく行っています」。(萱沼さん)
実際に私も自分では気が付かなかった小さな湿疹や耳の中の汚れなどを教えてもらったことが何度もあります。
その足で病院に行ってチェックしてもらえば安心が増すのでいつもとても助かっています。
「耳がかゆくて掻いているうちに雑菌が足に移り、それで目の周りを掻いて目に移り、と広がっていってしまっていた子を見たことがあります。そのようなことをなくしてあげたいですね」。(萱沼さん)
4.コミュニケーション
レトリーバーは人と触れ合うのが大好き!
ブラッシングをすること、身体を触ってあげることはレトにとってとても良いコミュニケーションの時間となります。
「綺麗だね、可愛いね」と言いながらブラッシングをしてあげるのは至福の時とも言えます。
それは短毛のラブでも同様ですので、ぜひブラッシングと全身チェックをしてあげてください。艶々の美しさが増して惚れ惚れすると思いますよ。
5.容姿を整える
容姿を整えるというのはレトにも飼い主にも嬉しいことです。お手入れが行き届いていればお散歩していて「綺麗ですね」と言われることが増えるかもしれません。
そうなれば人が大好きなレトは大喜び!そして愛犬が褒められたら私たちもうれしいですよね。
容姿を整えるというのは行き過ぎた美容目的とは異なり本来の美しさを発揮させてあげることですので、お手入れを頑張って見た目も中身も美しいレトにしてあげましょう。
自宅でのお手入れとサロンでのお手入れを組み合わせることの効果
自宅でのお手入れはレトにとって一番落ち着いてストレスが少ない方法だと思います。
ですので、できるだけ自宅でというのはトリマーである萱沼さんも賛成しています。
でもたまにはサロンにお願いしてみるということも推奨したいとのこと。
1.健康状態をダブルチェックできる
2.本来の「美しさ」がわかる
3.シニアになった時にお願いしやすい
3.に関しては準備が必要かもしれません。ハイシニアになると足腰が弱り体力も衰えます。
外でアクティブに遊ぶことはなくなって汚れ方は変わりますがその分お尻周りなどが汚れやすくなりますし、皮脂汚れは避けられません。
私の経験ですが、そこで頼りになったのがやはりトリミングサロンでした。
とにかく体力を消耗させないように短時間で終わらせてもらえるよう、2人体制でお願いしました。
また、足腰が弱くなっているのでどうしても立たせていないと出来ない場合は一人の方が支えてくださり、寝ていても出来るブローなどは寝たままの状態でやってくださいました。
このようなことをお願いできたのもサロンとの信頼関係があったからだったと思っています。
サロンとしてもシニアを預かることは途中で何かあったらというリスクがあり、年齢によっては受けてもらえないこともあります。
でもずっと通っているところなら大抵はそのまま引き受けてくれます。
どのような関係も少し時間をかけて築くことが大切ですから、部分的なお手入れからでもトリミングサロンにお願いする機会を作ってみてはいかがでしょうか。
また、出張サービスを行っているトリマーさんもいますので、そのような方を探してみるのも良い方法だと思います。
「毎回サロンでというのは難しくても、プロがやったらどうなるのか?を一度体験していただけたら嬉しいです。明らかに仕上がりが違ってびっくりすると思います。自分のこれからの目標としてはカットなどの技術だけでなくもっと皮膚の勉強をして、病院に行った方が良いものとそうでもないものなどの区別がつくようになりたいと思っています。動物病院に行かなければならないほど重症化する前に気付いてあげられるのもトリミングサロンの役割のひとつだと考えています」。(萱沼さん)
レトリーバーには敷居が高く感じられるトリミングサロンですが、自分でもなくドクターでもないもうひとりの「愛犬の健康チェックサポーター」だと思ってお付き合いできたら良いですね。
萱沼五十鈴(かやぬまいすず)
トリマー歴15年
サロン店舗勤務、動物病院勤務、出張トリミング、自宅トリミングを行うフリートリマーです。わんこさんにとって何が一番幸せなのかを考えて優しく心のこもったトリミングを心がけています。2003年に真っ白な英国ゴールデンのガウディと出会い、15歳まで共に大切な家族として暮らしました。
看護・介護も経験しシニアにも優しいトリミングをしてあげたいと改めて思いました。
レトリーバーとの暮らしは最高に幸せ!!!レトリ-バー大好き!!!
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