【取材】ペットのための遺言・信託~愛レトのライフプランを考えよう~
私たちはレトリーバーを迎えたその日からずっと大切な家族として日々を過ごし、お世話をし、最後まで幸せに暮らせるようにと考えています。でもふと「自分に何か起きたらこの子はどうなるのだろう」という気持ちになることはありませんか?自分にもしものことが起きても愛レトがいままでと同じような生活を送れるように「お金と託せる人」の準備をしておく、つまり「レトのライフプラン」を立てておくことは安心して楽しい毎日を過ごすためのコツかもしれません。今回はペット専門の行政書士である田代さとみさんに「ペットのための遺言・信託」についてお伺いしました。
目次
行政書士のお仕事って?
「簡単に言うと行政書士は “お客様ご本人から依頼を受けて書類を作る仕事” をしている人です。官公署に出す書類です。」(田代さん)
身近でわかりやすいものだと自動車免許申請、自動車の登録手続き、車庫証明が該当します。
他には飲食業や建設業などの事業を始める時の許認可・登録申請、遺言書の作成や相続手続きなど該当する業務は多岐にわたります。
とにかく複雑でわかりにくい官公署へ提出する書類を私たちに代わって作成してくれたり、相談に乗ってくれたりするのが行政書士さんというわけです。
田代さんがペット専門の行政書士になったわけ
田代さんが行政書士として開業したのは平成25年。
ある出来事をきっかけに「法律は知っておいておいた方が良い」と思うようになり、そして勉強するためのモチベーションにもなるからと行政書士の資格を取ることにしたのだそうです。
その頃にしていた仕事はペットシッターでした。現在は犬1頭と猫3匹と暮らしており前職はペットシッターと聞けば大の動物好きなのは明らかですが、行政書士を目指した時には「ペット」とは全く関連付けて考えていなかったのだそうです。
「行政書士の仕事は多岐にわたるので、建設業専門、自動車関連業務専門といったように専門分野を持っている人が多いです。私が独立前に修業していた事務所も建設業専門でしたが、私の専門とはちょっと違うな…と思っていて。その時にやはり “ペット” というのが思い浮かんだのです」。(田代さん)
残された愛レトを守るための4つの方法
もし愛するペットを残して自分が先立ってしまったら、その後のお世話を誰に託そうか…そんな悩みを法的に解決してくれるのが田代さんの専門分野、「ペットのための遺言・信託作成支援」です。
1. 遺言
残されたペットを終生お世話してもらうことを条件に財産を残すという遺言を作成し、その人に財産を残す方法です。
「遺言は一方的に相手を決めることが出来ます。本人が遺言書を書いて公証人役場に書類を出しておけば相続人として指定されている人の許諾は必要ありません。相手の意思と関係なくお金を残すことは出来ますが、指定された人はその内容に納得いかなければ断ることができるという側面があります」。(田代さん)
2. 信託契約
飼い主の身体が不自由になったり認知症になったりした時に、家族をはじめとした信頼できる相手にお金の管理を託して、その人から新しい飼い主さん(面倒を見てくれる人)にペットの飼育費用を定期的に渡してもらうようにする方法です。
飼育状態の確認なども行ってもらえます。
「最初にまとまったお金を渡しますので、通常は家族がその相手となります。家族が面倒を見られないのか?という疑問もあるかもしれませんが、遠くで暮らしている、ペットを飼えない環境にある、ということもありますよね。それで、お金の管理をする人とペットの面倒を見る人が別になるのです。遺言と異なり、契約なので双方の合意が必要です」。(田代さん)
「信託をしてもその人が柔軟に動けなければ困りますよね。そのような時にはお手伝いをしてくれる事務員さんのような人を付けることが出来ます。また、家族であってもお金を全部託してしまうと使い道が不安だということであれば信託監督人(行政書士など)を付けることも出来ます。更に、この人が飼えなくなったら次の人というようなことも契約に入れることができるので動物にとってはある意味ベストな契約だと思います。ただ、その分人がたくさん関わってくるのでお金もかかります」。(田代さん)
3. 死因贈与契約、生前贈与契約
自分が死んだら、もしくは健康上の理由などによってペットを飼うことができなくなってしまったという時に終生ペットの面倒を見てもらう代わりに財産を贈与する契約です。
「これも契約なので双方の合意が必要です。ただし信託契約のように間にお金を管理する人は不要で、直接次の飼い主さん(面倒を見てくれる人)にお金を渡します。信頼関係がベースにあるので、遺言にしても契約にしても相手への信頼は絶対に必要です」。(田代さん)
4. 任意後見契約
飼い主が認知症などでペットの面倒を見られなくなった時のため、元気なうちにあらかじめ後見人を頼んでおく契約です。
将来自分が認知症などでペットを飼えなくなったときどうするかを事前に決めておくことで、自分が何かを決定することが出来ない状態になっても代理人(後見人)が自分の意思通りにその決め事を遂行してくれます。
「認知症になっていなくても、契約して人に頼めることはあります。例えば高齢者のひとり暮らしだった場合言動の変化に家族が気付くことができませんから、信頼できる相手と見守り契約というのを結び、定期的に訪問してもらって異常がないかを確認してもらうということが可能です。また、身体が動かなくなってしまったけれど判断能力はあるという場合にもその状態に合わせた契約があります。とにかく認知症になってからでは何の契約も出来ないので、そうなる前に考えて手を打って置くことが大切なのです」。
自分と愛レトに合っている「お金の残し方」は何だろう
「最近は言葉が少し知られてきたこともあり“ペット信託がやりたい”といらっしゃる方も多いのですが、その方の状況によって出来ない場合もありますし、向いていない場合もあります。今回お話したような方法以外にも提案・サポートをさせていただけることがあります。完全オーダーメイドなのでまずは相談していただくのが一番です。」(田代さん)
興味はあっても「良くわからない」「まだいいか」となってしまう場合も多いと思います。
私も不安には思っているのに防災と同様に準備というものにはなかなか本気になれない甘さがあるなと反省しました。
「うちの事務所の場合、遺言・相続に関しては最初のご相談が無料です。何十年も先のことを考えてもどうなるかわかりませんから、お若い方ならまずはご自身の10年先くらい先のことを考えて決めるのが良いと思います。40代の健康な方がペットのために遺言を用意された例もあります。そして自分や託した相手のライフスタイルなどが変化したらそこで見直すのがタイミングとして適しています」。(田代さん)
「実際に手続きを終了した方からは“安心した”と良く言われます。不安な気持ちが高まって夜も眠れないという方もいましたが、この手続きを行うことでペットの将来への不安がなくなりほっとするのだと思います」。(田代さん)
伝えたいこと、やりたいこと、そして目指しているもの
田代さんは「将来こんな風になったら大変だよ」と、不安をあおるようなことはしたくないのだそうです。それよりも「不安なく幸せに暮らせる」ことを願ってペット専門の行政書士として活動しています。
「ペットと少しでも長く楽しく安心して暮らせるためにどういう方法があるのかということを伝えていきたいです。そして高齢になっても犬猫と暮らせる世の中にしたい。動物と暮らす楽しみをみんなに知っていただきたいのです。」。(田代さん)
今回のタイトルに付けた言葉は田代さんが作っているチラシの『~愛するペットのライフプラン~を考えよう』からいただいたものです。
将来を悲観するのではなく、将来を考えるというイメージがとても素敵です。
自分の力だけでは生きていけないのが犬や猫といったペットたち。
私たちが自分のライフプランを立てるようにレトのライフプランも立ててみると、何をどうしておくべきかが少し見えてくるのではないでしょうか。
愛レトの一生を守ってあげられるのは飼い主だけです。先送りにせずまずは知識をつけ、そして必要に応じて行政書士さんの手助けをもらって安心しておきたいですね。
田代さとみ(たしろさとみ)
行政書士、ペット法務士®
『ペット安心相談室』運営
行政書士法人リーガルイースト 横浜事務所 所長
大学卒業後会社員となるも、社長になることを夢見て脱サラ。ペットシッター業を開業。
ある出来事をきっかけに法律を知ることの大切さを痛感し、仕事の傍ら猛勉強。
3回目の挑戦で行政書士資格を取得。
既存の行政書士事務所での2年間の修業を経て独立、「行政書士横浜中央合同ハル事務所」を開業。2019年4月事務所を法人化し、「行政書士法人リーガルイースト」を設立。横浜事務所の所長に就任。
開業してからずっとペット専門の行政書士として、ペットと飼い主様の楽しく安心した暮らしをサポートするために日々奮闘している。
・ペット安心相談室フェイスブックページ(セミナー情報等を配信中)
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